サイアミディン

自然に整う栄養バランス

「栄養バランスなど気にする必要はない」

栄養士さんが聞いたら真っ先に反発されそうな意見ですが、私は実のところそのように考えています。

一般に健康診断での結果説明や栄養士による食事指導などでは「バランスのよい食生活を心がけましょう」などと金科玉条の如く言われます。

また、1985年に厚生労働省が作った『健康づくりのための食生活指針』では、栄養バランスを整えるために「1日30品目の食品を摂りましょう」と勧められていました。

ただ、30品目というハードルはなかなか高く、数に神経質になったり、食べ過ぎる例も増えたので、2000年には『主食、主菜、副菜を基本に食事のバランスをよく』と表現が変わったそうですが、依然としてバランス重視の指導内容です。

しかし、糖質制限をするようになって空腹感が以前よりも和らいだ事で、現在私はもっぱら1日1-2食の毎日ですが、

30品目どころか肉しか食べないような極端な日もありながらも、私は以前よりもずっと楽に健康状態を維持しています。

はたして本当に栄養バランスは意識した方がよいのでしょうか。

ここに現在の栄養学を根本から見直さなければならない必要性を私は感じています。
食べるという行為は、栄養素を取り入れる行為であると同時に、栄養素を枯渇させる行為でもあると以前書きました。

みんな食べたものは吸収されない事はあっても食べたせいで栄養素が枯渇するという観点はあまり持っていません。

しかし実際には例えば、糖質を摂取すれば代謝過程でビタミンや微量元素が使用されます。また代謝が糖質代謝に偏っていれば、脂肪をエネルギーとして利用する事ができなくなり、脂肪があったとしても脂肪が欠乏しているのと同じような状況に追い込まれます。

そこに栄養がある事は栄養を利用するための必要条件ではありますが、必要十分条件ではありません。

栄養があって、それを利用するための代謝環境が整っていて初めて栄養素は利用できるのです。

また栄養素を自前で再利用するオートファジーの観点も全く持って欠如しています。

よく「タンパク質は摂りダメができない」ということで、「毎日タンパク質を何g以上は摂りましょう」などと指導されるわけですが、

オートファジーの観点があれば、この話も根底から崩れることになります。せっせとタンパク質を取り続けないといけないのはオートファジーが機能していない人での話です。

ではどういう人がオートファジーが機能しないかというと、食べ続けている人です。絶食はオートファジーを活性化させる刺激になる事はよく知られているからです。

こうした観点なくして「入るカロリー」=「出るカロリー」などと一律に指導している事が、そもそもの栄養学の間違いの始まりだと私は思います。



また太古の昔、ヒトがまだ石器も獲得していない中で巨大動物達としのぎを削り、

身一つで生き延びていかなければならなかった時代の事を想像してみて下さい。

その時代、食べ物は非常に貴重な存在でした。まだ食料獲得能力の低かった人類は一説にはハイエナが食べ残した内臓や骨髄を食べていたとも言われています。

1日1食食べられたかどうかも怪しく、中には何日もまともに食べられなかった時もきっとあったはずです。

そんな中で栄養バランスがどうとか言っている場合ではありません。1日30品目達成などとは夢のまた夢です。

それなのに現代まできちんと生命が紡がれていったという事は、栄養バランスを大事にしていなくとも、生命を維持できる様々なシステムをヒトは駆使していきてきたと考える方がしっくりきます。

そのシステムがケトン体-脂肪酸システムであり、オートファジーを中心としたタンパク質分解・自己再利用システムなのだと私は思います。

逆に言えばそのいずれの邪魔をもしてしまう糖質は、栄養になるどころか栄養を利用する環境を破綻させてしまうだけで、とてもではありませんが栄養素とは呼べません。

実際、私は自分の入院患者さんに対し、栄養士の反対を押し切りながらも、糖質制限の意義を説明し、了解頂いた上で主食を半量にして食事を提供する事がよくあります。

従来の栄養学で考えれば単純に入るカロリーが減るわけですので、患者さんはどんどん消耗して栄養が枯渇していく流れが想像されるはずです。人によっては計算上の必要カロリーより下回る事もあります。だからこそ栄養士も反対してくるのでしょう。

しかし実際にそれをやってみると、患者さんはさして空腹感にさいなまれる事なく普通に過ごす事ができ、血液検査で追いかけても蛋白質、アルブミンなどの値は必ずしも額面通りには下がっていきません(炎症などが関わっている場合は別ですが)。

そこにオートファジーが関わっているとは思えませんが、主食半量にしただけでも人によってはケトン体の産生が高まるという事であれば過去に確認済です。

そして主食半量にする事で血糖コントロールは主食通常量の場合と比べて当然ながら安定してきます。

つまり、カロリーは減ったけど栄養を利用する代謝環境が安定したために、一見栄養が足りないように見えてもそこにあるだけの栄養でうまく回していけるようになった、という事なのではないかと思います。


逆に言えば、従来の栄養学で培ってきた栄養補充のノウハウは、

すべて代謝が破たんしている人に対して使うべきテクニックだという事になります。

例えば熱中症で運ばれたもともとは健康な若い成人男性に対しては、点滴でナトリウムをがんがん入れても腎機能が保たれていれば高ナトリウム血症にはなりませんが、

高齢で多疾患があり高度の腎機能障害も抱えているような人に点滴する時にはナトリウムの量を、それこそ従来の栄養学の計算式で導かれるような量を慎重に入れていかないと高ナトリウム血症になってしまう事があります。

食事に際しても同じで、糖質という代謝を乱す物質を取り続けていれば、従来の栄養学に準じた各栄養素の推定必要摂取量を取り続けなければならないと思います。

いや、たとえ推定必要摂取量を取り続けていたとしても、代謝の乱れが強ければそこに栄養素があるのに使えないという状況にもなりかねません。

食べても食べても太らないという人の本質はそういう所にもあるのかもしれません。

魚と野菜中心の食事をごはんベースでずっと熱心に続けられている高齢者の方は私の外来にもたくさん訪れますが、

そうした人が30品目を取るようにすれば事態が解決するようには私には到底思えません。



まず心がけるべきことは、バランスのよい食生活でなどはなく、

「バランスを乱す食べ物をいかに摂らないようにするか」という事です。

それを守っていれば自ずと栄養バランスは整ってくる、と。

1日1-2食で栄養バランスを考えなくても元気な私はそう思います。


たがしゅう
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糖質制限3年目にて

こんにちは、糖質制限3年目の43歳です。
 ・一食の糖質目標量5g(上限10g)
 ・月に1~2回は付き合いで通常食

糖質制限で「こむら返り」が起こる、という話を時々聞きますが、私も糖質制限を始めてからこむら返りを経験するようになりました。

1年目は特定の条件なしに頻繁に起こりました。
2年目は糖質を摂った時に限って起こるようになりました。
3年目の今は、糖質を摂っても全く起こらなくなりました。

ネットで調べると、こむら返りは何かの栄養素が不足した状態で起こることがある・・・?というような事が書かれていたので、

1年目は糖質制限で食材の幅が狭くなったことにより一時的に栄養素が不足した?
2年目は普段は問題なくなり、糖質を摂った時にのみ栄養素が不足した?
3年目は十分に栄養素が足りるようになったので糖質を摂っても不足しなくなり、こむら返りが起こらなくなった?

・・・と、考えていました。何の栄養素が不足するのかは色々な情報があって忘れたし、面倒なのであんまり調べていないのですが(汗)

でも1~3年の実体験と先生の記事を読んで、あながち自分の予想も大きく外れていないんじゃないか?と思いましたが、どうでしょうかね?・・・って、これだけで判断してくれっていうのは無茶ですよね(汗)

でも1~3年の変化、なかなか面白くありませんか(^^)

Re: 糖質制限3年目にて

コウ さん

 コメント頂き有難うございます。興味深い御報告です。

 私自身はこむら返りに悩まされた事はないのですが、
 私の友人の糖質制限実践者で糖質制限開始してまもない時期にこむら返りを頻発していた人がいました。

 こむら返りは糖質制限ではカルシウム、マグネシウムの補充でよくなるという事が経験的に報告されていますが、
 その方の場合はそれらのサプリメントを補充しても、また芍薬甘草湯というこむら返りに著効すると言われる漢方薬を使用してもダメでした。

 2014年7月28日(月)の本ブログ記事
 「こむら返り熟考」
 http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-348.html
 も御参照下さい。

 ただその方のこむら返りも時間経過とともに徐々に気にならなくなってきました。コウさんの経過と似ています。

 ここから推測するに、糖質制限後まもない時期はケトン体利用に慣れておらず、
 糖質制限をしていても糖質代謝が結構回ってしまっているので、そこにカルシウム、マグネシウムがあっても利用できないという代謝環境が続いてしまう人がいるのではないか、と私は考える次第です。

 しかしその後も糖質制限を続けていれば次第に糖質代謝はケトン代謝に切り替わり、
 ケトン代謝がメインになればカルシウム、マグネシウムをはじめビタミンや微量元素の利用効率が最適となります。
 ただし、しばらくは糖質を摂取すれば再び糖質代謝が回ってしまい、ケトンが一時的に使えない状況にはなります。

 それでも根気よく糖質制限を続けていれば、少々糖質を摂ったくらいではケトン代謝は止まらない、いわゆる「ケトン適応(keto-adaption)」と呼ばれる状態に移行していくのではないか、と考えています。

栄養学はどんどん変化する

いつも興味深いお話ありがとうございます!
私は糖質制限10ヶ月です。

栄養学は一般の人より詳しいつもりでしたが、糖質制限知って従来の栄養知識が音を立ててくずれるのを感じました。
そしてオートファジーの観点も考えることにより、また概念がひとつ変わりそうです!
ありがとうございます。

ちょうど摂取タンパク質量と筋肉量の関係に注目しているところでしたので、何か関係が見えたと思ったら報告させていただきますね。

腸内細菌叢との関係も考慮が必要そうで、奥深い世界です。

Re: 栄養学はどんどん変化する

斉藤 さん

 コメント頂き有難うございます。

 もしも栄養素がある事が栄養を取りこむための必要十分条件ならば、肉ばかり食べている人は皆筋骨隆々でないとおかしいわけですが、実際はそうはなっていないと思います。

 栄養素がそこにあるかどうかに加えて、それを利用できる代謝環境がどうかについても配慮しなければなりません。また腸内細菌の観点は取り込んだ食物が全く別の栄養素に変換される観点を与えますから、話はさらに複雑になります。

 いずれにしてもこうした事をすべて見直さない限り、栄養学が眉唾だと受け止められても仕方がないと私は思います。

No title

たがしゅう先生

糖質制限を開始してから、自身の栄養に対する常識が間違いであった事に身をもって感じています。

野菜不足でも全然身体に影響が無い事(食物繊維は摂ります)、3食摂らずとも健康上全く問題ない事(むしろ摂らないほうが良い)、そして「主食」=(糖質)不要という事。

家人に言うと「そのうち病気になるよ」と言い返される事もあります。しかし、「私の姿を見て。若い頃より健康になったよ」と言います。すると納得されます

従来の「栄養バランス」よい食事をすると糖質過多になり逆に健康を害する事は素人の私でも十分説明できます。

糖質を避ける事で得られる部分は多くのヒトが考える以上にありそうです

くんだみえ

Re: No title

栗田三江(くんだみえ)さん

 コメント頂き有難うございます。
 おっしゃる通りだと思います。

 必要な栄養素を摂る事より、代謝を乱す不要な物質を摂らない事の方が、はるかに重要な事だと私は思います。

蛋白質について

糖質制限食推進派の新井圭輔氏は、最近独創的な意見を述べています

https://www.facebook.com/keisuke.arai.372/posts/1001376856642943

「過剰なタンパク摂取は容赦無く大量に糖に変換され、脂肪として蓄積されている」

Re: 蛋白質について

精神科医師A 先生

コメント頂き有難うございます。

> 「過剰なタンパク摂取は容赦無く大量に糖に変換され、脂肪として蓄積されている」

私も同意見です。
タンパク質は糖新生の材料になるので生化学的にも説明できると思います。

あと付け加えるならば、食事と食事の間隔が開けば、オートファジーが活性化するので比較的少量のタンパク質でも最終的に十分量の脂肪が合成されるということです。

栄養士は・・・

先生のブログに今朝遭遇し一言
栄養士は、食品の栄養成分は得意ですが代謝を理解習得していない人が多い
検査データーのみみて、フィジカルアセスメント得意でないです
少なくとも、現在の職場同僚は

Re: 栄養士は・・・

倉吉市管理栄養士 さん

 コメント頂き有難うございます。

> 栄養士は、食品の栄養成分は得意ですが代謝を理解習得していない人が多い

 それだと座学のみで車を運転しているようなものです。
 実際に目の前で起こっている現象を真摯に受け止めて、理解してもらいたいですね。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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