サイアミディン

無償と自己批判

本当に情報を広めたいと思うならどうすべきか

先日、日本脂質栄養学会主催の講演会に参加して参りました。

この学会はコレステロールに対する医療として、スタチン推奨の日本動脈硬化学会と真逆の見解を提示しており、以前から注目しております。

私はスタチンの是非に対して自分の頭で考えた結果、「ほとんどの場合でスタチン非推奨」の結論に行き着ました。

その見解を補強するために、あるいはスタチン推奨が大多数の医療業界の中で、大多数の声に流される事なく強く主張する医師達はどんな人達なのだろうと、

一度は直接お目にかかりたいと思って参加した講演会でした。

そして、参加してみて感じたのは、「日本脂質栄養学会はとても良心的な学会だ」ということです。
勿論それは、自分と結論が同じだからという理由だけでそう評価しているわけではありません。

まず、私が参加したその講演会は一般公開されており、しかも参加費無料でした。

通常この手の講演会は、数千円の参加費がかかるのが普通です。

製薬会社主催で、その会社の新薬を使ってもらう意図もあって開かれる講演会であれば参加費無料というのはありますが、

学会主催の講演会で参加費が無料だったケースは私の知る限り他にはありません。そして日本脂質栄養学会には製薬会社のスポンサーはついていません。

一方で講演の概要は、「コレステロール低下医療がいかに良くない事か」という事を、疫学データや生化学的な論理などで明解に解説されるというものでしたが、

途中、80代女性の踵にできた痛みを伴う黄色腫(コレステロールがたまってできたできもの)に対して、スタチンを使うと痛みが取れて黄色腫が小さくなったという症例報告もありました。

「コレステロールは高くてもよい」というのが日本脂質栄養学会の基本的な主張なわけですが、

そうであるにもかかわらず、コレステロールを下げてうまくいった実例をも紹介しているということ、これはすなわち自己批判の精神があるという事です。

いつも「もしかしたら自分が間違っているかもしれない」と自己批判の精神を持ち続けている事は、思考の暴走を止めるリミッターとしての役割があるので、それはとても大切な事だと思うのです。

さらには会場には参考図書として下記の本が販売されていました。



学会として情報の普及活動を続けるにあたっては、どうしても資金が必要です。

だから学会員からの年会費やこうした書籍の売上を活動資金にするというのは理解できます。

ところが医学書は一般的に高額なものが多いにもかかわらず、こちらの本は濃厚な情報が詰まっているというのに二千円程度という定価の安さです。

しかも、会場ではそれが1000円で販売されていました。医学書としては極めて良心的な価格設定です。

日本脂質栄養学会が儲け度外視で、いかに真摯に情報を伝えようとしているかというのが伝わってきます。

私はこの学会の精神と姿勢が好きだと感じました。


医学の情報に著作権はありません。

全人類にとって有益となりうる情報は無償で入手できてしかるべきです。

江部先生や夏井先生がインターネットを用いて日々医療情報を公開されているのは、まさにその理想を体現していると思います。

しかし世の中には貴重な情報を独占したり、特定のグループの中に留めようとしている状況って多々見受けられると思います。

それだと情報を広めたいということより自分の利益が優先になってしまっており本来の在り方ではないのです。

また糖質制限推進派医師としても自己批判の精神は必要です。

先日の歎異抄について紹介した本の中でも「人間は自分が正しいと思った瞬間に見えなくなるものがある。そして次第に偏っていくのが人間である」という一節がありました。

糖質制限がいくら科学的に正しくとも、科学的に解明されていない部分もあるという事を忘れてはいけません。

医療情報を公開しつつ、適宜見直して自己批判も忘れずに洗練させていく、

本当に正しいと思う事を広めたいと願うなら、それが誠意だと思います。

そんな大切なことを学んだ学会参加でした。



たがしゅう

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自分で考えるというのは難しい

たがしゅうさん、こんにちは。

僕はコレステロールに関する動脈硬化学会と脂質栄養学会の論争に興味がありました。

そして脂質について知見を広げたいと、昨日今日、実にタイムリーなことに奥山治美氏の著作を読んでいました。

それで驚いたことに、氏は1999年初版の著作『薬で治らない成人病』の中で、糖尿病に関して「糖質(でんぷん)を増や」p152して「穀物中心の食生活」p154にするように食餌指導しています。

一昔前の著作とはいえ、その箇所には驚きました。

自己批判の大切さ

たがしゅう先生、お世話になります。
いつもブログを読み、いろいろな事に気づきをいただいています。

「人間は自分が正しいと思った瞬間に見えなくなるものがある。そして次第に偏っていくのが人間である」

私は糖質制限を実践していますが、あえて批判的な記事を読むようにしています。
どんなに正しく、理論的に思うことでも、おそらく何らかの条件を設定した上での話だと思います。その点では常に批判的にものを見る必要があると思います。
ときどき、自分の考えを強烈に主張し、周りが見えなくなっている人を見かけます。そういう人は、自分が偏っていることに気づかないと思います。会社でも、そういう人がいます。そのような人とどのように関わっていくべきなのか、これも難しい問題です。
日本脂質栄養学会は、様々な考えを持った先生方が自由に議論ができる学会のように思いました。そういう学会からこそ、本当に有用なエビデンスが発見されるように思います。

Re: 自分で考えるというのは難しい

佐々木 さん

コメント頂き有難うございます。

奥山先生の脂質に関する見解は大いに参考になる所があります。
けれど穀物中心を推奨する方針には賛同しかねます。

どれだけ素晴らしい先生の言葉も、全てを鵜呑みにせず、難しくとも自分の頭で考える必要性を感じます。

2014年8月6日(水)の本ブログ記事
「全てを鵜呑みにしてはいけない」
http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-365.html
も御参照下さい。

Re: 自己批判の大切さ

じょん さん

コメント頂き有難うございます。

自己批判、口で言うのは簡単ですが、なかなか実践するのは難しいことです。
私も糖質制限批判記事に積極的に向き合うようにしてはいますが、無意識に自分の都合の良いように解釈してしまっている事もあるかもしれません。

だからこそ自己批判できる人を素晴らしいと思うし、自分もそうありたいと望みます。

No title

たがしゅう先生
昨日はお世話になりました。とても楽しかったです。ありがとうございました。お会いできて嬉しかったです

さて、今回の記事ですが「すべてを鵜呑みにしてはいけない」を思い出しながら読ませていただきました。するとコメントされた佐々木さんに対して、「すべてを鵜呑みにしてはいけない」を紹介されているので驚きました

役に立つ本ほど安い、というのは歯学関係の専門書でもいえるようです。逆も真なり、という部分もあると考えています

くんだみえ

Re: No title

栗田三江(くんだみえ) さん

コメント頂き有難うございます。
またこちらこそ昨日は有難うございました。楽しかったですね。

> 役に立つ本ほど安い、逆も真なり

確かに。高いのに全然役に立たない本もありますね。医学関連書籍では特にその傾向が高いと思います。
私はそれで結構失敗することもありますが、何事も経験ですね。

お越し頂きありがとうございました。

土曜日はお忙しい中「豚皮揚げを食べる会in京都市」へお越し頂きありがとうございました。幹事としてお礼申し上げます。

参加者皆様の元気そうなお顔。そして始まってから四時間以上立食及び話続ける元気さ!糖質制限の正当性を再確認から確信に変わりました。

10月に再開催したいと思っております。
たがしゅう先生は江部先生と特別枠でとっておきます!(笑)
ぜひまたお越し下さいませ。m(__)m

Re: お越し頂きありがとうございました。

岸和田のセイゲニスト さん

 コメント頂き有難うございます。
 またこちらこそ先日はお世話になりまして深謝申し上げます。

 いつもながら有意義かつとても楽しい会でした。
 皆さんパワフルで自分の頭で考える力を持っている人達ばかりなので大変刺激を受けます。

> たがしゅう先生は江部先生と特別枠でとっておきます!(笑)
> ぜひまたお越し下さいませ。m(__)m


 その並びに入れて頂けるなんて誠に恐縮です。
 是非とも都合をつけて参加させて頂きたいと思います。
 今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。

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プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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