サイアミディン

自覚しにくい心の問題を知る

江部先生の新しい本を読みました。



当ブログでも年始に紹介したアドラー心理学の考えを知った江部先生が、

これまでの御自身の人生を振り返り、実はアドラーと近い考え方で生きてきた事に気が付かれて、

その振り返られた人生訓を一冊の本にまとめられた内容でした。

心と身体は文字通りつながっており、そのつながりを円滑にするのが人間関係で、この3者は切り離せない、というメッセージに始まり、

様々な診療経験を下に語られるメッセージはいずれもわかりやすくて、大きな説得力がありました。流石は江部先生です。

今までの糖質制限本とは違った江部先生の一面も知る事ができました。
特に最後の章に関しては、今まで語られる事のなかった江部先生の生い立ちから糖質制限食に出会うまでの経緯も語られていました。

赤裸々に書かれたその時期のお話を読んで、私は思いました。

「人に伝わるメッセージを書く」というのはこういう事なんだろうな、ということを。

私は同じように本を読んでいても、すっと入ってくるメッセージと、何度も読み返さないと理解できないようなメッセージとがあります。

おそらく人に伝わりやすい熱のあるメッセージには実体験が欠かせないのではないかと思います。

だからといって実体験のないメッセージがすべてダメというわけではありませんが、実体験のあるメッセージはそれだけで重みと説得力が一段階増すような気がするのです。

江部先生が御自身の糖尿病が判明し、自分の身体で糖質制限食の効果を試し、その結果確信を持って患者さんに糖質制限指導を行ったことも、

実体験があったからこその強いメッセージであり、だからこそここまでの糖質制限普及につながったのではないでしょうか。

この姿勢にはおおいに学ぶ所があると私は思います。


また、今回の本で扱われている心の在り方に関する問題は私も非常に関心を持っています。

というのも私が糖質制限がうまくいかないケースでの要因としても心の問題が大きいと感じているからです。

例えば、多くの患者さんは、「それまでの食生活を大きく変えるなんて無理」だと最初から決めつけている節があります。

その結果、いくら私が熱心にしてみたところで、「できるだけ減らすようにはしてみましたけど、なかなかね・・・」などと言われ、少なくとも私に見える形での変化は現れません。

しかし指導した患者さんのうち、2~3割の方は劇的な改善効果を示される事も経験します。

つまり「絶対にできないこと」ではなく、「やろうと思えばできること」、「変えられない」のではなく、「変えられるということを自覚していない」のだと思うのです。

この心の問題をいかに正しい方向に導くかが、医師としては重要な役割だと思っています。

ただ私ができるのはあくまでその手助けであって、最終的には患者さん自身にその問題に気がついてもらう必要があります。

なぜならば自分の病気を根本的に治せるのは自分しかいないからです。

しかしその一方で、多くの患者さんの中には長い歴史の中で培われた医師への絶対的な依存心・崇拝心のようなものが強固に残存しているようで、

患者さんの自由な決断を邪魔して、結果的に「素人にはわかりません。先生にすべてお任せします」との言葉が導き出される事もままあります。

私は、それがいかに自分を健康から遠ざけている考え方であるかという事を、患者さんには気が付いてほしいと思っています。

江部先生がこの本で述べられているように心と身体は明確につながっています。

真の健康を目指すならば、自分の心の在り方を見つめなおす事が必要だと思います。

それは糖質制限実践者についても同じ事が言えます。

たまに糖質制限をきちんと実践しているにも関わらず、相変わらず症状を訴え続ける方と出会います。

そういう方の多くは不安の制御ができておらず、不安が不安を呼び、新たな症状を出現させているような印象を持つ事が少なくありません。

医学的に言えば自律神経の働きが乱れやすい人にそういう事が多いような気がします。

そういう時に、ありのままの自分を受け入れて心を落ち着かせ、考え方を変えるというアプローチは非常に有効な手段となりますが、

それができるのは他ならぬ自分しかいませんので、その患者さんが医師に頼るという発想を持っている以上は、症状の改善を達成する事はできないのではないかと感じていました。


そんな中もう一つ、医師としての私にも参考になるメッセージがありました。

それは「患者さんのためになるのなら、過去の自分の治療法にはこだわらない」という言葉です。

医師はともすればプライドが高くなり、次第に自分の治療に絶対的な自信を持つようになります。それが自分の専門分野ともなればなおさらです。

しかし、もしもその治療法が間違っていた時に「私が間違っていました。すいませんでした」と言えるかどうかは大事な資質です。

なぜならば、医師にとって一番大事な事は「患者さんの健康を取り戻す」ことであって、「自分の治療法を普及させること」ではないからです。

いくら自分の治療法に自信を持っていたとしても、それが結果的に患者さんの健康に寄与していなければ、そのやり方は直ちに見直さなければなりません。

それはカロリー制限を押し付ける多くの医師に当てはまる事ですが、糖質制限推進派医師となった私においても例外なく当てはまることです。

上述のような糖質制限指導をしていてもうまくいかない患者さんと出会ったときに、

自分は完璧な指導をしている、悪いのは患者の考え方のせいだ」とおごり高ぶるのではなく、

どうすれば症状を改善させる打開策が得られるか、そのために別の方策がないかを患者さんと一緒に一生懸命に考えること、

そのように謙虚でなければならない、という事を教わったように思います。

心の在り方に関してはまだまだこれから学ぶ事が多そうです。


たがしゅう
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No title

たがしゅう先生

糖質制限をはじめてかた>>不安が不安をよび新たな症状が出現する、自律神経の働きが乱れる事、が極端に少なくなりました。

私の場合、身体面での不安ではく、生活面での取り越し苦労する事やイライラの改善です。穏やかさを失っても、すぐに気持ちを落ち着かせるコツをつかんだように思っています。

先生のブログに出会ったお陰です。お会いできる事、とても楽しみにしています

くんだみえ

Re: No title

栗田三江(くんだみえ)さん

 コメント頂き有難うございます。

 糖質制限をしても周りの世界は何も変わらないけれど、糖質制限をする事で自分が世界を見る視点は変わるのですよね。

 私の周りでも相変わらず嫌だなと思う事は時々起こりますが、私もそれなりに受け流す力が上達しているような気が致します。

管理人のみ閲覧できます

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Re: No title

栗田三江(くんだみえ)さん

 先日はお世話になりました。

 恐れ入りますが、返信用メールアドレスを入力の上で非公開コメント頂くか、
 もしくはブログ右段にあるたがしゅうブログの「メールフォーム」からのメール送信をお願い致します。改めてこちらから連絡させて頂きますので。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
漢方好きの神経内科医です。
南鹿児島さくら病院に勤務しています(下段にリンクあり)。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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