サイアミディン

夏井先生外来見学体験記

ちょうど3年前の今と同じ頃、

私は湿潤療法の実際を知るべく夏井睦先生の外来を見学させて頂きました。

今にして思えばその時の経験が、その後の自分の生き方を大きく変えました。

私は夏井先生の診療を診て、その考え方を知り、自分にもできる事があるかもしれないと思い立ち、このブログを開設したのでした。

ブログを始めた事により、私の糖質制限への理解も高まり、何より生きる喜びを得ることができました。

私にとって夏井先生は人生の恩人であり、生き方のヒントを教えて頂いた師匠です。

ただ3年前はまだこのブログが始まっておらず、その時感じた生の感情の記録は残しておりませんでした。

今回病院の盆休みを利用して、私の新しい人生の原点を再確認すべく、改めて外来を見学させて頂きました。

感じたことを今回こそは記録に残しておこうと思います。
夏井先生の外来は「こどもが泣かない外来」としてもよく知られていますが、

その真髄は「こどもを”こども扱い”せず一人の患者として診る」という所にあるように私には思えます。

一見当たり前の事にも見える話ですが、これができていない医者は意外と多いようで、

まだ4歳のこどもだと治療の話をした所でどうせ理解できないだろうと無意識に過小評価してしまい、

親から話を聞き、親へ治療内容を説明するも、患児の診察は泣かれたり暴れたりと苦戦したりするパターンになりがちづす。

しかし夏井先生に言わせればそうなるのは当たり前で、「それは患者の同意を得ていないからだ」ということなのです。

夏井先生はシンプルな言葉で丁寧に説明すれば、たとえ2歳半でも治療の同意を得ることは可能だとおっしゃいます。

実際見ているとその通りなのですが、治療の同意を得る環境作りにも夏井先生は工夫を凝らされています。

具体的にはおもちゃの利用です。夏井先生は外来でこどもの興味を引くような面白いおもちゃを幾種類も準備しており、

それらを駆使して「自分は怖い人じゃないよ。友達だよ。」という雰囲気をごく自然に演出されているんです。この辺りはおもちゃ選びのセンスも大事になってくると思います。

そうしてこどもの緊張を解いた後おもむろに、「〇〇くん、傷を見せてもらってもいい?」「うん」と同意を得るのです。

同意を得た後のこどもは診察してもむやみに泣きません。というよりも、同意も得ずに自分より大きな人間が身体を触ろうとすれば暴れてしまうのも無理もない話だと思います。


また傷を負ったこどもだけでなく、その親御さんへのケアも夏井先生は忘れません。

特に小さなお子さんがやけどを受傷してしまった場合は、親は多かれ少なかれ負い目を感じてしまうのではないかと思いますが、

しかしやけどは決して子育ての失敗ではないと夏井先生は言います。やけどを負っても綺麗に治ればいいですし、

よしんば傷跡が残ったとしてもやけどの跡は人生のハンデにはならない事を強調されます。やけどの跡があろうとなかろうと立派な大人に育てる事が大事なのであって、

やけどの事よりももっと大事な事に目を向けさせるわけです。一般にやけどの治療に携わる医師がはたしてここまで親の心をケアできているでしょうか。


それから夏井先生が繰り広げる湿潤療法の処置は、

シンプルかつスマートで大変無駄が少ないように思います。

その効率性を支えるもう一つの柱として専属の上條看護師さんの存在が大きいです。

夏井先生が大きな治療方針を打ち出せば、その後上條さんが迅速かつ的確に被覆材を選び創部に固定されます。

ある時は上條さんが処置をしている間に、夏井先生が湿潤療法の説明を写真やパンフレットを用いて説明し、

またある時は夏井先生がおもちゃでこどもの気を引いている間に上條さんが包帯をほどいたりして創面を観察しやすい環境を整えます。

とにかく二人の阿吽の呼吸が素晴らしく無駄がないのです。

これに関して夏井先生は「互いの領域を侵さないように気遣っている」とおっしゃいます。

つまり看護師として上條さんに任せられる範囲を明確にし、その中で上條さんを信頼し処置をはじめとした様々な医療行為を任せておられるのだと思いました。

医師が一義的に指示を出すのではなく、ある程度自由度をもって指示をする事で看護師さんはその中でいろいろな事を考えると思います。

その試行錯誤の中で診療をより良くするための工夫が生まれ、そのアイデアが蓄積されていく事で現在の診療スタイルに行き着いたのではないかと私は感じた次第です。


無駄がないと言えば、

夏井先生は朝の診療が始まる前の時間を使って、

今までみた症例の写真を整理する作業を黙々となさっていました。

また診療の合間のちょっとした時間もその作業を再開し、症例の整理に余念がありません。

毎日多くの症例を診ておられる夏井先生なので、全部の症例をまとめるのは大変だろうと思い、

どういう症例を写真に撮ろうとするのか、その選別の目安があるのかをお尋ねしたところ、

驚く事に、とにかく選ばず全て写真に残し整理をするのだそうです。

なぜならばどの症例がどういう経過を辿り、どこが意外なポイントになるのかは最初の段階ではわからないけれど、

写真にさえ残していれば後で遡って検証する事ができますが、残していなければそれは絶対にできなくなってしまうからだそうです。

一人ひとりの症例を大事にする夏井先生の細やかさが出ている話だと思いました。


最後に夏井先生外来の診療工夫のアイデアの一部は、

そこで治療を受けた患者さんからのものだという事がありました。

例えば傷の治療を頑張って受けた小さなお子さんへのご褒美の電車やキティちゃんなどのシールとか、

動物咬傷などの深い傷のドレナージに用いるナイロン糸のコシを強めるためにつり糸のテクニックを応用したりといった工夫です。

良い診療をすれば患者さんは感謝します。そうすれば患者さんは感謝の意を込めて自分のできる事で貢献したいと考えるのは自然な流れです。

良い診療を追求する事で、さらに良い流れが生まれ好循環が作られていく」、そこが夏井先生の外来で一番見習うべき所かもしれないと思いました。


以上、今回感じた事を文章にまとめてみましたが、

実際にはそれ以外にも非言語的な部分で学べた事も多かったように思います。

本当に学ぶべき所の多い外来見学でした。

湿潤療法に興味を持っている方は、是非とも自分の目で確かめられる事をお勧めします。


たがしゅう
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非公開コメント

ありがとうございました

先日は漢方薬のご指南ありがとうございました。

夏井先生の外来処置の雰囲気がよく分かりました(嬉)
私は流れ作業的に次々と患者さんを処置していってるとイメージしていました。
問診を本当に丁寧にされてるんですね。

病院経営者側からみれば、流れ作業の方がいいですが、夏井先生が開業医にならないのはその辺りもあるかもですね。

また初対面の人との間合いや引率するのも本当にうまいと豚皮揚げの会でいつも感じます。

しかし本当に素晴らしい先生です!

今回の夏井先生の外来見学。これはたがしゅう先生開業医への布石でしょうか?(笑)

たがしゅう先生も記事に書かれてましたが、最近、セミの死骸が多い季節になってきました。
道端に転がっているセミを見てると何だか食べれそうな気になってきました。素揚げにしてみようかな(笑)

魚介類の中にも、鰻やシャコなども欧米人とかに見せると驚きます。要は先入観なんでしょうか?

コオロギやかなぶんはまだ遠慮したいですが、たがしゅう先生はもう大丈夫ですか?(笑)

豚皮揚げの会in京都市、来年からは8月に開催してセミの素揚げというのもいいかもですね(笑)

10/22(土)ご参加よろしくお願いいたします。

Re: ありがとうございました

岸和田のセイゲニスト さん

 コメント頂き有難うございます。

 夏井先生の外来はスピーディなのに無駄がないんですよね。
 次々と患者さんを処置するには違いないのですが、だからと言ってよくある「3分診療」のような説明のずさんさなどはないのです。本当にすごいと私も思います。

 こうしたモデルケースを参考に、私自身もよりよい医療を展開していけるよう精進していきたいと思います。

> 魚介類の中にも、鰻やシャコなども欧米人とかに見せると驚きます。要は先入観なんでしょうか?
> コオロギやかなぶんはまだ遠慮したいですが、たがしゅう先生はもう大丈夫ですか?(笑)


 はい、少なくとも揚げていれば全然平気です。
 ただ生の昆虫食に関してはまだ未知の世界です。御指摘のように先入観の問題は大変大きいと思います。

 10/22(土)、こちらこそ宜しくお願い致します。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
漢方好きの神経内科医です。
南鹿児島さくら病院に勤務しています(下段にリンクあり)。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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