サイアミディン

内科医が糖質制限を推進しにくい理由

ある糖質制限仲間の方から面白い話を聞きました。

あくまでその方のネットワークで知りえた範囲内の話ですが、糖質制限推進派医師には外科系の医師が圧倒的に多く、内科系の医師は少ないのだそうです。

そう言われてみれば江部先生はまず内科医ですが、

私が比較的よく交流させて頂いている糖質制限推進派医師の方々を思い浮かべると、整形外科、形成外科、外科、産婦人科・・・確かにほとんどが外科系の医師です。

精神科で糖質制限を理解してくれている先生との交流もありますが、

そういう先生は漢方も使っておられたり、もともと柔軟な思考を持っておられる場合が多いです。

純粋に内科医で糖質制限を理解している医師というのは確かに少数派であるように思います。なぜなのでしょうか。
たまたまかもしれませんし、あくまでも集団としての傾向なので必ずしも個別には当てはまらない事だと思いますが、

それを承知の上で、少しその理由について単なる想像に過ぎませんが、自分なりに考えてみたいと思います。


まず私が考える内科医と外科医の一般的な特徴の差についてですが、

内科医は病態を分析し、細かい事まで突き詰めて考えていくこだわり系の思考の人が多い印象です。

頭脳派と言えば聞こえがいいですが、あれこれいろいろ考えて話を頭の中でストレスを抱え込みやすい弱点もあります。

また医療が専門分化していく中で、一人の内科医が扱う身体の専門領域はますます狭くなってきています。

その代わり自分の専門領域であればどんと来いという事で、例えば腎臓内科専門医なら腎臓の事なら何でも聞きなさいという形でプライドが高められていくのも内科医の特徴だと思います。

一方の外科医はわかりやすい結論を求める思考パターンの人が多いように思います。それは手術という治療手段の特徴を考えてもわかります。

原因はよくわからないけれど、とにかくここにある悪いものを取ってしまえば身体にとって有益と判断するような思考で手術に踏み切ったりします。

外科医も手術の腕という部分ではプライドが高められていく部分はあると思います。しかしながら内科疾患の細かい病態の事に関しては内科医に任せておけばいいという考えの人が多いです。

そういう外科医に対して、糖質制限という極めてシンプルでかつ、他人に任せずとも自分の指導で病態がコントロールできる治療手段が知らされたらどうでしょう。

外科医にとって糖質制限を導入する事のメリットこそあれデメリットはあまりありません。あるとすれば糖質制限反対派の内科医との軋轢くらいでしょうか。

でも、それさえも「患者が治ればそれでいい」というシンプル思考があれば受け入れられる、それが外科医が糖質制限を受け入れやすい理由の一つではないかと考えます。

けれど内科医の方はと言えば事情が違ってきます。

例えば腎臓内科専門医が糖質制限を知ったとして、

「腎臓への血流を左右する動脈硬化リスクを減らす糖質制限は有用」という理屈を説明されたとしても、

今までプライドを持って腎臓診療に当たってきたのに、腎臓の非専門家たる人物から突然そのような話を聞かされたとしても、

容易には受け入れられないことは想像に難くありません。

そんな事がもし正しいとするならば今まで自分がやってきたことは何なんだという気持ちになり、

それが受け入れられない内科医は自分のこれまでの行為を正当化し、自分を守ろうとします。

そんな自己防衛を乗り越えて、それでも正しい事をするためにこれまでの自分が行ってきた医療行為を抜本的に見直そうと思えた内科医だけが糖質制限を受け入れられるのだとすれば、

それは確かになかなか大きなハードルなのかもしれません。


私が属する神経内科の領域においても、

難治性てんかんに対するケトン食があれだけの効果と実績の歴史を積み重ねてきても

神経内科の雑誌の中でケトン体に対する肯定的な認識が広まってきても、

それでも糖質制限推進派を公言する神経内科医は私の知る限りほとんどいません。それとこれとは話が別、糖尿病専門医に任せておけばよい、となってしまうのです。

最後に、私はなぜすんなり糖質制限推進派医師になれたのか、について分析してみます。

私はもともとギリギリ医学部に入れてもらえたような人間です。

真面目ではありましたが、他の医学部に入るような人達の学力と比べてとりたてて高いというわけではありませんでした。

だからプライドは高くなりにくいという状況がまずあったと思います。加えて私は総合診療医志向の内科医でした。

特定の専門領域で活躍する医師より、何でも診る事ができる医師というのに憧れて、それこそ「患者が治ればいい」という考えの持ち主でした。

だから治るためであったら専門領域にこだわらず、漢方だってなんだって勉強する事は厭いません。

そもそも神経内科を私が選択した理由も、内科系の中で最も総合診療的な科であったからという事でした。

この思考も糖質制限を受け入れやすくした背景に合ったかもしれません。

そして何より糖質制限を初めて知った時、私は医師として人生のどん底の時期でした。

病も抱え、人間関係に悩み、生きる意欲も失いつつあったその時に救世主のように現れて私を救ってくれた糖質制限を、

私が推進しない理由はもはや存在しなかったように思います。

逆に言えばそうした条件がなければ、内科医が糖質制限を完全に理解するのには、

今でも見えない大きな壁が立ちはだかっているのかもしれません。


たがしゅう
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共感します

たがしゅう先生へ
ご無沙汰でした。

自分と家族の糖質制限をすんなり始めた形成外科医です。

私が「湿潤療法」をすんなり始められたのはどうしてだろうと、不思議に思っていました。

傷の治療の専門医が、軟膏治療をやめて、
ラップをはるだけという、暴挙(?)に手を染めたとき、
それは、二人目の子の産休明けでした。

バリバリ働いていた以前の病院を退職し、
育児期間をあけて就職した今の病院で、
形成外科医は私一人でしたし、当時院内にいた外科系の医師は、褥瘡にそれほど関心もなかったので、
私がメインで治療方針を決められたという、ラッキーな状態だったこともあるでしょう。

内科医にしても、もしかして、
(たがしゅう先生のように)
自分の生活や職場や、人生上の何か大きな変化に直面しているとき、
まるで違った概念(糖質制限)に出会ったら、
受け入れてくれやすいかもしれないと、
ちょっと淡い期待も持ちます。

でも、数日前、
熱傷で私が治療を始めた患者さん、
結構な高血糖を放置していたようでした。

かなり悩みましたが・・・
当院内科にコンサルトしてしまいました。
インスリン始まってます。

う~む。まだ度胸のない、私です・・・

Re: 共感します

たかはし 先生

 コメント頂き有難うございます。

> 自分の生活や職場や、人生上の何か大きな変化に直面しているとき、
> まるで違った概念(糖質制限)に出会ったら、
> 受け入れてくれやすいかもしれない


 そうですね。
 そう言われてみれば、私が糖質制限に出会ったのはある意味最高のタイミングだったのかもしれません。

 より良い改善方法がわかっているのに、様々な事情からそれを容易に提案できない状況があるという事は私もよく理解できます。その中で悩みながらより良い方法を模索していくしかないのではないかと思います。

No title

たがしゅう先生

豚皮揚げの会をはじめ、糖質制限の会でお会いするお医者さんで外科系の先生が多い理由が何となく見えてきました

私自身、職場等で雑談する時、医科の先生に糖質制限の話題をすると話をそらされる事が多くあります。苦笑して真面目に会話されないヒトが多い理由もわかるような気がしました。

しかし糖質制限の有効性がこれほど広まった今、スルーは難しくなっているような気もします。それゆえに「緩やかな糖質制限」というに妙な考え方が出始めているのかもしれません。

くんだみえ

Re: No title

栗田三江(くんだみえ)さん

 コメント頂き有難うございます。

 あくまで私の個人的見解ですが、少しでも参考になるかもしれないと思い記事にまとめさせて頂きました。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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