サイアミディン

断食を宗教から開放する

オートファジー」という現象が実証された事によって、

ただの宗教的な修行と捉えられがちな「断食」というものについて、

それが人の身体に及ぼす影響について従来の医学書に書かれている内容を見直す必要性が出てきていると思います。

特にオートファジーとケトン体をキーワードに絶食療法は糖質制限の壁を超える可能性を持ち合わせていると私は考えています。
そんな中、先日インターネットを見ていたら興味深いニュースが飛び込んできました。

68日間断食で少女死亡=過失致死の疑い、家族訴追―インド
時事通信 10月10日 4時34分配信

(以下、引用)

 【ニューデリーAFP=時事】
 インド南部ハイデラバードで4日、68日間の断食を行ったジャイナ教徒の少女(13)が断食終了の2日後、心臓まひで死亡した。

 断食を強要した過失致死容疑で家族が訴追された。警察が9日、明らかにした。

 家族によると、少女は68日間一切食べ物を食べず1日2回お湯を飲むことだけが許された少女が断食を完遂した際には盛大な祝祭が行われ、多くの政治家らも集まり、参加者は記念撮影に励んだ。葬儀にも600人以上が参列し、少女を「子供の聖人」とたたえ、死を祝福した。

 地元メディアによれば、宗教指導者が家族に対し、傾いた家業を立て直すために少女に断食させるよう助言していた。少女の祖父は「孫の信念で行ったことで、誰も強要していない。去年は34日間、一昨年は8日間断食した」と反論している。 

(引用、ここまで)



このニュースを見て一般の人はどのように感じるでしょうか。

親が宗教家の口車に乗ってこどもに断食を強要して、それを責められ「こどもが自分の意志で行った」とウソをついた幼児虐待の話と受け止められるのでしょうか。

私がこのニュースを見て感じたことは大きく二つです。

一つは、「こどもでも68日間の断食を遂行可能であるということ

もう一つは、「断食後の回復食を誤ると危険であるということ」です。


断食をどこまで継続できるかというギネス記録はイギリス人男性のアンガス・バルビエリ氏の382日が現時点での公式世界最高記録だそうですが、

この方は断食当時25歳、214㎏の巨体で病院の監督下で紅茶、コーヒー、水、ソーダ水、ビタミン剤だけで過ごし最終的に81㎏まで減量されました。

即ち、利用すべきケトン体を山ほど蓄積していたからこそできたことではないかと思うわけです。

かたやこどもに関しては脂質の蓄積がそれほどあるとは限りませんし、

ケトン体があったとしてもどちらかと言えば生存よりも成長を優先してほしいので、さすがの私もこどもに対しての断食には消極的に考えておりました。

しかしこのニュースでの子は68日間の断食を遂行する事ができました。この子の体重情報がないのが残念ではありますが、

インターネットの顔画像で見る限り少なくともふくよかとは思えません。もしも普通の体格の子だと仮定して、体脂肪10%と考えた場合に、

インド女性の平均体重はわかりませんが、日本人13歳女子の平均体重が47.3㎏ですので、ちょっと多めに見積もって50㎏で計算すると、

5kgの脂肪を蓄えており、5000g×9kcal/dayで45000kcalのエネルギーを蓄えている事になります。

そうしますと1日の平均必要カロリーを1500kcalと考えても計算上は30日間までしか命は持たないはずです。

まあカロリー理論がそもそも穴だらけなのでこの推定日数自体が不確かなものではあるのですが、それにしても68日間は生きる事ができています。

おそらくこの子の中でオートファジーのような飢餓応答のメカニズムが働いたおかげで68日間の断食を遂行できたのではないかと私は推測します。あるいはもしかしたらオートファジー以外の飢餓応答のシステムの可能性さえ感じられます。


そしてもう一つの注目点は断食中に死亡したのではなく、断食後の祝祭を経て亡くなっているという事実です。

もし断食が危険だというのならば断食中に亡くならなければ道理が合いません。

祝祭の詳細情報がないのでここもどうしても推測の域を出ませんが、祝祭の時に食べたものがもしも高糖質食品であったとすればどうでしょうか。

68日間の断食も経たら少女の代謝はほとんどケトン代謝と言っても過言ではない程の高ケトン代謝状態です。それを一気に高糖質代謝へと切り替えさせられたとすれば、その結果が心臓麻痺であったとすれば・・・

私はこの死亡は回復食をケトン食や糖質制限食にする事で防ぎえた死だったのではないかと個人的には思います。

言い換えれば、宗教的な観念だけで断食を遂行した事による不幸な事故です。従って虐待などとは私は決して思いません。御祖父さんが言っている事もおそらく本当のことなのであろうと思います。

このような話をただの宗教がもたらす悲劇で終わらせるのではなく、同じような不幸が繰り返されないためにもこうした領域に科学のメスを入れていくべきだと私は考えます。


私は基本的に成人は糖質制限をベースにできる限り少食で現状を維持するスタイルが望ましいと考え、

こどもに対しては成長という側面があるため、高タンパク食をベースに食欲の赴くままにしっかりと食べていいという考えでしたが、
世の中には小児の段階で命に関わる難病にかかってしまう子達も少なからずいると思います。

そのような場合は、こどもに対しても断食を治療選択肢の一つとしてとっておいてもよいのではないかと今回考えを改め始めた次第です。

68日間の断食を完遂したインドの少女が、その事を教えてくれたように思います。


たがしゅう
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断食

たがしゅう先生、いつも先生のブログからは様々な気づきをいただいています。
今回ご紹介いただいた記事には本当に驚かされました。ケトン体、オートファジー、その両者の相加、相乗効果でしょうか?これまでの常識的なカロリー主体の栄養学では説明できないと思いました。
また、不幸にも亡くなった少女の死因が断食ではないこと、これはいわゆるリフィーディング症候群というものでしょうか?こういう場合、現在の栄養学ではどのように対応することになっているのか存じ上げませんが、それをケトン食や糖質制限食で対応できれば、すごいと思います。
これからも先生のブログで勉強させていただきます。

Re: 断食

じょん さん

 コメント頂き有難うございます。

> 不幸にも亡くなった少女の死因が断食ではないこと、これはいわゆるリフィーディング症候群というものでしょうか?

 そうですね。そういう言い方もできると思います。つまり、極めて強烈なリフィーディング症候群が起こったという事です。

 リフィーディング症候群を起こさないための一般的な対処法は緩徐に栄養量を増やしていくことです。
 一方で断食からの回復食も経験的に少しずつ段階的に食事を増やしていく事が推奨されています。
 しかしそれはいずれも高糖質文化の中で編み出した対処法です。ケトン代謝を上手に使うという発想を加えれば、そうしたトラブルをより上手く回避できると私は考えます。

絶食からの糖質摂取がリフィーディング症候群の原因?

たがしゅう先生、じょんさん、こんばんは。

私が持っている「栄養学の基本がわかる事典」という本には、リフィーディング症候群は、絶食時や低栄養状態が続いた後に糖質を摂取すると起こるように説明されています。
以下に該当箇所を引用します。

「この状態では細胞内の電解質、とりわけリンが枯渇しています。そこに糖質を急激に与えるとエネルギー源が脂質から糖質に切り替わり、インスリンの分泌も増加して糖の取り込みが促進され、細胞内で糖質代謝が始まることになります。
この糖質代謝に伴って現れる合併症がリフィーディング症候群で、血液中のリンやマグネシウム、カリウムが細胞内に急激に取り込まれることで、低リン血症、低マグネシウム血症、低カリウム血症を引き起こしてしまいます」(186~187ページ)

この説明を読むと、絶食後の糖質摂取は危険だと思うのですが、一般的に断食後は、少量のお粥から食べ始めるんですよね?

Re: 絶食からの糖質摂取がリフィーディング症候群の原因?

ミスターT さん

 コメント頂き有難うございます。

 御指摘の通り、リフィーディング症候群の原因は絶食という高ケトン代謝状態から糖質食という高糖質代謝へ一気に代謝のハンドルを切る事によって起こる代謝のかく乱にあると私は考えております。
 従って主としてケトン代謝を利用する食事法であれば、回復食として用いれば同じトラブルは起こりにくいと思います。

Re: 絶食からの糖質摂取がリフィーディング症候群の原因?

たがしゅう先生、おはようございます。
返信ありがとうございます。

>絶食という高ケトン代謝状態から糖質食という高糖質代謝へ一気に代謝のハンドルを切る事によって起こる代謝のかく乱にある

ということは、風邪や腹痛などでしばらく食事を抜いていた場合も、脂質多めの食事から始めた方が安全そうですね。

Re: Re: 絶食からの糖質摂取がリフィーディング症候群の原因?

ミスターT さん

 コメント頂き有難うございます。

> 風邪や腹痛などでしばらく食事を抜いていた場合も、脂質多めの食事から始めた方が安全そうですね。


 そうですね。
 ただあまり脂質が多すぎる食事だと人為性が高くなるので一定の注意は必要かもしれません。
 糖質制限食を基本におき、ダメならケトン食をトライしてみるというスタンスがよいと思います。

Re: 絶食からの糖質摂取がリフィーディング症候群の原因?

たがしゅう先生、ミスターTさん、リフィーディング症候群について教えていただきありがとうございます。
糖質制限食、ケトン食は秘められた可能性があるように感じます。認知されるためには、ある程度のエビデンスを積み重ねていくか、科学的、論理的な説明が可能になるかでしょうか?
また、オートファジーに関してですが、糖質やアミノ酸はオートファジーを抑制するけれども資質は抑制しないということをどこかで読んだことがあるように思います。記憶が曖昧なのですが、このあたりらもケトン体の秘められた可能性があるのかもしれません。

Re: Re: 絶食からの糖質摂取がリフィーディング症候群の原因?

じょん さん

 コメント頂き有難うございます。

 オートファジーはインスリンによって抑制される事がわかっています。
 脂質はインスリン分泌を刺激しませんので、そういう意味でも脂質はオートファジーを抑制しないと言えるのではないかと思います。

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Re: インドのヨガ聖者70年間断食

一読者 さん

 情報を頂き有難うございます。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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