サイアミディン

真の熱中症予防はこまめな水分摂取ではない

梅雨の合間ですが暑くなってきました。

暑い時期は熱中症になられる方が増えてきます。

テレビなどでよく「熱中症予防にこまめに水分を摂りましょう」などと呼びかけられますし、

場合によっては「喉が渇いてから飲むのではもう遅い。渇く前からこまめに水分を」という言われ方もすると思います。

しかし、それってどうなんだろうと私などは思うわけです。

食べるから喉が渇く」のではないでしょうか。

その事は断食を経験しているとよくわかります。
私は月に数回ある当直日には断食することが習慣になっています。

従って私は糖質制限実践者でかつ間欠的断食実践者です。

なぜ当直の時に断食を実行するかと言えば、

食欲は環境によって誘発されるからです。当直中は自分が持ち込まない限り食品が周りにない環境で過ごす事ができるので、

食欲をコントロールしやすくなる糖質の実践者においてはあまり苦もなく断食期間を過ごす事ができるのです。

この感覚は1日3食以上糖質を摂っている人には理解しがたいものかもしれません。

逆に言えば糖質制限実践者でも、周りに食品が十分にある環境において断食を行うのはなかなかに精神力を要求される至難の技です。


さて、その断食の時間がある程度経過して徐々に軌道に乗ってくると、

不思議な事に水分を摂っていなくてもあまり喉が渇かないという感覚を得ることがあります。

でも考えてみれば、断食中のメインエネルギーはケトン体です。

ケトン体をエネルギーとして細胞の中のミトコンドリアで利用すれば最終的に水と二酸化炭素を生じます。

だからケトン体の元である脂肪があれば、少々飲まず食わずでも十分にやっていける水とエネルギーを産み出すことができるわけです。

一方で、動物に目を向ければ砂漠で生きるラクダがいます。

ラクダはこぶの中に脂肪を蓄え、その脂肪を分解することで水分とエネルギーを得ています。

もしラクダがこまめに水分を摂取しないと熱中症になってしまうのなら、おそらく生存は無理でしょう。

そう考えるとケトン体代謝でいることは、外から摂る水分の節約になるのではないかと考える次第です。

いや水分だけではなく、食事の節約にもなっているという事は糖質制限実践者ならばよく感じる所だと思います。


ところが、断食中に想定外に、たとえ糖質の少ない食品であっても、食事を摂ってしまった際には、

これがまたてきめんに喉が渇きます。水やお茶が欲しくなり、せっかく断食で落とした体重が摂った水分で元に戻るのじゃないかというくらいのなかなか強い口渇欲求です。

食べ物を消化・吸収・代謝・排泄するには、エネルギーだけでなく水分も必要だという事の裏返しなのかもしれません。

別の見方をすれば、生理学的に口渇のトリガーとなるのは浸透圧の変化です。

浸透圧の計算式から導かれる浸透圧の規定因子はナトリウム(塩分)、ブドウ糖、尿素窒素(←タンパク質)です。

これらの摂取量が多ければ濃度が高まり浸透圧が上昇し、酸素を運ぶ赤血球をはじめ身体のさまざまな細胞の恒常性維持にとって不利な条件となってしまいますので、

その高濃度の是正のため水分で薄めようとするがゆえに口渇を生じるわけです。

塩辛いものを食べると喉が渇くというのはそこからも説明する事ができますし、

たとえ糖質制限をしていても塩分やタンパク質が多く含まれていれば喉が渇くという現象へとつながります。

そして浸透圧の式からは、糖質を摂っていればより口渇が強くなるであろう事もわかります。

しかも糖質代謝だとケトン代謝に比べて作られるエネルギーと水は少なめです。

その結果、「こまめに水分を摂らないと熱中症になる」という状況が生み出されるのではないかと考える次第です。


糖質制限がもっと普及すれば、

熱中症で救急搬送される患者さんの数も、

激減するのではないかと私は思います。


たがしゅう
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こんにちは

なるほどー!とうなりました。最近の記事はどれも充実していますね。こういう情報を公開、共有していただけるのはありがたいことです。
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たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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