サイアミディン

点滴と糖質制限

医療機関で受ける処置の中で代表的なものに点滴があります。

点滴とは「水分や栄養、薬剤などが入ったボトルを血管(静脈)を通して体内へ投与すること」です。

救急の現場では必要不可欠な処置であり、脱水に対する水分補充、迅速な薬剤投与という意味で非常に有効な医療行為です。

しかし、こと栄養の事となると、ここにも誤った栄養学の常識がはびこっている事に気付きます。

というのも点滴で使われる輸液製剤の栄養はたいていの場合糖質で構成されているのです。
水分を補充することがメインで作られた「生理食塩水」や「リンゲル液」といった種類の輸液には栄養は入っていないのですが、

栄養補充の目的も含まれた輸液製剤の栄養にはほとんどの場合糖質が含まれています。

例えば「水分を入れることを意識しつつ少し栄養を補う」という場合によく使われる、ある「ブドウ糖入り酢酸リンゲル液(商品名は伏せます)」の場合は、1パック500mlの中にブドウ糖が25.0g含まれています。

また維持液といって「水分を入れることよりも食べられない状態での現状維持、および栄養補給」を重視した、ある「ビタミンB1・電解質・糖・アミノ酸輸液」には、1パック500mlの中にブドウ糖が37.5g、アミノ酸が15.0g含まれています。

で、例えば何らかの事情で全く口からものが食べられない状態の人に1日どのくらいの量を点滴で入れるかと申しますと、

体格にもよるのですが、1日1500ml~2000mlあたり使用することが多いです。

したがって絶食して点滴で栄養を補おうとした場合には、おおざっぱにみて60~150gくらいの糖質が1日に入るということになります。糖質制限の観点からみると少し多い糖質量ということになると思います。

一方脂肪製剤という糖質のかわりに脂質で栄養を補う製剤もあるのですが、

他の点滴のように見た目が透明ではなく真っ白の製剤なのですが、これはあまり好んで使われないことが多いです。

なぜかというと普通の点滴で投与すると結構ゆっくりのスピードで落とさないと血管炎といった副作用を起こしたりするトラブルがあるからです。

しかも糖質メインの輸液製剤は豊富なラインナップがあるにも関わらず、脂肪製剤は数えるほどしかありません。

ここでも糖質中心の栄養学が幅をきかせていることがよくわかります。

糖質制限を知る前までの自分は絶食で点滴を受けている患者さんをみて、「食べられなくてお腹はすいているだろうけど、点滴で栄養が補えているから少しの間なら大丈夫」ぐらいの認識でしたが、

今改めてその状況を見直すと、食べられないにも関わらずグルコーススパイクを起こされてさぞ空腹感が助長されて辛いだろうと思ってしまいます。

ましてや肥満があるような人について言えば、「そこに脂質エネルギーがたくさん蓄えられているのに、この上さらに糖質を入れて脂質蓄積の方向に持っていくなんてあまりにも不合理だ」と考えるようになりました。

ケトン食は擬似絶食療法と言われていますが、我々糖質制限実践者は糖質制限を行うことで空腹感が適切にコントロールされることを知っています。

また個人的には3日間の絶食療法も経験したことがありますが、絶食をしてある程度ピークを超えるとそれこそ空腹感が和らぐということも経験的に知っています。

脂肪が蓄えられている人は絶食をきっかけに体の脂質源を利用するよう働きかければ、むしろ体は回復に向かうよう好転していくと思います。

もちろん長すぎる絶食は体に負担をかけますが、少なくとも点滴がその体質の切り替えを邪魔をしてはいけないと思います。

従って最近私はよほどやせている人でない限り、点滴で糖の入った製剤を極力使わないようにしています。


たがしゅう

関連記事

コメントの投稿

非公開コメント

どんな点滴がよい?

>点滴で糖の入った製剤を極力使わないようにしています

 では、どのような点滴をすればよろしいのでしょうか。

 例えば生理食塩水ですと、0.9%NaCLです。500mLでは食塩4.5g、1000mLだと食塩9gが体内に入ったことになります。

 もし必要なカロリーを、ブドウ糖でなく、蛋白質や脂肪中心の点滴で補うなら、価格はすごく高いものになってしまいます

Re: どんな点滴がよい?

精神科医師A 先生

御質問頂き有難うございます。

>  では、どのような点滴をすればよろしいのでしょうか。

具体的には絶食の人の場合は、酢酸リンゲル液500ml、1号液500ml、糖の少ない3号液500mlを基本にする事が私の場合は多いです。

また塩分負荷は腎機能正常であれば多少多めでも腎で排泄量調整されますので大きな問題はありません。勿論血圧などは注意してみていきます。

またいわゆる適正カロリーを点滴で全て補おうとは基本的にしません。
むしろ肥満者は自分の脂肪からエネルギーを使わせるよう仕向けます。
そして絶食期間が長引きそうな場合は、上記メニューに脂肪製剤やアミノ酸製剤を積極的に加えていくというのが現時点での私のスタイルです。また入院患者でDPCなので、費用はマルメです。

糖質制限者と輸液

いつも興味深く拝見させていただいております。
糖質制限して8カ月、閃輝暗点と片頭痛がなく快調です。
少し前、某コンビニのふすまパンを試してみた時の事です、一個食べて15分程で視野の狭窄が起こってしまいました。視界の縁が白く霞んで、視界全体がフラッシュを焚いた様に眩しく見えました。血糖のせいか、追加分泌されたインスリンのせいかわかりませんが、脳と網膜が過敏なくらい反応しているように思えます。こんな私に入院や糖質の点滴が必要になったら一体どうなるのか不安です。
実際ケトン食を実践されている方に糖質の点滴をしたら害は出ないのでしょうか?もしお時間があればお答えいただけますか。

Re: 糖質制限者と輸液

banquo さん

御質問頂き有難うございます。

> 実際ケトン食を実践されている方に糖質の点滴をしたら害は出ないのでしょうか?

確かに。それはどうなのでしょうかね。

久しぶりの追加インスリンで糖の害が過敏に出てしまう可能性はあると思います。あたかもはじめてタバコを吸う際に体が咳などの拒絶反応を示すように。

それは今私が糖質メインの点滴を受けたら人体実験できると思います。不自然じゃないタイミングで一度やってみようと思います。


2000mlは持続点滴ではないのですか?

すみません。大人はよくわからないのですが、2l入ったら、持続にはならないのですか?そうすると、ある程度、
血糖は安定するような気がするのですが。
まあ人間の体がそんなに単純に反応するとは思えませんが。
1日130gの糖が持続で入るのであれば、糖尿病でない限り、
バーンスタイン先生の糖質制限の定義にも合致しますし、
そんなに目くじら立てなくともと思いますが、いかがでしょう。
子どもは低血糖も怖いので、糖なし点滴は難しいです。

Re: 2000mlは持続点滴ではないのですか?

にこ さん

 御意見頂き誠に有難うございます。

> 2l入ったら、持続にはならないのですか?そうすると、ある程度、血糖は安定するような気がするのですが。

 私も最初はそう思いました。持続点滴なら、少なくともスパイク上の血糖変化は起こらないのではないかと。

 でも実際はなぜかあまり血糖値は安定しないことが多い印象です。これがどういった理屈でそうなるのかは正直よくわかりません。

> 子どもは低血糖も怖いので、糖なし点滴は難しいです。

 成人の場合は糖新生他バックアップシステムがきちんと働いているので、糖なし点滴、大丈夫です。それに、点滴で糖を完全にゼロにすることは、電解質補正などの観点からも難しいので実際には糖は少しは入ります。

 私はやはり、不要な糖はできるだけ入れないとする立場です。

こんばんは^^

たがしゅう先生

点滴の糖質が多いという点、
医療現場で改めてほしいと思います。
たがしゅう先生のような考え方のお医者様が
増えていただきたいと切に願います。



あと、知人の入院の際
鼻から入れる栄養の成分表を
見たことがあります。

ほとんどが糖質で、アミノ酸が少なくて
驚きました。
これでは、まるで砂糖水のようなものだと
ビックリしたことを思い出しました。
あれでは、傷の治りが遅いだろうと
思いました(>_<)

Re: こんばんは^^

坊主おじさん さん

 コメント頂き有難うございます。

 御指摘のように点滴も経管栄養も、糖質主体の旧来の栄養学をベースに製品が作られているので、
 糖質制限的に使えるものが非常に限られているのが現状です。

 糖質制限にもっと確たる市民権が得られれば、こうした状況を打破する業者が出て新しい糖質制限栄養製品を作ってくれるかもしれませんが、今は既存の製品を工夫して使用していくしかないと思っています。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
これまでの訪問者数
FC2アフィリエイト
メールフォーム
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR