サイアミディン

原点に立ち返り見えてくる現在の問題点

先日宗田先生の新書をご紹介させて頂きましたが、

読んでいてもう一つ感じるところがありました。

中盤の従来の栄養学の誤りを指摘する部分において「食品交換表」の話が出てきます。

糖尿病診療に関わる人なら言わずとしれた従来の糖尿病食事療法のスタンダードとなっている資料です。

簡単に言うとすべての食品を6つのグループに分けて、80kcalを1単位とし、

例えばグループ1の「穀物や芋・豆類など」であればこのくらいの量で80kcalになりますよ、というのを実際の絵で示し、

その絵を参考に指示されたカロリー、例えば1600kcal/日が守れるように日々の食事の量や盛り付けを工夫しなさいと指示するものです。

しかし糖質制限の理論を学べばわかるように、仮に同じ1600kcalであっても糖質の量は0g~400gまで実に幅広い値をとりうるので、

せっせとカロリーを守っていても、糖質過多となれば大きな血糖変動をきたすことになってしまうというお粗末な指導内容です。
そんな食品交換表、1965年に第1版が刊行されたのですが、

実はその頃には糖質制限の観点が盛り込まれていたとこの本には書かれていました。

インスリンが発見され臨床応用されるようになったのはさらにさかのぼり1921年の話ですが、

その頃は糖尿病に対する数少ない対抗手段の一つが糖質を制限する事でした。

しかし糖質制限だけで1型糖尿病をコントロールするのは厳しく、インスリン発見前は1型糖尿病は発覚したら平均半年で死にいたる、致命的な病であったそうです。

そして話は戻り、食品交換表が時代とともに版を重ねていきますが、

1993年の第5版から糖質制限の観点が食品交換表から消え去った事が示されています。

古い食事療法など参考にならないと思われたのでしょうか、それとも薬物療法でコントロールできるから大丈夫と思われたのでしょうか、

どうして糖質制限の観点がなくなったのか、真実はよくわかりません。

ただその編集の決断が大きな誤りであり、その結果その後の日本の糖尿病の実態がどのように悪化してしまったかは既に皆さんが知るところだと思います。

結果的に糖質制限の観点を食品交換表から外した事は改善ではなく、「改悪」につながってしまったわけです。


そしてもう一つ、糖質制限の観点にタンパク質制御の観点も加えたケトン食

振り返ればこのケトン食の発祥も1921年と100年近く前とかなり昔の話です。

当時よりケトン食は難治性てんかんの制御に有効性を示していたはずですが、

20世紀前半から始まる抗てんかん薬の本格的な台頭により、ケトン食は廃れてんかんに対し実に90年近い間てんかんに対して食事療法が注目される事はなくなりました。

しかしながら、ここ10年程の間に再びケトン食の有効性が再注目されるようになってきています。

という事は抗てんかん薬によって食事療法をしなくてもてんかんは制御できるようになると思って食事療法を軽視した当時の医師達の判断は、

やはり結果的に間違っていたということになると思います。


「温故知新」という言葉がありますが、

きちんと古きを温めなかった事が西洋医学を中心とした現代医療の最大の過ちであったと私は思います。

そして新しきを知ることになると信じて疑わなかった食品交換表の改定や抗てんかん薬の利用という決断は、

有益性をもたらすどころかむしろ有害性をもたらす要因にさえなってしまっているのが現状です。

なぜならば一生かかってもその治療から抜け出す事はできず、それを真の意味で病気を治す事ができていないからです。


よく「西洋医学と東洋医学の融合」ということが言われます。

一見聞こえのいい言葉ではありますが、額面通りに受け取るのは危険です。

はたして西洋医学の進んでいる方向は本当にこれでいいのか」という事を抜本的に見直す必要があると私は思っています。

もし西洋医学が間違っていないのであれば、

日本の糖尿病やてんかんをめぐる状況はもっと改善していてしかるべきなのに、現実は決してそうはなっていません。

なぜ今頃になって糖質制限やケトン食の有用性が見直されるようになったのか、

それはこれらの食事療法の潜在能力を表すというだけではなく、

裏を返せば現代医療がいかに浅はかな治療であったかという事を表しているのだという事に、

我々は気がつかなければならないと思っています。


たがしゅう
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陰謀論

おはようございます。

糖尿病治療において、時代とともに糖質制限の観点が消えていった、というお話しですが、これには、製薬会社や食品産業など利害関係を有する業界団体の政治的な意図もあるのではないでしょうか。

こういうこと言うと、安直な陰謀論だと反論されがちです。
確かにそういう一面もあるかもしれず、何でもかんでも陰謀と結びつけるのは慎まなくてはいけません。

ただ、最近、孫崎享という元外交官の「戦後史の正体」という本を読み、世界は私たちが想像する以上に暴力に支配されていて、日本という国もアメリカの暴力の元にある傀儡国家なのだ、ということを今まで以上に強く認識させられました。

ここから推測すると、医学の分野においても、様々な業界団体の思惑が絡み合い治療法が歪んでしまうことは多いにあり得るのではないか、と思いました。

勿論、糖質制限がなかなか浸透しないのは、業界団体の思惑のみならず、主食を摂るべきだとか日本人はお米を食べないとダメだなどの文化的刷り込み或いは私たちの思い込み、また単純に糖質が快感でやめられないといったことなど、色々な理由が絡まっていると思います。

ちなみに、この思い込みというのは本当に手強いものだとつくづく感じます。
糖質制限を薦めてみても、病気で苦しんでいる人でさえ、なかなか聞く耳を持ってもらえません。
先生も、患者さんのうち理解し実践する人はだいたい2割くらいだということをおっしゃっていますが、なんとももどかしいことだろうと想像します。
私は、食事法を薦めると相手は不愉快に感じることが多いということ学んでからは(まあ、私の言い方の問題もあるのかもしれませんが)、ちらっと言う程度にとどめています。
あとは、相手次第なのかもしれません。
相手側にそれを受け入れる素地があれば、こちらがちらっと言っただけでも自分からどんどん勉強するでしょうから。

業界団体の圧力が(おそらくは)存在し、ならば草の根で広めていくしかないのに、肝心の人々の思い込み・思考停止のせいでそれもままならず、果たして糖質制限は広がっていくのでしょうか、100年後・500年後人はどんな食事をしているのでしょうか。

Re: 陰謀論

マルセル さん

コメント頂き有難うございます。

> 糖尿病治療において、時代とともに糖質制限の観点が消えていった、というお話しですが、これには、製薬会社や食品産業など利害関係を有する業界団体の政治的な意図もあるのではないでしょうか。

おそらくそういう事も絡んでいるでしょうね。
ただ糖質が血糖値を上げるという事をわかった上で戦略を立てているのなら確信犯ですが、
自らの欲望に合わせて利益を追求していき、結果的に今の状況が生み出されたのだと私は思います。
そういう意味では、自らの「健康になりたい」という欲望を他者依存型的に追求し、従来医療に従い続けている自分で考える脳を持たない患者さん達も同じ構造です。

しかし大事な事は、真実を知った上でどう行動するか、です。
真実がわかった後も甘い蜜から離れられないのは既得権益取得者の常ですが、
権益を手放してまで本当に大切なものを守るために行動を変えられるか、そこにヒトの大きな価値が生まれると思います。

No title

たがしゅうさん

大変有意義な問題提起だと思います。
現状を正しく認識し対策を考えることは我々の職場でも常々重要視されるのですが、医療の現場は製薬会社側の力が余りに強すぎるのでしょうね。大学教授といえど個人ですから大企業から講演料や研究費という名目で数千万単位の金が振り込まれれば嘘も方便になりますね。なんせタバコのような明らかな毒物ですら世界中で規制なしだったのですから仕方ないですね。

一方で自動車ですとか我々の使っている各種機械の安全装置の進歩は目覚しいものがあります。ほんの少しのエラーですとか人間の不自然な動作から危険を読み取って緊急停止で事故を防ぎ人命を守るような仕組みになってます。それは各種法令で人命を守ることを最優先とし重大災害を起こした場合、企業側が罪を問われる仕組みになったからです。つまりインセンティブが正常に働いているのが普通の社会であって残念ながらそうではないのが今の医療なのかもしれません。
インフルエンザ予防なんかもそうですが、果たしてそれで国民全体がどの程度利益を得るのか?逆に副作用があった場合はどうなのか?そういった大事なコスト計算がおざなりになっている気がします。どうも厚労省、文部省はじめ日本のお役所はおかしいですね。昔の陸軍省海軍省を笑えません。

Re: No title

SLEEP さん

 コメント頂き有難うございます。

> インフルエンザ予防なんかもそうですが、果たしてそれで国民全体がどの程度利益を得るのか?逆に副作用があった場合はどうなのか?そういった大事なコスト計算がおざなりになっている気がします。

 確かにごもっともなのですが、扱う対象が生命なだけにどうしても難しい所があるんですよね。

 例えばスタチンを飲んでいたのに脳梗塞を起こしたという出来事があったとします。この場合、スタチンによる利益はあったのか、副作用のデメリットはどの程度だったのか、個体差というバリエーションがある以上計算のしようがない所があるわけです。ある人はスタチンのおかげで脳梗塞になるのが遅れたと思うかもしれないし、また別の人はスタチンの副作用で脳梗塞になったと思うかもしれません。どちらと捉えたとしても絶対的な正解の示しようがないので、結局うやむやになってしまいます。そこが機械工学との決定的な違いだと思います。

No title

たがしゅうさん

釈迦に説法を承知で書いてますが、国民が医療費にどの程度負担できるかを試算して平均損失余命やQOLをポイント化し、最優先のものへ重点投資するのは可能ではないでしょうか?
今のやり方はサッカーのレアルマドリッドのようなもので、放漫経営としか思えません。

まあこれは映画化もされた「マネーボール」の影響ですが。

Re: No title

SLEEP さん

 コメント頂き有難うございます。

> 国民が医療費にどの程度負担できるかを試算して平均損失余命やQOLをポイント化し、最優先のものへ重点投資するのは可能ではないでしょうか?

 うーむ、できそうでできなさそうな難しい問題ですね。
 糖質制限の観点を持つ人とそうでない人でも大分試算が変わってくるような気がします。
 そういう改革ができる立場の人が糖質制限の観点を持ってくれればいいのですけどね。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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