サイアミディン

自分の考えを述べつつ質問をする

医師が患者さんから情報を得るために行う病歴聴取(医療面接)の際に、

よく用いる技法のひとつに「オープンクエスチョン」というものがあります。

これは「頭痛はありますか?」とか、「足がしびれますか?」など、「はい」または「いいえ」で答えられる「クローズドクエスチョン」に対して、

「どのような頭痛ですか?」とか、「しびれについてもう少し詳しく教えて下さい」など、患者さんが自由に語れるように促す質問の事をいいます。

患者さんから情報を得る時にはいきなりクローズドクエスチョンから始めるのではなく、

オープンクエスチョンから始めて患者さんに自由に話してもらい、話を聞きながらおよそ病気の本体が想像がついてきた段階で、

裏付けを取るために続いてクローズドクエスチョンを行うというのが病歴聴取の基本です。

初めて来た多くの患者さんは病院という特殊環境で医師から何を聞かれるかわからない緊張感を持っている状況なので、

ざっくばらんに話せる雰囲気作りと自由に症状を語ってもらう質問の仕方が重要になるわけです。
一方で自由に話してもらい過ぎると病気を知るのに関係のない情報まで混ざってしまう事も往々にしてありますので、

医師はその脱線ができるだけ起こらないように適宜軌道修正を加えながら患者さんの話を聞く努力をしています。


さて、このオープンクエスチョンをちょっと違う視点から眺めてみます。

相手にオープンクエスチョンを投げかけるという事は、

投げかけられた相手にとってみれば、「自分の意見を言う」機会を与えられるという事になります。

自分の意見を言い合うという事は円滑なコミュニケーションを行う上で非常に重要な事です。ただもう一つ重要な事はそのバランスです。

自分の意見を相手に押し付けるような事になれば、攻撃的なコミュニケーション(アグレッシブ・コミュニケーション)となってしまいますし、

逆に自分の意見を引っ込めて相手の言われるがままにしてしまうのは、消極的なコミュニケーション(ノンアサーティブ・コミュニケーション)となってしまいます。

その両者の間で、自分の意見も主張しつつ、かといって相手への押し付けにもならないようにするのが「主張的コミュニケーション(アサーティブ・コミュニケーション)」と言うものです。

アサーティブなコミュニケーションを心がければ人間関係で生じる様々な悩みを最小化する事ができます。

例えばアグレッシブだと喧嘩の元になりますし、ノン・アサーティブだと自分が我慢してイライラの元になってしまうところを、

アサーティブであればその両者が起こりにくくなるからです。

そしてオープンクエスチョンはアサーティブ・コミュニケーションを行うための一つのコツでもあるわけです。

糖質制限を周りに広めていく上でも、このアサーティブ・コミュニケーションを心がける事が大事だと私は思います。

すなわち「糖質制限っていいでしょ」ではなく、「糖質制限について私はこう思います。あなたはどう思いますか?」のスタンスを心がけています。


一方で私はこのたがしゅうブログでコメント欄などを通じて、

読者の方々の様々な質問にボランティアで答えさせて頂いております。

最初は糖質制限の専門家でもない自分が、様々な質問に答えられるかどうか不安でしたが、

「わからないことはわからないと言う」という原則を置きつつも、様々な質問に対して自分の意見を述べる場を頂いて、

質問への返答を繰り返していく事で自分の考えがより定まって確かなものに昇華されていく感覚を得てきました。

それというのも皆さんから頂く質問の多くがオープンクエスチョンであったからではないかと私は思います。

「○○について先生の考えをお聞かせ下さい」という質問は、その答えが私の中にない場合に考えるチャンスを与えます。

その考える機会が与えられる事で私の頭の中が整理されていき、

ブログの内容も充実して洗練されたものにレベルアップしていくのではないかと考えています。

ただ、オープンクエスチョンはアサーティブ・コミュニケーションに必要な技術ではあるものの、それだけではアサーティブにはなりません。

例えば、「○○について先生の考えをお聞かせ下さい」という質問があった時に、

その質問に対する返答が難しかったとしたら、返答するのに時間がかかる場合があると思います。

それなのに、「返事はまだですか、早く先生の考えを聞かせて下さい」などと催促されるというのは、

オープンクエスチョンでありながら、アグレッシブなコミュニケーションになってしまっている状況にあると私は考えます。

当ブログに限らず、ブログを開設されている方の所には読者の方々から様々な質問が寄せられていると思います。

それを私も横から眺めたりしていると、時々管理人に投げっぱなしの質問の質問を目にする事があります。

質問がシンプルな事であれば何も問題はないと思いますが、

もしも複雑な問題に対する質問だった場合、それは投げかけられた相手側の立場になってみるとわかると思いますが、

その投げかけが負担に感じてしまう事があると思うのです。


要するにアサーティブなコミュニケーションを構築するために、

オープンクエスチョンは必要な技術ではあるものの、それだけでは必要十分条件にはならないという事です。

アサーティブなコミュニケーションにするためには、難しい質問をする場合は自分の考えも述べる事が大事と私は思います。

「○○について私はこう思うのですが、先生はどのようにお考えですか?」

この自分の考えも述べるというポイントがあるだけで、質問をされた側の負担感も大分変わりアサーティブに近づくと私は思うわけです。

なぜならばゼロから質問の答えを構築する道だけではなく、

相手の考えに対しての自分の考えを表明する機会も与えられ、より考えやすくなるからです。

だから難しい問題に対する答えを求め、誰かに質問をしたいと思った時に、

私なら精一杯自分の頭で考えた上で、質問をする相手へ自分の考えを伝えた上で質問をするようにします。

そうすることでアサーティブ・コミュニケーションにつながりますし、

質問を受けて頂く方への礼儀にもなると私は思います。


たがしゅう
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コミュニケーション

たがしゅう先生、こんばんは。

自分の考えを述べて質問をするということは非常に重要と思います。
会社の会議でも、単に質問、否定的な意見を言うのではなく、自分の考えを述べることは重要と思います。その方が議論が発展すると思います。

その一方で、部下と話をする際に気をつけているのは、あまり自分の意見を先に言いすぎないことです。人によると思いますが、あまり自分の考えを言いすぎると、部下からすると、もし、それに反対の意見を持っていてもいい出しずらくなるかもしれません。これも普段から、どのように周りに方々と接しているのかが大切と思います。

会議や話の目的に応じて、話し方を変えることも必要かなと思います。
改めてコミュニケーションについて考えました。

Re: コミュニケーション

じょん さん

 コメント頂き有難うございます。

> 部下と話をする際に気をつけているのは、あまり自分の意見を先に言いすぎないことです。人によると思いますが、あまり自分の考えを言いすぎると、部下からすると、もし、それに反対の意見を持っていてもいい出しずらくなるかもしれません。これも普段から、どのように周りに方々と接しているのかが大切と思います。

 御指摘の通りだと思います。
 私も後輩の子達と話したりしていると、話しやすいのでついつい糖質制限について熱く語ってしまい夢中になる事があります。
 
 立場が下にある人は本音では嫌だと思っていても言えない状況があるでしょうから、これまた御指摘の通り、大事な所は言い合えるアサーティブな関係を普段から作っておく事が重要と考えます。とはいえ、偉そうに言えるほど実践しきれてはいませんが…。

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糖質制限について

初めまして、こんにちは。
医師の指示で糖質制限を3年以上している者です。
はじめは94kgから運動などして75kgまで落としたのですが、
それ以上運動しても体重が全く落ちてくれません。
インヴェガ、リーマスなど複数の精神病薬を飲んでいることと関係していますでしょうか?
またそうであった場合の打開策はありますでしょうか?
ぜひともお教えください。

Re: 糖質制限について

こんこん さん

御質問頂き有難うございます。

> はじめは94kgから運動などして75kgまで落としたのですが、
> それ以上運動しても体重が全く落ちてくれません。
> インヴェガ、リーマスなど複数の精神病薬を飲んでいることと関係していますでしょうか?
> またそうであった場合の打開策はありますでしょうか?


まずやせるために運動をするのは非効率です。
運動の目的は筋力や持久力の維持・増強と考えた方が良いです。

その上で食事の質と代謝環境が体重管理にとって最も重要と考えますが、
糖質制限を長く続けていると、たんぱく質の再利用効率も高まり、同じ食事をしていても一定の所で体重減少が留まる現象はよく見られます。

打開策は今よりも全体量を減らすか、全体量は減らさず糖質制限に加えてたんぱく質制限も行ない脂質量を増やすというのが一つです。
また御指摘の精神病薬も太りやすくするものがあります。主治医と相談しながら減薬を目指すのも有効と考えます。

2016年1月19日(火)の本ブログ記事
「質の悪い太り方をもたらす薬」
http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-660.html
も御参照下さい。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
漢方好きの神経内科医です。
南鹿児島さくら病院に勤務しています(下段にリンクあり)。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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