サイアミディン

不自然な乳汁分泌

ブログ読者のあーちゃん47才さんから次のようなコメントを頂きました。

産婦人科で出産し入院している時の食事が
「母乳にいいから」と 牛乳・ヨーグルト・チーズが
しょっちゅう出てました。また、ごはん・うどん・もちは
よく母乳が出るが食べ過ぎると乳が詰まり
乳腺炎になるなど 指導もありました。

上記の食品は乳製品も含めて
確かに 胸が張ります。
母乳での子育てが終わった今でも
糖質を摂りすぎたりすると胸が痛くなることもあります。

母乳がよく出る食品は 乳腺がつまりやすいので
乳がんになりやすい?のでしょうか。


女性しか経験できない貴重な体験を教えて頂き、大変有難いです。

今回はここから乳製品の本質について考えてみたいと思います。
まず牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品を食べると胸が張るとの事ですが、

授乳期に胸が張るということであれば、おそらくは乳汁分泌量が増加している事が想像されます。

この実体験を元にすれば、「乳製品には乳汁分泌を助ける何らかのメカニズムが存在する」という事になります。

一方、高糖質のごはん、うどん、もちを摂取すると、

同じく乳汁分泌が促進されるものの、乳腺が詰まり乳腺炎を起こしてしまわれるという実体験です。

乳製品にも高糖質食品にも乳汁分泌を刺激する共通メカニズムはありそうですが、そのシステムの駆動のされ方に違いがある事がわかります。

はたして、この両者の違いはどこにあるのでしょうか?


真っ先に思いつくのは両者に共通して含まれる糖質の絶対量の違いです。

授乳期に乳汁が分泌されるという事自体は、子孫へ栄養補給ができることから見ても生命の存続に際して有利に働く事は明らかでしょうから、

乳製品中に自然に存在する程度の糖質量は、少なくとも授乳期には適量である可能性があります。

また別の見方をすれば、乳汁分泌という授乳期の最重要課題を、

乳製品はサポートできる存在になりうるという風にも考える事ができます。

これは乳製品がわざわざそのために存在するしているというのではなく、

ヒトの方が乳製品を乳汁分泌に利用できるよう合わせにかかっているというのが妥当だと私は考えます。

なぜなら乳製品の大元である牛乳は、仔牛を育てるのに最適化された物質と考える方が自然だと思うからです。

従って、乳製品の本質は「別種の生物を育てるための最適栄養物質をヒトがうまく利用し加工したもの」という所にあるのではないかと思っています。

一方で、ごはんやうどん、もちなどの農耕開始以降に誕生した高糖質食材は、

おそらくは不自然な乳汁分泌をきたすために、

もともと備わった乳汁分泌システムでは対応仕切れず、乳管が詰まり炎症を起こし、乳腺炎につながるのではないかと思います。

ただそれはあくまで実際に起こった事象からの推測に過ぎません。

糖質量の違いによって身体の中ではどんなメカニズムで一体何が起こっているのでしょうか。


それについて考えるために生理学的に乳汁分泌システムを概観します。

乳汁分泌に関わるホルモンには、大きく「プロラクチン」と「オキシトシン」の2種類があります。

オキシトシンは脳下垂体の後葉から分泌されるホルモンで、

赤ちゃんがおっぱいを吸う時の吸啜(きゅうてつ)刺激によりパルス状に分泌が刺激される特徴があります。

吸啜刺激以外にも赤ちゃんとの肌と肌との触れ合いや、赤ちゃんが愛おしいと想う気持ちだけでも分泌が刺激される事から、

俗に「愛情ホルモン」とも呼ばれています。

最近は認知症のケア技法である「ユマニチュード」という方法論にも応用されています。

そして、もう一つの「プロラクチン」にも注目してみます。

プロラクチンは脳下垂体の前葉から分泌されるホルモンで、

乳汁分泌以外にも妊娠維持、母性行動誘導、免疫応答、浸透圧調節、血管新生など多彩な生理作用があり、

男性が射精オーガズム後、急速に性欲を失う原因となっている事も分かっています。

またオキシトシンと似ていますが、搾乳刺激によってもパルス状に分泌が刺激されます。

そんなプロラクチンは視床下部からのプロラクチン放出因子 (PRF:prolactin releasing factor) と、プロラクチン抑制因子 (PIF:prolactin inhibiting factor) によって放出量が調節されています。

なかでも強力なプロラクチン抑制因子なのが、本ブログでよく取り上げる「ドーパミン」です。

ドーパミンが出ている状況というのは基本的にプロラクチン分泌が強力に抑えられている状況だと言えます。

ところで糖質を摂取すると強制的にドーパミン分泌が刺激される側面がありますが、

それならばプロラクチン抑制因子であるドーパミンが放出される糖質摂取で乳汁が分泌されるというのは矛盾しているように思えます。

これに関しては、授乳期には基本的にプロラクチン濃度が高まっているの状態なのて、乳汁が合成・分泌されやすい状況です。

そこに持ってきて糖質を摂取し乳汁分泌が刺激されるけれども、その後のドーパミン刺激で一気に抑制されます。

そんな急アクセルから急ブレーキに踏み替えるような事をするから乳腺が詰まり、乳腺炎を起こすのかもしれません。

また乳汁分泌そのものが悪いのではなく、乳腺炎を繰り返して起こる慢性炎症が乳がんの発症リスクを高めているのかもしれません。

そしてこうも考えられます。乳製品くらいの量の糖質ではそこまでの急アクセル・急ブレーキにはならないと、

あるいは乳製品の場合は乳糖という糖質の質の問題も関与しているかもしれません。

あーちゃん47才さんのコメントを読んで、そんな事を考えた次第です。


いずれも実体験の欠如した私の想像に過ぎませんが、

あくまで仮説の一つとして参考にして頂ければ幸甚です。


たがしゅう
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素朴な疑問

記事に取り上げていただき ありがとうございます。

素朴な疑問ですが・・
糖質を摂りすぎると 母乳は甘いのか・・また、
母乳は血液でできているので糖質が多いと
やはり血液と同じでドロドロなのか・・

さらさらより、ドロドロのほうが詰まりやすい。
使用しなかった乳汁は血管から流れていくと
思っていますが それが本当なら
ドロドロだから戻って行かない。
そこにしこりが出るのか・・

などなど考えておりました。
前にテレビで見たのですが
癌を調べるときに

糖を注入して 癌は糖が好きなので誘因する。なのでどこに癌があるか分かる

と耳にしました。なので 食べ物によって母乳の成分も変わるのか・・糖質過多の母乳をつくることもあるのか・・

それが使用しなくなった場合、糖過多の乳汁がたまり
糖を栄養に癌が大きくなるのか・・

はたまた糖質を摂りすぎて 免疫も落ちて 癌になるのか・・

などなど
おかげさまで 久しぶりに頭をつかいました。
記事に取り上げていただいたおかげで
脳は活性化した気がします。

また何か こうじゃないか!なんてことがありましたら
ぜひ教えてください。

ありがとうございました。

Re: 素朴な疑問

あーちゃん47才 さん

 コメント頂き有難うございます。

 考えを深めていくと次々と疑問が連なりますよね。私と一緒です(笑)。
 御質問頂いた事、女性の立場でないと考えにくい事も多いです。是非とも女性の糖質制限実践者の方々による発展的考察を期待したいです。

> 糖を注入して 癌は糖が好きなので誘因する。なのでどこに癌があるか分かる

 これはPET検査の事を指していると思いますが、こちらは純粋に血液からの糖をがん細胞が利用するという事であって、乳汁との直接の関連はおそらくないと思います。

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おすすめ本

こんにちは
糖質制限を始めてそろそろ3ヶ月になる46歳です。
最近こちらのブログを発見、大変興味深く読ませていただいています。

母乳のことと直接関係ないのですが、お聞きしたいことがあり、
こちらに書かせていただきました。

私自身は炭水化物を摂らず、たんぱく質をしっかり摂る食事法を
自分なりに理解し実践しています。
家族にはまず理解されないだろうと思ったので
先にとにかく始めてみました。

今日、大体のことをざっと口頭で説明してみたのですが
やはり少し難しかったようです。

実は主人は外国人で(非英語圏の欧州人です)英語は理解しますが
日本でいうところの一般的な栄養学を英語で説明しても、
素地がないのか、いまいちよくわからないようです。
(たんばく質をproteinと説明しても、言葉は知ってるけど
結局何のこと?みたいな反応で、びっくりです)

そこで大まかな私からの説明を聞いた後、英語の文献を読むことで
理解が深まるのではないかと思うのですが、
私にはどの本を選べば良いのか、見当がつきません。
とりあえず、私が読んだことのある、ジョコビッチの『生まれ変わる食事』
は勧めたのですが、糖質制限について一般的に理解しやすく書かれた英語
の本をご紹介いただけないでしょうか。

『小麦は食べるな』や『いつものパンがあなたを殺す』は翻訳ものなので
原文を読めばいいのでしょうが、私が未読のため細かい内容を知りません。ただ、グルテンフリーについてがメインだと思うので・・・
それよりも
江部先生が書かれているような
The糖質制限!のような初心者にもわかりやすいものがいいのでは
と思うのです。

これは!というものがあれば、ご紹介いただけるとありがたいです。
よろしくお願いします。

それから、母乳についてですが、私も息子を完全母乳で3年ほど育てたので
ちょっとコメントさせてください。

糖質を摂りすぎると 母乳は甘いのか・・また、
母乳は血液でできているので糖質が多いと
やはり血液と同じでドロドロなのか・・


と、あーちゃん47才さんが書かれていましたが、
私の当時の食事はいわゆる玄米菜食に近いもので
肉、甘いものは摂っていませんでした。
ただ、猛烈にお腹が空くので、おにぎりだけは
部活をやっている高校生のように、モリモリ食べていました。

一定の時間を守って(間を空けすぎないように)授乳することで
詰まりを起こさないように、と助産師さんに言われて
常に気をつけていました。
うっかり数時間寝てしまった時などは詰まることもあり、
おっぱいマッサージを受けないと乳腺炎になる間際だったことも
あります。

今考えると、甘いものを口にはしていなかったけど、
ご飯からの糖質は異常に摂っていたはずで、そのせいで
詰まりやすかったのかな、と思います。
「なんで食事制限を厳格に守っているのに
 授乳時間が少々伸びたぐらいで詰まるの?」
と当時は思っていました。
ただ、不思議ですが肉・甘いものを制限できている時の
おっぱいはサラサラしていてさっぱりした甘さで
これなら赤ちゃんも美味しく飲んでくれるだろうな、という
味でした。

肉や甘いものを食べてしまった時には明らかにドロっとした
詰まりやすそうなおっぱいでした。
味は、思い出せないのですが、甘いというより塩辛いような
明らかに美味しくない味のおっぱいだったと記憶しています。

もう今更実験はできませんが、糖質制限食をしていたら
詰まりとは全く縁のない授乳生活だったのでしょうか・・・
助産師さんも「甘いもの食べちゃダメ!ご飯をしっかり食べなさい」って
結局何を指導したかったのかしら・・・
糖質制限のことを知った今は、矛盾を感じます。

だらだらと長文、失礼いたしました。
これからも色々と勉強させていただきたいと思います。


Re: おすすめ本

マッキー さん

 コメント及び御質問頂き有難うございます。

> 糖質制限について一般的に理解しやすく書かれた英語
> の本をご紹介いただけないでしょうか。
> これは!というものがあれば、ご紹介いただけるとありがたいです。
> よろしくお願いします。


 私も英語の本にそこまで詳しいわけではないのですが、
 一つは、「The art of science of lowcarbohydrate performance」という本があります。
 http://www.amazon.com/The-Art-Science-Carbohydrate-Performance/dp/0983490716

 もう一つは「Good calories, bad calories」という本もあります。
 http://www.amazon.co.jp/Good-Calories-Bad-Gary-Taubes-ebook/dp/B000UZNSC2

 いずれも私が熟読できたわけではないので、あくまで「欧米で比較的有名な本」という範疇ですが、参考になればと思い紹介致します。
 またブログ読者の方で、他に「こんな本もいいよ」っていうのがあれば御教示頂ければ幸甚です。

> 今考えると、甘いものを口にはしていなかったけど、
> ご飯からの糖質は異常に摂っていたはずで、そのせいで
> 詰まりやすかったのかな、と思います。


 貴重な体験談を教えて頂き感謝申し上げます。

 やはり糖質摂取には分泌促進よりも「詰まらせる」という現象を起こす要因があるのでしょうね。
 その主因が不自然に高められたドーパミンによる強力なプロラクチン抑制ではないかと私は考えています。

Ketoについて初心者向き

KETO CLARITYはいかがでしょうか。LCHFのやり方とか疑問についての答とか、一応網羅されていると思います。

http://www.amazon.com/Keto-Clarity-Definitive-Benefits-Low-Carb/dp/1628600071/ref=asap_bc?ie=UTF8

Re: Ketoについて初心者向き

ルバーブ さん

情報を頂き有難うございます。

うれしいです

お返事ありがとうございました!
こんなに早くお返事いただけるなんて、感激です。

初心者むけのわかりやすい内容、でも主旨がずれていては困る・・・
(最近、ブームにのっかっているだけ内容の薄い本が
 多いように感じます)
など考えると、本当はぜ〜んぶ目を通して主人に紹介したいのですが
それは物理的にも難しく、熟知しておられる方に伺うのが一番!
と思い質問させていただきました。

ルバーブさんもありがとうございます。
読んだ方からのご意見、大変貴重です。
初心者向きで色々網羅されているとのこと。
ぜひ調べてみます!

私の糖質制限はなかなか思うような結果に結びつかず、
今は辛抱のしどきかな、と思っています。
玄米菜食や朝抜き(半断食)、ナチュラルハイジーンなどを
試して数年、体力がなく全然太れない体になってしまい、
怖くなってきました。そこで出会ったのが糖質制限。
体重計にのって数字とにらめっこの毎日ですが、2kgほど
減ってからまだ体重増加の兆候がありません。

でも、きっと2ヶ月なんて序の口ですよね?
体のこと勉強しつつ、がんばりたいと思います!

過去の授乳婦への栄養指導

たがしゅう先生 ご無沙汰しております

私は助産師として働いた折、勤務していた産婦人科では授乳についての栄養指導を熱心にしていました。
主体は従来の庶民的日本食をもとに穀物魚菜食でした。

やめるべきものとして、乳製品、甘いもの、果物、肉製品、油ものと表現しておりました。

が、今から考えれば元が穀物主体なのです。たくさんの産婦さんを見ていて現実には簡単にはいかなかった理由がよくわかったと思います。

問題は、主食を穀物でたっぷり食べてしまうこと、あとは伝統的日本食のおかずの多くに砂糖がたっぷり使われていることです。特にご飯を食べろというので、つくだ煮や甘辛のおかずを食べてしまうことが多いのです。
そういう方たちの中で、肉食に近くても授乳に問題が起こらない産婦さんたちがいらっしゃって、ご自宅でお食事を拝見すると、全体に少ないのです。特にご飯が少ない。おかずはそこそこ食べておられるのですが、ご飯が少ない。そして薄味でした。ご飯をたくさん食べないので薄味で問題ないのだと思います。
今から考えれば、砂糖や穀物が少ない食事の方たちがうまくいっていたと思います。

産婦さんの中で穀物菜食を進めている従来の助産師たちに注意を受けやすいご馳走を食べる人たちは多くが過食になっていて甘いおかずとご飯を食べているのだと思います。

また授乳は出産した人だけが可能と思っている方もおられますが、出産も妊娠経験がなくても、乳児と接して産後と同じように授乳に努力することで、出産した人と変わらぬように授乳ができるようになることも、きちんと証明されています。

現場作業員であるが故、数値的な実験や論文を書くことの少なかった過去の看護職は、経験論で伝聞的に職にあたることが多かったと思います。しかし経験論には目の前で起こる事象ですから、説得力がありました。もう少し科学的に見ることができれば、もっと良いものになったと思いますが、それを智識的に補えなかったのが致命的ですね。
今後はそういう点が、修正されて行ければよいなと思います。
 
現在どのような栄養が進められているのか疑問ではありますが、糖質制限的な考えが広まっていくことを、子供と母体の健康のために祈るばかりです。

Re: 過去の授乳婦への栄養指導

rosemary さん

 コメント頂き有難うございます。

 高糖質食品であっても、量がコントロールできればそれも一種の糖質制限ですよね。ごはんでもうまく行っていた人はその辺が上手にコントロールできていたのかもしれませんね。

> 現場作業員であるが故、数値的な実験や論文を書くことの少なかった過去の看護職は、経験論で伝聞的に職にあたることが多かったと思います。しかし経験論には目の前で起こる事象ですから、説得力がありました。もう少し科学的に見ることができれば、もっと良いものになったと思いますが、それを智識的に補えなかったのが致命的ですね。


 確かにそうですね。

 現場の体験と理論的考察が融合すると互いの弱点を補い合えると思います。

MEC食と授乳

たがしゅう先生はじめまして。
いつも興味深く読ませていただいております。ありがとうございます。

さて、MEC食での授乳についてブログを書かれている方がいますのでご紹介します。
ttp://ameblo.jp/lowcarblife2012/theme-10084907866.html
(「ローカーボ女子部」さんのサイト内「テーマ:MEC食と授乳」です)

「結論として、MEC食で母乳は詰まりません」とあります。

からだって面白いですね。

Re: MEC食と授乳

はるち・ひろちのとーちゃん さん

 情報を頂き有難うございます。

 やはり糖質を制限した生活が人類の本来に近いということの現れなのではないかと思います。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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