サイアミディン

負の側面をみるエビデンスは少ない

ブログ読者の坊主おじさん さんから次のようなコメントを頂きました。

【16/11/03 坊主おじさん
いつもありがとうございます。

お医者様の世界でいう「エビデンス」というのは
一体何を指しているのでしょうか?
グーグルで検索して調べてみても、ピンとこないのです。

たとえば、抗がん剤を投与されて
あっという間に弱って亡くなった方を
何人も知っています。

このような抗がん剤にはエビデンスがあり、
目の前の人が抗がん剤で苦しみ
亡くなっていくという事実は
エビデンスではないのでしょうか?


鋭い点をご指摘頂いたと思います。

実は医学におけるエビデンスは、負の側面に向けられているものが少ないのです。
抗がん剤の例で言えば、「Aという抗がん剤は3年生存率80%であり、3年生存率が70%のBという抗がん剤よりも良い薬である」というように、

抗がん剤のメリットについて述べられた論文は無数に存在します。

しかしその逆で抗がん剤のデメリットについて検証された論文はほとんどありません。

ただ抗がん剤の場合は生存率という表現の論文をみれば、その反対は死亡率という事になりますので、

先ほどの例で言えば、Aという抗がん剤は3年死亡率が20%であり、3年死亡率が30%のBという抗がん剤より良い薬である」と読むこともできるわけですが、

おそらくそのように解釈している医師はほとんどいないと思います。あくまでも医師は「抗がん剤の中でのよりよいものは何か」という正の側面に目を向けているものなのです。

でも実際には世の中には抗がん剤を使用した事であっという間に亡くなられる人は少なくありません。

それでも正の側面にしか目を向けていない医師はおそらく、「考え得る中で一番良い抗がん剤を使用した。やむを得ない結果だった」としか考えないでしょう。

間違っても3年死亡率20%の薬を自らが使用してしまったという認識は持っていないはずです。

それではそもそも抗がん剤を使用しない場合の生存率、死亡率というのはどのくらいなのでしょうか。これは実は意外とデータがないのです。

持っているとすれば世界広しと言えど、「がん放置療法」で有名な近藤誠先生くらいです。それくらい現在のがん治療では、特に進行がんにおいては抗がん剤治療を行う事が当たり前の世の中となってしまっています。

本当に抗がん剤のエビデンスを作るというのであれば、近藤先生が検証されているように無投薬の群と抗がん剤投与群を比較する必要があります。

そして比べるのは生存率だけではなく、抗がん剤によるあらゆる有害事象も比べなければなりません。

死亡率と違って、有害事象は何かから逆算して算出する事はできません。従って最初から有害事象を検出する事を目的とした臨床研究を計画しなければわかりません。

例えば、Aという抗がん剤がもたらす末梢神経障害は、Bという抗がん剤が末梢神経障害と比べてどうかというようなことを調べるわけですが、こういうデータはなかなかありません。

なぜならそんなデータはネガティブなもので、薬を選ぶ医師の処方選択に影響を与えにくいですし、

薬を扱う製薬会社にしてみればそんなデータを出された日にはたまったものではないからです。


私は抗がん剤を使用してすぐに亡くなった人がいるという事実は立派なエビデンスと思います。

少なくとも抗がん剤の使用は死期を早めているかもしれないという事に気が付かせるエビデンスの種です。

そして抗がん剤をしなかった場合にどうなるかという事は近藤誠先生が著書で多数示しておられます。

なぜ論文ではなく著書かと言えば、がん医療に携わる医師達が薬絶対主義の中で生きており、近藤先生の仕事を端から認めようとしていないからです。

というよりももし抗がん剤をしない方が長生き、という事になればそれこそ自分達の存在意義がなくなってしまうからです。

また抗がん剤をしなければ、抗がん剤の副作用を絶対に受けなくて済むという大きなメリットもあります。薬絶対主義の中で生きているとその事にも気が付きません。

ただがん放置療法も生存期間だけを考えれば、抗がん剤を使った群とそれほど大きな差はない印象を持ちます。抗がん剤治療をしないだけで長生きできるような甘いものでは流石にありません。

だから私はがん放置療法だけではダメだと思っていますが、少なくとも抗がん剤を使わないという選択肢を持つ事で、抗がん剤の持つ有害事象などの負の側面をより明確に認識する事ができるという点で価値があると思っています。

これは抗がん剤だけの話ではありません。他のあらゆる薬について同様の事が言えます。

降圧剤、スタチン、糖尿病治療薬、鎮痛剤、骨粗鬆症治療薬、あらゆる薬で強調されるのはその薬の有効性やメリットであるものが圧倒的に多いのが現状です。

しかしそんな正のエビデンスと同じくらい、薬の有害事象に注目した負のエビデンスも重要な情報だと私は思います。

薬を使わないという選択肢も考える事ができるようになるからです。

薬を使うという事が前提の世の中で生きているからその事の不自然さに誰も気が付かないのだと思います。



けれど、負のエビデンスがなくても丁寧に考えれば、今でも真理に近づく事はできます。

・がん細胞は正常細胞が遺伝子変異を起こして発生した細胞である。
・がん細胞と正常細胞由来なので共通構造がある。
・がん細胞はミトコンドリアが使えず解糖系のみを使って生きている。従ってがん細胞は生きるのにブドウ糖が必須。
・世の中にはブドウ糖(炭水化物)を摂ることがベースの文化が出来上がっている。その文化はがん細胞が生きるのに非常に有利な環境である。
・抗がん剤使用群と抗がん剤不使用群を比べたデータはほとんどない。
・抗がん剤はがん細胞だけを攻撃しようとする薬だが、共通構造があるのでがん細胞を攻撃しようとするとどうやっても正常細胞を攻撃してしまう。
・したがって抗がん剤を使用する事は多かれ少なかれ全細胞攻撃である。
・がんが生きるのに有利な環境で全細胞攻撃の抗がん剤を用いれば割を食うのは正常細胞である。

・よって抗がん剤が死期を早める事は起こりうる現象である。



たがしゅう
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No title

梅澤医師もエビデンスに基づいた標準治療の恐ろしさを書いてますね。いわく標準治療絶対主義というのは近藤氏の説く無検査無治療主義と同じくらい有害だと(だったらお金がかからない分近藤氏の方が全然いいし、公的医療保険も万々歳ですね)

だいたい抗癌剤というのはギャンブルでしょう。でも競艇や競馬でさえ誰にいくらつぎ込むのか決める自由があります。標準治療というのは全財産どころか命を懸けて一か八かという狂気の沙汰を治療だと言うのだからすごい話です。せめて競馬新聞や競艇新聞のように戦績を公開してくれればいいのですが、それをやると医師は廃業、製薬会社は倒産なので誰もやらないですね。

負のエビデンス?

たがしゅう先生、おはようございます。

 エビデンスと言えば、九州大学による久山町研究も同じことが言えるのではないでしょうか?

 食事介入で「正しいバランス食を与え続けられた結果、糖尿病の発症率が明らかに全国平均より高くなった事実」があるにもかかわらず、糖尿病学会は触れようともしていません。

 「不都合な事実は無かったことにしよう」ということなのでしょうかね?

Re: No title

SLEEP さん

コメント頂き有難うございます。

ギャンブルはギャンブルでも負けの結果が見通せるギャンブルだと思います。そんなギャンブル、私なら挑戦しません。

Re: 負のエビデンス?

saty さん

コメント頂き有難うございます。

> 「不都合な事実は無かったことにしよう」ということなのでしょうかね?

意図的かどうかは本人のみぞ知る話ですが、
見るべき方向に視点が向いていなければ、そこにあっても見えない世界というものはあると思います。

ありがとうございます。

たがしゅう先生、私の素朴な疑問に対して
真正面から答えていただき、
本当にありがとうございました。

医療の世界で言うエビデンスが
どのようなものかが
大変よくわかりました。
ありがとうございました<(_ _)>

また、「抗がん剤を使用して
すぐに亡くなった人がいるという事実は
立派なエビデンス」であると言っていただいて
心から納得いたしました。
本当にありがとうございます<(_ _)>

都合の悪い事実(エビデンス)には
目をつむるというのであれば、
それは、まるで『裸の王様』の世界
のように感じます。

医師が、「王様は立派な服装を着ておられる」
(抗がん剤で生存率が伸びることがある)
と言いながら治療に使う姿は、
その医師が、本当は「王様が裸である」
(抗がん剤は危険である)ことを
本当は知っているのに
見て見ないふりをしているのだとすれば、
それは、裸の王様のごきげんをとりながら
生きている家来の姿に
似ているのではないでしょうか?

おとぎ話では笑えても
人の命にかかわることでは
笑うことができません。

その点、たがしゅう先生は、
客観的事実から
『抗がん剤が死期を早める事は起こりうる現象である。』
と結論づけて下さり、
まさに、『王様は裸だ!』と公共の場で
ハッキリと事実を指摘して
下さったのだと私は思いました。



これからは、目の前の負の事実(エビデンス)にも
しっかりと目を向けるお医者様が増えていって
下さることを切に願っております。

たがしゅう先生、ありがとうございました<(_ _)>

Re: ありがとうございます。

坊主おじさん さん

丁寧なコメント返しを有難うございます。

正だけではなく、負の側面にも目を向け、その上でどうすべきかを考えられる医師でありたいと思います。

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Re: No title

ミトコン 先生

御指摘頂き有難うございます。修正させて頂きました。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
漢方好きの神経内科医です。
南鹿児島さくら病院に勤務しています(下段にリンクあり)。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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