サイアミディン

本当に困った時だけのお医者さん

私が患者さんに初めて糖質制限の話をする時には、

「まずはごはんやパンを今食べている量の1/2〜1/3に減らし、

その代わり減らした分だけ肉、魚、卵を中心におかずを増やしてトータルの量は減らさないで下さい」と説明する事が多いです。

このように言うと患者さんからの抵抗感が最小限に抑えられる印象を持っています。

しかし本音を言えば、そんな指導ではたいした改善をもたらす事はできません。本当はもっと糖質を控えさせたいと思っています。

もっと言えば、症状が重い人には糖質制限からの少食の考えも理解してもらう必要があると思っていますが、

そう思っていても、あえて上記の説明に留めるようにしています。

それは「どんなに素晴らしい治療でも、相手に伝わらなければ意味がない」と思うからです。
実際に診察してみると感じますが、一人の患者さんにかけられる時間はある程度限られています。

初診の患者さんにかける時間はおよそ15〜20分、その間に問診をして診察をして、病態を考えて必要に応じて検査をオーダーするような事もしなくてはならないわけですから、

極力無駄を省きたいという事になってしまいますし、できなければ次以降の患者さんを待たせ苦痛を与える事になってしまいます。

それにいきなり糖質ゼロや断食の話をしたりすると、相手に引かれてしまう事は必定です。治療のスタートラインに立つことすらできません。

それならばまずは緩くてもいいから実行可能な事からやってもらうという方が現実的なわけです。

そして2回目以降の診察で、もし緩い糖質制限で効果が十分あればそのままでいいと伝えますし、

効果が不十分な場合はそこでさらに踏み込んだ糖質制限の話をします。しかしここでも時間の壁が例外なく立ちはだかってきます。

また内容が深い糖質制限へ踏み込めば踏み込む程、常識の壁も邪魔して指導がうまくいかない事を多々経験します。

診察という限られた時間と条件の中で糖質制限の本質を伝える事がいかに難しい事かを痛感する日々です。


一方で、ブログという場であれば、

私の考え方を十分量、しかもゆっくりと時間をかけて整理しながら説明する事ができます。

しかもそこに強制力はありません。読みたい人だけが読めばいいのがブログのスタイルです。

ですが診察の場合はそうは行きません。患者さんは何らかの症状に苦しみ、何とかしてほしいという事で病院へ来ているわけですから、

「やりたい人だけやればいい」なんて理屈は通用しません。何かしらの解決策を医師として提示する必要があります。

その時に私としては本心としてはしっかりとした糖質制限を指導したいけど、受け入れられなければ意味がないと思うジレンマの中で冒頭の折衷案に行き着いたわけです。

しかしそう考えると、他力本願的に医師に解決策を求める患者さんよりも、

このインターネットの時代、さまざまなブログやフェイスブックなどで自ら糖質制限の事を学び、

自分の価値観やライフスタイルに合わせて糖質制限を取り入れ実践された方が、

病院で指導を受けるよりよほど私の理想に近い治療を受ける事ができるのではないかと思います。

私のブログを読んでくれて、私の考え方をきちんと理解してくれている読者の方々には、

おそらく私の診察は必要ありません。診察を受けずとも自分で実践する事ができるからです。

診察を受ける必要があるとすれば、実践したにも関わらずうまく行かなかった場合の原因究明か血液検査などでの現状確認の目的くらいでしょうか。

しかしそれすら自分の問題を最も適切に解決できる存在は、自分の行動を最もよく知る自分しかいないわけです。

これだけ糖質制限の情報が広まってきたのですから、これからの医者と患者の関わりは、

「医師依存」から「患者主体」に切り替わる時代になっていくかもしれませんし、そうであるべきだと私は思っています。

基本的には自分で考えて取り組み、どうしても困った時だけ医者を頼る。

そういう時代になれば、今の医療の無駄を大きく削減する事ができるでしょう。

一人ひとりに今まさにできる事があると私は思います。


たがしゅう
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No title

たがしゅう先生

遅くなりましたが、本年も宜しくお願いします。
お正月は糖質制限をやめた元の高糖質生活を10日間ほど続けました。
その結果、1日1食にしていた食事回数は3回になり、
片頭痛再発、
糖質が原因か定かではありませんが、手指のひび割れが発生。
些細なことで苛立ち易くなる。
アウチ!なことになってしまったので、再度糖質制限に戻しました。
高糖質3食→糖質制限3食→2食→1食
という順序で、それほど苦も無く食事回数を減らせました。
ただ、食事の時間以外の空腹は、エリスリトールがたっぷり入った紅茶や
水でごまかしている状態です。

自分の中での食事回数を減らすコツは
「水分を摂取すること」になっています。
また、自分の子どもを思い
「この子たちの為にもまだ病気になるわけにはいかない」
と自分を戒めること。
もし今の自分に子どもがいなければ糖質制限はしていないだろうと思えるほど、子どもは大切な存在です。痛くなっても死んでもいいからうまいものをたらふく食べたいという価値観の人間です。

苛々の改善も含め、精神の不安定は糖質制限で落ち着くのも、ハッキリ身体で理解できました。
年明けから楽しい経験をしました。
長文失礼しました。

Re: No title

郷士郎 さん

 コメント頂き有難うございます。

 御指摘の通り、糖質制限や少食を実践するには実践的なノウハウに加え、気持ちをどのように持っていくかという考え方の問題も大事になってきますね。

 糖質制限も少食も物理的には誰でも実践できる、まさに手の届く距離にある食事方法です。しかし、そのメリットを頭で理解していても実行に移せない場合があります。それはなぜなのか、どのように考えれば実行できるのか、そういう事を考える事も必要だと思います。

No title

たがしゅう先生

お会いした時にご指導いただいた事や、先生のブログの記事から「正しい糖質制限」を自分のものにする事ができました。

私の場合、少々厳しい方がやりがいを感じます。ですからケトン食や不食という考え方を取り入れる事を目標にしています。

1年前にあった「迷い」=標準体重に近づく事への抵抗もなくなりました。体重増加が激しければ内容を自身で調節すればよいわけです。

ここに「不食」という考えを出来る範囲で取り入れればよいと思っています。

くんだみえ

Re: No title

栗田三江(くんだみえ)さん

 コメント頂き有難うございます。

 また私の考えをいろいろと取り入れて下さり恐縮です。
 ただ私自身もまだ試行錯誤の身です。何事も盲信は禁物ですので、どうか良いと思う所だけをうまく取り入れて、栗田さんにとっての最善を目指して頂ければと思います。

たがしゅう先生、こんにちは。

ケトン食に近い糖質制限を始めて以来、健診のたびに、赤血球数が基準値を超えて大幅に多いという結果がでています。

これは、エネルギー産生の為の代謝が、嫌気的な解糖系と比べてミトコンドリアを介した好気的な系に極端に依存していることから、通常の食生活をしている人より多くの酸素を必要として、その酸素を運ぶ為の赤血球も多くなっている、という解釈でいいのでしょうか。

もし、この素人的且つケトン食をしている私にとって都合のいい解釈が正しいとするなら、赤血球数の基準値自体が、糖質を主食とする間違った食生活を前提としたおかしなものであるとも思えてきます。

先生のご見解を伺えればと思います。


Re: タイトルなし

マルセル さん

 コメント頂き有難うございます。

 赤血球の主な働きは組織への酸素供給ですから、赤血球が増えているという事は身体が酸素を欲する需要が高まっているという事を表していると思います。

 一般的には脱水や運動、高ストレス状態などで赤血球が増加する相対的多血症の状態をきたします。マルセルさんはそのいずれかのパターンに当てはまりますでしょうか。もしもそれらが当てはまらないとすれば、糖質制限と多血症との因果関係は残念ながら私にはよくわかりません。
 一方で糖質制限から断食までを実行した私自身のデータでは赤血球数は微増という感じでしたので、糖質制限実践者に普遍的に認められる現象というわけではないのかもしれません。

たがしゅう先生、お返事どうもありがとうございます。

仰るような脱水や運動、高ストレス状態は思い当たりません。

一口に糖質制限と言っても内実は様々であり、そこに個人の食歴や体質の違いなども加味されると、現れる結果は、糖質制限実践者で共通する部分もあるものの差異もあるでしょうね。

先生がある意味で最も重視される"体感"は問題ないので、試行錯誤しつつ様子を見たいと思います。

本来なら

医療機関で生活習慣についてじっくり指導をするのは基本的に難しいですね。
本来ならば医師と連携して自治体の保健師が生活習慣指導を分担すべきだと思っています。
しかし、現実には糖質制限に肯定的な保健師はまだまだいない状態です。
特定保健指導でも、栄養士のカロリー制限指導を聞きながら、「こんなに食べるものを減らしているのに(減らしているのは肉や脂肪ですが)、これ以上何を減らせと・・・」とがっくり肩を落とす市民の方に、栄養士が席をはずしてからこそっと糖質制限の話をすることもしばしば。
厚生労働省がマニュアルに載せない限り、自治体保健師が堂々と糖質制限指導をするのは難しいのです。
なんとか突破口を開きたいと常々考えてはいるのですが・・・。

Re: 本来なら

自治体保健師M さん

 コメント頂き有難うございます。

 私も糖質制限を学び始めの頃は、変わらない現状をしばしば嘆いていました。しかし、心を変えれば気持ちは楽になります。
 
 「あなたのいる場所であなたのできることをやりなさい」という言葉に尽きるのですが、何も体制を一度に大きく変えようと思う必要はないのです。

 もちろん大きく好転してくれるに越した事はないのですが、今できる事を着実に進めていくだけでも大きな前進です。主食をたっぷり食べていた人が半分にするだけでも前進、全く糖質制限の事を知らなかった人へ糖質制限の事を伝えるだけでも前進です。

 そうした自己受容できる行動を続けていれば少しずつ周りの世界は変わっていきますし、正しいことならいつか世界は大きくひっくり返る、いわゆるパラダイム・シフトが起こる、私はそう信じています。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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