サイアミディン

激しい運動が空腹を呼ぶメカニズム

間食というものは現代医療の中ではとかく悪いものと捉えられがちです。

しかしそもそも間食というものができた歴史を踏まえますと、これは必要に迫られてできあがった食文化であったと考える事ができます。

というのも、ネットでのフリー百科事典、Wikipediaには間食について次のように書かれています

(以下、引用)

歴史的には、かつて朝夕2度の食事であった時代には、

夜間労働や激しい労働を行う者が、昼や深夜に必要に応じて摂った3食目の食事のことを「間食」と称していた。

平安時代の『延喜式』にも、間食に関する規定が設けられている。

1日3度の食事が通常となった江戸時代以後も農村部では激しい労働に耐えるために、間食を摂ることがあった

(引用、ここまで)

つまり、激しい運動をするとものすごくお腹がすいてしまうという事で、

それに耐えうるために「間食」という文化が自然発生的にできあがったというストーリーです。

一方で糖質制限をしていれば、空腹感をコントロールしやすくなり

間食を摂らずとも1日2食とか、1日1食とかでも支障なく仕事ができるという事を経験するようになりました。

勿論、平安時代や江戸時代の労働に相当するような運動はおそらく私はしていませんから単純比較はできませんが、

糖質制限している人がそのような重労働環境下におかれたら同様に間食を欲するようになるのでしょうか。

ここでは運動によって起こる生理学的な現象と合わせてこのことについて、まずは机上で考察してみたいと思います。


運動をするためにはエネルギーが必要です。

従って人体にある2種類のエネルギーシステム、「ブドウ糖-グリコーゲンシステム」と「脂肪酸‐ケトン体システム」を駆動させる必要があります。

即効性があるのは前者のシステムです。運動により肝臓や筋肉に蓄積されたグリコーゲンがエネルギーとして利用するために分解されブドウ糖へと切り崩されます。

そうして作り出されたブドウ糖は血中に入り血糖値が上がるわけですが、細胞に取り込まれれば解糖系やクエン酸回路で消費されATPという形でエネルギーが生み出されます。

また筋肉の場合はそれとは別に、GLUT4という糖輸送体を介してブドウ糖を取り込むシステムも準備されています。

すべての細胞が効率的にエネルギーを消費できる程度のマイルドな負荷の運動であればこれらの流れがうまく回って血糖値が下がります。

ところが、高強度の無酸素的な運動や、本人の筋肉量に見合っていないきつい負荷の運動をしてしまうと、

効率の悪い解糖系ばかりが回ったり、作られたブドウ糖を筋肉が処理できなかったりして細胞や組織がオーバーヒートしてしまい、

供給が需要に追い付かず逆に血糖値が上がってしまう事も起こりえます。

また運動をストレスに感じれば、ストレスホルモンを介してこれもまた血糖値を上げる方向に拍車をかけます。

さらにはブドウ糖を供給するグリコーゲンや食事からのブドウ糖が枯渇してしまえばついには血糖値が下がらざるを得なくなってしまいます。

ただし、ここでケトン体を使うことに慣れている人であればまた事情が変わってきます。

なぜならばブドウ糖が使えずとも、ケトン体を利用する事で細胞はオーバーヒートにならずに済むからです。

糖新生システムで一定の血糖値を保ちつつ、細胞や筋肉はケトン体エネルギーで回していく事が可能になります。


さて、話を間食文化ができたであろう平安時代の労働に戻します。

藤原道長が糖尿病であったことからも、この頃の食事は糖質主体であったと考えられますので、

この頃の一般人の代謝は糖質主体であったことが容易に想定されます。

そういう人が激しい労働をすればどうなるでしょうか。

激しい運動で無酸素的であれば解糖系中心であれば血糖値は使い切らずにまず上がります。

一方でケトン体は使えないので、その後の血糖枯渇期には低血糖症状が出現してしまいます。すなわち運動によって血糖の乱高下が起こってしまうわけです。

よって、糖質の離脱症状として新たな糖質を欲するようになります。これが糖質摂取者が激しい運動をした後の強烈な空腹感の本質だと私は思います。

それが証拠に、平安時代の「延喜式」に書かれている間食の内容を見ても、ほとんどが糖質主体のものです。

糖質でないとこの力の入らなさを回復できないという事を昔の人はよく実感していたために、そうした文化が作られてきたのではないかと私は思います。


そして最後に、冒頭の「糖質制限をしている人が重労働を行えば間食を欲するかどうか」という疑問について考えます。

糖質制限実践者でも、運動の負荷やストレスで貯蓄されているグリコーゲンが切り崩されて運動により血糖値は上昇しうると思います。

その後、細胞や筋肉組織で消費されて血糖値が下がるので、運動の血糖値の乱高下は糖質制限実践者でも起こりそうです。

でも糖質摂取者と違ってこの時に低血糖症状は起こりません。なぜならケトン体を使い慣れているからです。

だから糖質摂取者が感じるほどの空腹感は激しい運動においても糖質制限実践者は感じにくいと思います。

ただ低血糖症状は起こらないけれど、血糖値の乱高下での血糖価が下がる時にもしかしたら空腹感を感じる可能性はあるかもしれません。

従って、「糖質制限者が激しい運動をしたら、空腹感は感じるけど比較的軽い」というのが私の予想です。

いずれ自分で実験してみようと思いますが、

糖質制限していても夕方には空腹感を生じるので、

実験するなら普段は空腹を感じない午前中に思いっきり激しい運動をして昼過ぎにどうなるかというのを確かめる必要があります。

もしも読者の方々ですでに体験談があれば参考までに教えて頂ければ幸いです。


たがしゅう
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No title

糖質セイゲニストです。
設備工事業ですが、夕食のみで問題ないです。
午後3時ごろに若干の空腹感はありますが、力がなくなるようなことは、経験してません。
以前インフルエンザに感染したときに、3日間まったく食欲がなく絶食状態で、仕事したことも経験してますが、若干の倦怠感と発熱だけでした。
そんな時に仕事するなと云うつっこみはなしでお願いします。

Re: No title

ふら さん

 コメント頂き有難うございます。

 重労働でも途中で間食を摂らないといけない程の空腹感が襲うわけではないのですね。大変参考になります。

糖質制限と激しい運動後の空腹感

結論から。先生の推測のとおりです。
平日は1日1食夕飯のみで、快適に過ごしています。週末はロードバイクで高低差の激しい道路を朝食抜きで30キロ走ります。イメージでいうと、ジムに置いてあるエアロバイクの負荷が最高度のレベルを1時間ぐらい連続して行い、普通の負荷を30分という感じです。
走ってからの空腹感を満たすのに、どういう食物が有効かチーズ、鳥のササミ肉、ナッツ、豚皮、ブランパン等で、実験してみましたが、やはり普通のパンや米飯が有効でしたので、上記の結論となりました。
糖質制限前の耐え切れない空腹感ではありませんが、本を集中して読むことが出来ませんし、思考がまとまりません。テレビをゴロゴロして見るとか、音楽を聴く等は大丈夫そうですが、普段手を出さないおせんべいに手が伸びることを報告します。

Re: 糖質制限と激しい運動後の空腹感

やまたつ さん

 コメント頂き有難うございます。

 私が行おうとしていた実験をすでになさっていたのですね。
 大変参考になります。私も是非追試してみたいと思います。

 運動とは「とにかく健康に良い」とか偏ったイメージで捉えられがちですが、本質的な所を理解してうまく利用していきたいものですね。

糖質制限と激しい運動後の空腹感

こんにちは、いつも拝見させて頂いて、楽しみにしております。
私は、仕事で徹夜の勤務があります。
最近の私の好きなプチ断食(高ケトン体維持)は前日のお昼に食事をして次の日の朝にジムで約一時間程の少し負荷のかかった有酸素運動(脈拍140程度)をして昼頃にketokanaと言うケトン体を増やすサプリメントを頂き、夕方から徹夜の仕事、日本時間で深夜から朝まで食事を取りません。(コーヒーや少しのお茶は頂きますが、)お腹は全く空きませんし、頭は冴えていますし、全く眠くなりません。身体の調子はとても良いです。色々な仕事のパターンがありますが高濃度のケトン体を維持するパターンを色々考えて試しています。楽しんでケトン体を増
やしている仕事大好き人間です。

減糖高タンパク人体実験中

はじめまして、いつも勉強させて頂いております。
今回少しでも参考になればと思いまして、データ提供させて頂きます。

基本メニュー(休憩を挟んで連続)
ジムにて
グループパワー(筋トレ)60分→
グループファイト(激しい有酸素運動)60分→
水泳クロール(ゆっくり)1㎞45分程度

【平日3食糖質抜き、休日朝のみ炭水化物摂取(アバウトに1日糖質100g程度脂質少なめ)】
途中からバテはじめる、お腹空く。運動したから良いだろうと炭水化物多めに摂取。
※この時は水泳は余力残ってないのでやっていません。

【毎日基本主食抜き(糖質60g以下)】
余力がでてきたので水泳をプラス。ある程度お腹は空く。
途中できつくなる為休み休み1㎞泳ぐ。

【糖質40g以下。植物性蛋白質減らし動物性(脂質)メイン】
動き続けても殆ど疲れなくなる。水泳1㎞ノンストップで泳げるように。
あまりお腹は空かないが途中栄養補給のために栄養補助食品無理矢理詰め込む。

【糖質20g以下目標10g以下。(MEC食ぎみ)】
最初の頃はちょっと途中でバテる(グリコーゲンが少なくなった為?)。
今では慣れて途中でも疲れはあまり感じなくなる(ケトン体を上手く使えるようになった?)。
現在はあまりお腹も空かないので途中でプロテイン補給のみ。

徐々に減らしていきましたが、確実に気力やスタミナが上がっているのを感じます。
グリコーゲンはある程度あった方が(糖質40~60程度?)よいのかな、とも思いますが。
自分は糖質10g以下にしないとケトン体出ないので個人差ももちろんあると思われます。

一応平日炭水化物抜きは6年前ぐらいからやっておりまして。
筋肉肥大の面からは糖質も必要と言われることもあるため、調整しつつ人体実験中です。
糖質取り始めた際筋肉量減って、減らしても増えたりしていた為本当に糖が必要なのかは結構疑問です。
現在は糖質制限の安全性を証明するために身体食事データを蓄積する毎日です。

ちなみに物心ついた時からあった肥満喘息アトピー鼻炎鬱ぎみ不調が全部消えました。
毎日疲れ知らずで夜中まで仕事してます。
やはり子供の頃からご飯果物甘い物好きは危険ですね。そのままだったら糖尿病が待っていたことでしょう。

長文失礼致しました。
次回豚皮揚げの会参加を狙っているので、お目にかかれましたら宜しくお願い致します。

Re: 糖質制限と激しい運動後の空腹感

TOMTOMClub さん

 コメント頂き有難うございます。

 空腹感を感じずにパフォーマンスの高い仕事ができていらっしゃるのですね。
 ケトン体に慣れていれば、自分にとってストレスのかからない程度の運動であれば多少負荷を上げても空腹感が惹起されないという可能性も見えてきますね。

Re: 減糖高タンパク人体実験中

ぷろていん さん

 コメント頂き有難うございます。

 パターンを変えて取り組み詳細に検討されていて非常に興味深いデータで参考になります。
 確かにケトン代謝メインの場合は、負荷の高い運動は慣れるまではきついのかもしれませんね。
 しかし慣れていってケトン体の利用効率が上がれば、非常に負荷の高い運動でさえ空腹感が惹起されない可能性を示しており、大変興味深いです。

 グリコーゲンに関しては、基本的には外部から糖質を摂取せずとも、高負荷の運動をしていなければ糖新生の働きだけでゆっくりと蓄積されていくのではないかと私は考えています。さもなければ自然に糖質ゼロ食を実践している野生動物が、獲物に終われて急に猛ダッシュしなければならない状況に対応できないと思うからです。

No title

いつも貴重な情報をありがとうございます。
僕はコレステロール値がいつも高くて250以上はありました。それが、糖質制限のMEC食を1ヶ月続けたら、コレステロール値が380を超えてしまい、スタチン製剤を薦められています。以前、スタチンを飲んで酷い筋肉痛を経験しています。今後どのようにすべきでしょうか?

ケトン体者

最近感じる事は運動はミトコンドリア活性のために行っている様な気がします。私、朝ジムに行くのですが身体に充分日光が当たる様にします。これもミトコンドリアのためです。一時間の有酸素運動をしますが、腹式呼吸をする度に身体に全体から汗が吹き出します。ミトコンドリアがエネルギー生産を開始したのを感じます。一定の速度でエネルギー生産をしているのでミトコンドリアも安心してエネルギー生産してくれます。感じるのはミトコンドリアは私自身を一つの国の元首とすればミトコンドリアは一つ一つが国家の国民の様な気がします。国としてはミトコンドリアさん達が一生懸命生産しているエネルギー(税金)を国に納めてくれている様な気がします。国としては国民(ミトコンドリア)のための生活に安定したインフラを整備しなければなりません。酸素供給や生活の場の衛生面などです。過剰に働かせれば酸化ストレスが増えますし、衛生管理としてはオートファジーを活性させます。元首としては生き易いく元気が出る様管理しなければなりません。国と国民(ミトコンドリア)との関係が上手く行っていると病気などのリスクは減るでしょうし、私の様な老朽化した身体にでも病気のリスクは減るでしょう。ニュースでお相撲さんやラグビー選手の平均年齢よりも早くお亡くなりになっているお話を聞きます。肥る事と筋肉を鍛えて成長期が過ぎてもインスリンの作用が身体に及ぼす影響はミトコンドリアさん達に良くない事だと最近感じます。

Re: No title

アラジン さん

 御質問頂き有難うございます。

> 糖質制限のMEC食を1ヶ月続けたら、コレステロール値が380を超えてしまい、スタチン製剤を薦められています。以前、スタチンを飲んで酷い筋肉痛を経験しています。今後どのようにすべきでしょうか?

 まずは空腹時の中性脂肪値を確認して下さい。
 中性脂肪が正常であれば、コレステロール、特にLDLコレステロールの上昇は、動脈硬化リスクとされる酸化型LDLコレステロールは少ないと言われています。ですので中性脂肪が正常であれば基本的にLDLコレステロールの上昇は気にしなくていいです。

 もう一つの観点は体調がよいかどうかです。
 コレステロールは上昇しているけど体調は悪くないのであれば、そのコレステロール上昇は血管炎症や末梢組織の修復などに必要があって上昇しているものだと考えられます。様子を見てもらって構いません。
 逆にコレステロールが上昇して体調も悪く、瞼や腱に黄色腫という塊ができるなどの場合は例外的に薬を使ってコレステロールを下げた方が良い場合もあります。その場合は信頼できる医師に相談されるのがよろしいかと存じます。御参考になれば幸いです。

Re: ケトン体者

TOMTOMClub さん

 コメント頂き有難うございます。

> 感じるのはミトコンドリアは私自身を一つの国の元首とすればミトコンドリアは一つ一つが国家の国民の様な気がします。

 面白いたとえですね。
 そうなるとがん細胞はさしずめ「地方での反乱」といった所でしょうか。
 
 永遠平和の国を治める事ができるようすべてのミトコンドリアを大事にしていきたいものですね。

コレステロール値

たがしゅう先生、お返事ありがとうございます。
僕のコレステロール値は総コレステロール値でLDL値ではないのです。いつも高値の僕が糖質制限をしているとわかると主治医に怒られますので、内緒でやっています。風邪をひいたときの血液検査でのコレステロール値でした。今回は風邪も簡単に治りましたし、体調はすこぶるいいです。不定愁訴がなくなり毎日が楽しくなりました。やっぱり、中性脂肪とLDLは検査の必要がありますでしょうか?

Re: コレステロール値

アラジン さん

> やっぱり、中性脂肪とLDLは検査の必要がありますでしょうか?

 私の提供した情報をあくまでも参考に、後はアラジンさん御自身で決断なさって頂ければと存じます。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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