サイアミディン

考えられるヒト

発明王、トーマス・エジソンは小さい頃、

疑問に思った事をすぐに大人に「なんで?」「どうして?」と尋ねる「なぜなに坊や」であったという逸話があります。

「なぜ?」を考える事は、人生においてとても大切な事です。

さもなくば常識の罠に容易にはまってしまうからです。

裏を返せば、「思考停止」というものの怖さを我々はもっと認識する必要があると思います。

先日とある漢方の勉強会で、とある脳神経外科の先生の話を聞く機会がありました。

その先生は、ある時突然思い立ってそれまでの病院を離れ、思い切って漢方医に転向されたそうです。

「なぜ漢方医になろうと思ったのですか?」と尋ねると、その先生はこう答えました。
「以前いた病院では脳卒中の人をたくさん診る機会がありました。

そこでやっていた事は極めて単純作業で、どんな患者さんに対しても突き詰めれば2,3種類の薬を適当に使い分けて、リハビリをするという選択肢しかありませんでした。

しかしながら実際にはそうした患者さんは様々な症状を訴えます。そうしたニーズに答えられないこのままの治療ではたしてよいのだろうかと疑問に感くじたのがきっかけです。

漢方であればあらゆる症状に無限の組み合わせで対応する事ができるんです」

なるほど、とわたしは思いました。

私も同じ脳を扱う医師で、脳梗塞の患者さんを診る機会が多いのでわかるのですが、

脳梗塞というのは脳を栄養する血管が何らかの原因で詰まり、

詰まった事によってその先に血液が行かなくなり脳細胞が死んでしてしまう病気です。

脳は言わば神経のかたまりであり、神経細胞はデリケートで原則一度死んだら生き返らない細胞なので、基本的に脳梗塞は後遺症が残る病気です。

そんな病気に対して、標準医療は何をしているかと言いますと、

詰まった範囲がそれ以上広がらないように血液をサラサラにする薬や活性酸素を取り除く脳保護薬を1〜2週間ほど点滴し、

後遺症を最小化するためにリハビリを行いながら、なぜ脳梗塞を起こしたのかを推定するために様々な検査を行いながら、

その推定原因に応じて見合った再発予防目的の血液をサラサラにする飲み薬を、数種類の中から選んで後はひたすら処方し続けるというシンプルな医療行為です。

脳梗塞は初期対応を誤ると命に関わる病気ですし、

医者になりたての頃は脳梗塞の救急患者さんをたくさんみていくにつれ、

自分が患者をスピーディにさばけるデキる医者になったと、ともすれば錯角してしまうような時期もあるのですが、

誤解を恐れずに言えば、その実はマニュアルがあればバイトの子でもできそうなくらい単純な作業だと思います。

そして厄介なのは脳梗塞が「治らなくて当たり前」だと思われているという事です。

つまり、脳梗塞後遺症を持つ人が、例えば身体が痛いとかしびれるとか訴えたとしても、

多くの場合、「それは後遺症だから仕方がないよね」などと軽くあしらわれてしまいかねないという事です。

冒頭の脳神経外科の先生は、そんな画一的な状況に疑問を感じ、漢方の世界に足を踏み入れる決断をなさいました。

漢方は、たとえ相手がどんな病気であったとしても、現在よりも少しでも良い状態に持って行かす事ができる手段を提供する事ができます。

痛みやしびれといった後遺症の軽減は勿論、まったく動かなくなった手足がある程度動くようになったという例も報告されています。

そこに理屈がない事を毛嫌いされる先生もいらっしゃいますが、

大事な事は現実に起こっている現象を真摯に受け止める事だと思います。

そして目の当たりにした自分の頭では説明できない現象に対して「なぜ?」と問いかけ続ける事だと思います。理屈は後からついてくると思います。


私はエビデンスがあろうとなかろうと、

患者さんを良くする可能性のある事は、これからもどんどん勉強していくつもりです。

「治らなくて当たり前」ではなく、「どうすれば治るようになるのか」を常に考え続けたいと思います。

その核にあるのは糖質制限をベースとした食事療法だと考えています。

そして「なぜ?」にこだわる姿勢は、患者さんにも強く求められています。

はっきり言って、考える事を放棄して自分の健康を医師に一任するような人を助ける自信は私にはありません。

その代わり、治りたいと心より願い、その原因を考え抜ける人へは最大限のサポートを与えられるようになりたい。

そういう医者で私はありたいです。


たがしゅう

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ただただ、頭が下がります。先生のブログは、ブレやすく横道に逸れやすい私の人生の指針なっております。本当にありがとうございます!
m(_ _)m

思い込みとマニュアル化

たがしゅう先生、こんばんは。

何でもそうですが、一度思い込むと、それをマニュアル化して考えなくなってしまうのでしょうね。

江部先生の下記記事も同じようなことだと思います。

<a href="http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3529.html" target="_blank">従来の糖尿病食(低カロリー高糖質食)と合併症発症、体験談。</a>

患者の症状が悪化して行っても、一度思い込んでしまいマニュアル化されると、自分がやっていることに間違いないと自分自身に言い聞かせてしまうのかもしれませんね。

Re: タイトルなし

マロン さん

コメント頂き有難うございます。
また過分な御評価を頂き恐縮です。少しでも参考になれば嬉しく思います。

Re: 思い込みとマニュアル化

ミスターT さん

コメント頂き有難うございます。

> 患者の症状が悪化して行っても、一度思い込んでしまいマニュアル化されると、自分がやっていることに間違いないと自分自身に言い聞かせてしまうのかもしれませんね。

その通りだと思います。
定型的な行動は良くも悪くも自分の中でいつの間にかマニュアル化(常識化)されてしまいます。

現代医療はまさしくそういう構造になってしまっていて、症状に応じて薬を足すという行為がマニュアル化され、害毒を取り除くという発想が乏しいのが現状です。

タバコやお酒だけ止めなさいというのでは不十分で、糖質や不要な薬剤も積極的に減らしていくべきだと私は思います。

医師の知らない世界

こんばんは

脳神経外科の先生が、マニュアル化された診療に疑問を持たれたとのこと。
脳卒中は、私もなりたくない病気です。
後遺症が遺って身体が不自由になるのは辛いことです。

偶然知った電位治療は、それをかなり改善してくれます。
国からのお墨付きの効能は、不眠、肩凝り、頭痛、便秘のみですが、実際は、骨密度が上がったり、血糖値が下がったり、血圧も下がり、脳卒中の後遺症も改善します。
私は、血圧と緑内障の視野欠損が良くなりました。
今は、目医者に行くのもやめました。
アルカリイオン水は、医師たちから絶賛されながら否定する声に対し、研究が続けられています。
効能は胃腸症状の改善だけですが、やはり様々な体調不良を治すものです。
西洋医学に拠らないこれらの治療により、私の健康問題が解決しました。
ケトン食を、後から説明を探している治療と言った医師がいますが、

電位治療やアルカリイオン水は、まさにそれなのだと思います。

因みに電位治療は、物理療法です。
接骨院に置いてある事が多いです。

私の最後に辿り着いた代替療法は、絶食療法でした。

NHKBSの番組を見て、やはりこれも最初は信じて貰えなかったけれど、医師が自分で良くなって絶食療法のクリニックを開いた話しが出てきます。

本気で病気を治すのには、西洋医学の枠の中だけでは難しいと思います。

国も医師たちも、目覚めて欲しいものだと思います。


Re: 医師の知らない世界

Pinoco さん

 コメント頂き有難うございます。

> 本気で病気を治すのには、西洋医学の枠の中だけでは難しいと思います。
> 国も医師たちも、目覚めて欲しいものだと思います。


 私も同意見です。

 糖質制限を通じて西洋医学の限界を私もひしひしと感じている次第です。

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

Re: 原因不明のしびれ・痛み・冷感・脱力

にゃんこにゃんこ さん

 御質問頂き有難うございます。

 糖質制限開始後に身体が痛むというエピソードからは私は「ケトン体がうまく使えていない」という現象をイメージします。
 なぜならばケトン体はあらゆる痛みを抑える事ができ、なおかつ副作用の少ない超優秀な鎮痛物質だからです。

 2014年11月9日(日)の本ブログ記事
 「痛みを和らげるケトン食」
 http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-476.html
 も御参照下さい。

 従ってまず確認して頂きたい事は、糖質を制限した代わりに「十分量の良質の脂質を補充できているかどうか」という事です。
 糖質制限初心者が陥りがちなピットフォールとして、従来のカロリー制限をやったまま糖質を制限をする事によって、絶対的な脂質・タンパク質不足に陥ってしまうという事があります。

 あるいはそれまで糖質代謝に依存しきっていた人は急激な糖質制限をする事でケトン代謝が回りきらずに一過性の体調不良に陥る可能性もあります。

 2013年12月20日(金)の本ブログ記事
 「何度でもやり直せる」
 http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-125.html
 も御参照下さい。

 十分に脂質を確保した上で、それでもうまくいかない場合はゆっくりと糖質制限に慣らしていく事も考えましょう。

 なお「血液検査は異常なし」は「大丈夫」を保証しません。それに普通の検査値の読み方では見過ごされてしまう場合もあります。

 例えばケトン体は糖質制限推進派医師でないとまず自主的に測定しないでしょうし、肝機能を反映するAST, ALTという数値は基準範囲内で低めの場合、普通の医師からはスルーされますが、AST>ALTとなっていればビタミンB6不足の疑いがある事がわかります。

 見る人がみれば一見異常なしの血液検査でも、異常が指摘される場合があります。差し支えなければたがしゅうブログ右段のメールフォームからでも結構ですので、データを見せて頂ければ幸いです。

薬に頼るだけでは良くならない

考え方やライフスタイルから見直すことが鍵であるとまさに実感しております。

私が闘病しながら心身とも徐々にラクになっていった理由ですが、たがしゅう先生が薦めてくださった本のおかげなのです。

今日、江部先生ブログで新書「心が変われば・・」の記事が出ました。
鮮明に覚えております。今年の元日、「嫌われる勇気」を江部先生に紹介されていたたがしゅう先生のコメント文、大変印象的なものでした。
早速私も興味を持ち、おかげさまで大きな一冊となったのです。
たがしゅう先生に心からお礼を申し上げます。

ところで元日の記事からもうすぐ10月、あっという間に今年もあと三ヶ月なんですね・・

Re: 薬に頼るだけでは良くならない

一読者 さん

 コメント頂き有難うございます。

 アドラー心理学の考え方は、糖質制限実践者にはとてもフィットするのですよね。皆様に共感して頂き私も嬉しい限りです。

 来年の元旦には何を書こうか、今から悩みます(^_^;)

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

Re: No title

にゃんこにゃんこ さん

 個人情報が含まれる御質問内容なので確認させて下さい。
 メールアドレスが添付されていないので、このままだとこのコメント欄に返事をお返しする事になってしまいます。

 もし他の人に見られたくない場合は、お手数ですがメールアドレスを添付し、再度「管理者にだけ表示を許可する」にチェックを入れて再度コメントを頂けますでしょうか。

 2014年11月20日(木)の本ブログ記事
 「コメント投稿時の注意点」
 http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-487.html
 も御参照下さい。
 
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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