サイアミディン

変わらない現状を嘆かない

自治体保健師M さんからコメントを頂きました。

>本来なら

医療機関で生活習慣についてじっくり指導をするのは基本的に難しいですね。

本来ならば医師と連携して自治体の保健師が生活習慣指導を分担すべきだと思っています。

しかし、現実には糖質制限に肯定的な保健師はまだまだいない状態です。

特定保健指導でも、栄養士のカロリー制限指導を聞きながら、

「こんなに食べるものを減らしているのに(減らしているのは肉や脂肪ですが)、これ以上何を減らせと・・・」

とがっくり肩を落とす市民の方に、栄養士が席をはずしてからこそっと糖質制限の話をすることもしばしば。

厚生労働省がマニュアルに載せない限り、自治体保健師が堂々と糖質制限指導をするのは難しいのです。

なんとか突破口を開きたいと常々考えてはいるのですが・・・。


糖質制限推進派の医療者であれば、皆多かれ少なかれ同様の悩みを抱えておられるのではないかと思います。
私も糖質制限学び立ての頃は、そのように感じていました。「なぜこんなに素晴らしい治療なのに周りのスタッフに伝わっていかないのだろう」と。

その理由を考えていくにつれ、そこには幾重にも張り巡らされた常識の壁が立ちはだかっている事がわかっていきました。

しかも現在主流になっているカロリー制限食が、現状を改善させるのに良い方法なのであればまだしも、

高糖質で血糖値の乱高下を繰り返すわ、低脂質・低たんぱく質で必要なエネルギーは枯渇するわで、

逆に病状の悪化を招く可能性のある治療だとわかってからというものは、糖質制限の事を考えようともせず漫然とカロリー制限指導を続けるだけの医師達に対して、

いじめが公然と行われているのをただただ見て見ぬふりをしている傍観者達とだぶって見えて、非常にやるせない想いがぬぐえない時期がありました。


しかし、心を変えれば同じ世界も違って見えてくるものです。

忘れてはいけません。自分も糖質制限を知るまでは、何一つ従来医療を疑えずただただ従っていたということを。

そして自分には高度肥満、睡眠時無呼吸、うつ、脂漏性皮膚炎などと糖質制限をする事で大きく改善しうる伸びしろがありました。

だからこそ糖質制限の恩恵を明確に受ける事ができ、食事療法の大切さに気が付く事ができたのです。そういう意味で私はラッキーでした。

一方で、そんなに症状もなく今を難なく生きている人にとっては、

糖質制限を知り実践したとしても、私と比べるとそれを続けるメリットを感じにくいのかもしれません。

そういう状況の医師にとってみれば、エビデンスのような明確な根拠がない限り、なかなか患者さんに糖質制限を勧めにくいという気持ちがあるのもわからないでもありません。

また患者さんにとってみれば、今までずっと医師に頼っていれば安心という思いがあり、周りの人もみんなそうして来たというのに、

今更医師を疑えとか、主食を抜けとか、今までの考え方と180度違うような事を言われても直ちに気持ちを切り替える事ができないのも無理もありません。

皆が皆すぐに考えを変えられる人とは限らないので、糖質制限がどれだけ正しい治療であろうと、現状がなかなか変わっていかないのは無理もない事なのです。


また医師の立場からは、患者さんを糖質制限指導していてこんな事もあります。

割とまじめな患者さんなんかはある種のパターナリズムにどっぷりとはまっていたりするものですから、

たとえ糖質制限をあまり実践できていなかったとしても、「先生の言われた通りにきちんと糖質制限をやってきました」などと私にアピールしてくる事があります。

もちろん本人としては本気でそう思っている場合もあるでしょうが、実際に実践できていない場合に、私はそのギャップを血液検査のケトン体測定で見抜く事ができます。

空腹時採血で血中のケトン体が上昇していなければ、多少の血糖値を下げる効果はあれど、有効な糖質制限はまずできていないと考えていいと思います。

そうした場面に立ち会った時に、その人が「何か勘違いをたまたま良い糖質制限ができていなかったのか」、それとも「医師に嫌われたくないからとりあえず頑張っていると言っているのか」、

はたまた実は糖質制限の事を信用しておらず、体調はそこまで悪くないのでとりあえずよくなったと言って適当にいなしておけばいいなどと思われているのか、その本心を私は知る事ができませんが、

いずれにしても私の指導で結局あまり行動が変えられない患者さんも多数いらっしゃるのです。


頑固に変わらない体制や、嘘をつく患者に怒りの感情が湧き起こる場面もあるかもしれません。

場合によっては周囲が悪の巣窟のように見えてしまう事もあるかもしれません。

でも心を変えてそんな事になるくらいなら怒らない方がいいですし、むしろ怒るだけエネルギーの無駄になります。

逆に世の中を受容的に眺めてみると、次のように考えられるようになってきます。

「世の中は考えを即座に変えられない人の方が多い。

2:6:2の法則」だってある。それは仕方のないこと。

でもそんな状況でも、今すぐできることはある。

自分の心だけは即座に変える事ができる。

糖質制限を伝えても変わらない相手を嘆く必要はない。

いきなり極端な糖質制限を伝えると引いてしまいそうな相手には、まず糖質を半分に減らす事だけすすめてもいい。

糖質制限の話をするだけでも価値がある。それでも変わらなければ待てばいい。時間が解決することもある。

今の立場で、今できる事を少しずつでも繰り返していけばよいのだ

正しい事であれば時間はかかれど、いつかわかってもらえる日が来るはずだ。」


そう考えるようになって、最近の私は基本的に穏やかに過ごしています。


たがしゅう
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No title

たがしゅう先生

実際に自覚症状として出ている方向けに、たがしゅう先生プロデュースの糖質制限道場のようなものがあったら面白そうだと思いました。

糖質制限の基礎講習や、実際の生活でどのような食べ物を選択するかなど、学んで食べて症状を抑えられれば、帰ってからも続けられます。

私が糖質制限を開始したときは近くに仲間がいないため、かなり不安があったことを覚えています。

ちょっと変わろうかという気持ちを後押ししてくれるような場所や仲間がいれば、人はもっと前に進める気がします。

Re: No title

郷士郎 さん

 コメント頂き有難うございます。

 糖質制限にしても、断食にしても、いかに自分自身と向き合うかという側面があります。

 自分が変わるかどうかを決めるのはその方自身しかいませんが、変えるきっかけは与える事ことくらいはできるかもしれません。

 御指摘のようにそういう道場のような場所や機会が作れれば、それはとても有意義なことと思います。いつか実現したいです。

小保方晴子さんの本

こんばんは。
先日女子会があり、理系女子友の話題はもっぱら小保方先生の本の話でした。私も小保方先生の本を読みたいのですが、どこの本屋でもアマゾンでもソールドアウトです。
理系女子友は、「小保方さんははめられた。最初から偉い先生の盾となって小保方先生は表に出された。講談社が暗々裏に出版に画策したのは、事前にわかったらまた小保方さんがつぶされるからだ。一矢報いられてよかった。」と。

私は理系ではないので、本当の真実は全然分かりませんが、私も早く小保方先生の本を読みたいです。

Re: 小保方晴子さんの本

エリス さん

 コメント頂き有難うございます。

 私は小保方さんの本、電子書籍でダウンロードしました。こういう時に電子書籍は便利ですね。

 内容は途中まで読みましたが、極めて実直に小保方さんの想いが語られている本だと思いました。
 
 「科学者なら学術論文の場で反論しろ」という批判の声も聞こえますが、その道が潰されてしまったからこそ小保方さんはこの方法をとったのだと思います。心ない世間の声に押されて相当辛い想いをなさったかと想像しますが、よくぞ声を上げて下さったと私は思います。

 世間の意見に流されず、私は私でフラットな気持ちで小保方さんの声を受け止めたいと思います。

No title

たがしゅうさん

なぜこれだけの人がカロリー制限食に固執するのか、ひとつ思うのは肉や魚介、乳製品の美味しさが病人食、健康食としてふさわしくないという発想にいたるのではないのではないかと。いわゆる意識高い系ですね。
代替治療をうさんくさい目で見る人はたくさんいますが、菜食主義者やヴィーガンはもっと問題でしょう。なにより人間は骨を食べて生きてきたという進化論に反してるわけですし。

小保方女史についても似たような面があって、清潔感のある小奇麗な女性がああいうことをやったので袋たたきにしてるわけで、今のベッキー騒動と同じで、不倫や嘘なんて世の中別に珍しくもないのに勝手な先入観で拡大してるだけだと思います。

Re: No title

SLEEP さん

 コメント頂き有難うございます。

 常識と呼ばれるものがいかに非常識かという事が、常識の世界の中にいると決して見えない事ってあると思います。

 また意志を持たない人は声の大きい大勢に従います。そしてその声の大きい大勢というのはマスコミが担う事が多いのです。政治だって選挙だってスキャンダルだってみんなそうです。

 自分の頭で考えない人は無自覚に自分の意志を情報操作されているという事に気づかない、そんな中で「一票の重み」だなんて聞いてあきれる話です。そういう世の中の構造をまず気が付くという事が流されない人生を歩む上で大事な事ではないかと思います。

ありがとうございました

遅くなってしまいましたが、
記事にまでしていただき、ありがとうございました。
「糖質制限について相談できる保健師」としてがんばりたいと思います。
ここをみていらっしゃる医療関係者の皆さま。
糖質制限に理解のある保健師は必ずいると思います。
地域での患者さんの相談役に活用していただければ幸いです。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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