サイアミディン

歯の形は摂るべき栄養素を表さない

前回に引き続いて以下の本の内容を紹介します。

無敵の「1日1食」 疲れ知らずで頭が冴える! (SB新書) 新書 – 2016/6/7
三枝 成彰 (著)


著者の三枝さんが1日1食や断食の指導を受けた石原結實先生の本にも書かれているのですが、

人間の歯の形から類推すると人類の主たる栄養素は炭水化物であるとする仮説についての話です。

(以下、p65-66から引用)

【歯の形でわかる理想の栄養バランス】

夕食では「歯の形による正しい食生活のバランスを頭に入れておく」ことが大事だと石原さんは指摘します。

これは一体どういうことなのでしょうか?

一般的に、糖質(炭水化物)、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルという5大栄養素をバランスよく食べることが推奨されていますが、

何がベストのバランスなのかを科学的に証明するのは極めて困難です。

そこで石原さんは、食べ物を咀嚼する歯の形に注目しました。

何をどう食べるのかが最適なのかは、歯の形が教えてくれるというのです。

たとえば、体重が6000kg以上あるアフリカ象も、身長が6m以上あるキリンも、タンパク源となる牛肉と牛乳を提供してくれる牛も、草木しか食べない草食動物です。

彼らは植物の繊維を磨りつぶして食べるために、平べったい臼歯が発達しているので、それ以外の食べ物を食べることはできません。

一方、ライオンやトラのような肉食動物は、肉を嚙みちぎるために鋭い歯を持っています。

もしも動物園で、"栄養バランスを整えるために”野菜や果物を余計なお世話で食べさせようとしても、ライオンもトラもうまく食べることはできないのです。

ひるがえってヒトという動物の歯を改めて眺めてみると、草食動物と肉食動物の歯を巧みにミックスしていることがわかります。

具体的には、親知らずを含めた32本の永久歯のうち、

20本は草食動物と同じように穀物を食べるのに呈した「臼歯」、8本は野菜や果物や海藻などを食べるのに適した「門歯」、

そして4本が肉類や魚介類をひきちぎって食べるのに適した「犬歯」
となっています。

永久歯32本に対する割合を計算してみると、臼歯62.5%、門歯25%、犬歯12.5%となっています。

いい換えると、「穀物を62.5%」「野菜や果物や海藻を25%」「肉類や魚介類といったタンパク源を12.5%」という割合で食べるのが、

ヒトという動物の生理に沿ったバランスのよい食べ方
なのです。

1日1食を実践するときには、この割合を頭の片隅に置いておくとよいでしょう。

(引用、ここまで)



この話、以前にも軽く持ち上がった事がありますが、

そもそも歯の形が特定の食物を食べるためのものであるという解釈自体が誤っていると私は思います。

なぜならば、もしそうだとしたら歯の形の意義は食べ物の栄養素の内容に対してではなく食べ物の形や硬さに対してという事でなければ不自然だからです。

例えば、犬歯は肉類や魚介類といったタンパク源を取るための歯という事になっているが、

同じタンパク源で言えば卵や豆類なども当てはまるわけですが、肉や魚などと、卵や豆類などとの食感は明らかに違います。

またひと口に野菜といってもキュウリ、ハクサイ、トマトなどいろいろな食感があるというのに、全て野菜を食べるための歯が「犬歯」と一括りにするのは強引さが否めません。

それなのに栄養素によって歯の形の意義がグルーピングされることには飛躍があると思います。

それから、ウサギは葉や茎や、木の皮や樹皮、草の根など、自分の手が届く範囲の植物を食べる習性がありますが、

ペットとして飼われて硬い樹皮などを噛む機会を奪われて、歯が擦り減らずにひたすら伸び続けて食事がとれなくなったという話
もあります。

もしも草食動物にとっての臼歯が草食のためのものだというのなら、

草食さえしていれば、ウサギはペットで買われていても生きられるはずですが、実際はそうではないということは、

歯の形が特定の食べ物を食べるためというのではなく、それぞれの動物の歯の形がそれぞれの動物の食性に対応しているという事です。

そしてヒトはその食性を自分の知性によって自由に変える事ができる稀有なタイプの動物だということです。


それにそもそも、原因と結果をはき違えている話ではないかとも思うのです。

私達が進化について語る時には〇〇するためにこの機能が備わったという目的論で考えがちですが、実際には進化の形態は結果論です。

いろいろな歯のタイプがあったけど、その環境においてたまたま生存に有利だった歯を持つ生物だけが生き残ったというのが進化論での考え方です。

つまり何かの栄養素を摂るために歯の形ができたのではなく、ある生育環境において生存に有利だったのが結果的にその歯の形だったと考える方が妥当だと思います。


以上の考察より、歯の形を理由にヒトの主食は炭水化物であるとする論には、

いろいろなごまかしがあって信頼性の乏しい仮説だと私は考えます。


たがしゅう
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犬歯

同感ですね。
肉食獣の犬歯は獲物(食料)獲るためのもので、肉を食いちぎるためのものではないでしょう。
それが証拠に鋭い爪が捕獲の武器になります。
この犬歯と爪はハーレムでメスを獲得するための武器でもあります。
爪が鋭くないイヌ科の動物は死肉を食べます。
人は手を使って獲物を捕まえますから、犬歯が退化しているのは理解できます。
藁にもすがる思いで買った10000円もする「喘息を4週間で治す」という本にも同じことが書かれていました。
それを信じて実行して酷い目にあいました。
電気・水道・ガスのない縄文人の生活をしてみると、いかに肉食が理にかなっているかが実感できるでしょうね。

Re: 犬歯

アラジン さん

 コメント頂き有難うございます。

 私達はついつい様々な物事に意味を求めがちですが、結果的そうなっただけというありのままの姿を理解することだ大事だと思います。

 2014年6月2日(月)の本ブログ記事
 「必ずしも意味づけしない姿勢」
 http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-291.html
 も御参照下さい。

『親指はなぜ太いのか』

歯のかたちについては、『親指はなぜ太いのか』島泰三著という名著もありますね。
この著者の方は、歯だけではなく、歯と手(前足の指)のセットで、動物の食性を考えておられます。
ものすごい数と種類のサルの生息環境と食性を観察した結果、到達した考えです。

他のサルと違って、二足歩行を始めた人間の親指が、他の指と向かい合わせになるように発達したのは、どうしてか。
ちょうど、石を握ることができるようになっている、というのです。
そして、観察と考察を重ねた結果、初期の人間は、大型獣の食べ残した骨(肉もついている)を、石で割って、骨のかけらを、骨髄ごと、食べていたのではないか、という結論に達します。
臼歯のエナメル質が厚いのは、この骨のかけらを噛みしめるためではないか、と。

確認のために、ご自分でも、骨のかけらを噛みしめてみます。
すると、転がしながら噛んでいるうちに、骨の向きによって、容易に割れる箇所というのがあって、意外に簡単に噛み割ることができる、とわかります。
そして、骨(骨髄・肉つき)は、栄養面から言っても、主食になり得る、というお考えです。

『図骨コレクション』福田史夫著と合わせて読むと、歯や咀嚼についての理解が深まると思います。

Re: 『親指はなぜ太いのか』

みか さん

 コメント頂き有難うございます。

> 歯だけではなく、歯と手(前足の指)のセットで、動物の食性を考えておられます。


 大事な考え方と思います。
 
 歯の役割、手の役割、それぞれを分解して考えると見えないけれど、両者を一塊の「構造」として捉える事で見えてくるものがあるという事ですね。

縄文時代人と弥生時代人

http://ymd20hiro4.sakura.ne.jp/sub3_2.html

 縄文時代人の歯は第3大臼歯まで十分萌出しています。その原型は、アイヌ民族に継承されているようです。弥生時代に本州では稲作が始まりましたが、北海道では稲作不能のため、肉食の縄文文化がそのまま残りました

 縄文人は第3大臼歯がしっかり残り、むしろ穀物を食べた後世の人類の方が、第3大臼歯は退化していきます。臼歯は穀物ではなく、肉食に必用な歯ではないでしょうか

Re: 縄文時代人と弥生時代人

精神科医師A 先生

 コメント頂き有難うございます。
 
 第三大臼歯、いわゆる「親知らず」ですね。
 人類が肉食から穀物食へ移行していった結果、親知らずが退化していったとは非常に魅力的かつ説得力のある仮説と思います。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
漢方好きの神経内科医です。
南鹿児島さくら病院に勤務しています(下段にリンクあり)。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。

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