サイアミディン

ストレス性血糖上昇への意識

普段診療に当たっていて出会う患者さんの中に、ものすごく神経質な方が時々おられます。

先日も長くめまいで病院へ通院中の80代女性の患者さんがめまい発作で救急搬送されて来ました。

話を聞くと朝4時に起きた際にめまいがして吐き気も催したので、そこから何も食べられずにいて我慢できずに救急車を呼んで朝8時45分に当院へ搬送されたというのです。

普段から肩凝りを訴えて慢性のめまいを訴えている方なので、これまでに糖質制限、体操、漢方と様々な治療選択肢を提示してきましたが、

いろいろな理由をつけて結局どれも満足に実行できていないのです。
この方の話しっぷりや強固な肩凝りからストレス反応が強く出ている事はありありと感じられます。

こうした人へ私は糖尿病でなくとも心を穏やかにして頂くために糖質制限を勧めますが、

こんな風にストレスマネジメントができない人は経験上まず糖質制限をやってくれませんし、

やってくれたとしても効果がほとんど得られない場合がほとんどです。

こうした症例の存在が、私にストレスマネジメントの重要性を気付かせてくれるのです。


さて、この患者さんで興味深かったのは、その時に採取した血液検査の結果です。

朝から何も食べずに採血したにも関わらず、この患者さんの血糖値は251mg/dLと高値でした。

食事性の血糖上昇でないことは状況から明らかですから、これはストレス性の血糖上昇と考えてよろしいかと思います。

何が言いたいかといいますと、「ストレス単独でもここまでの血糖上昇は起こりうる」ということと、

もう一つはこうしたストレス性の血糖上昇はほとんどの場合見過ごされているであろうということです。

この患者さんにしても救急車で病院に搬送されたからたまたま血糖値を知ることができましたが、

これがそのまま家にいようものなら血糖値が高いとはよもや夢にも思わなかったであろうと思います。

めまいと血糖上昇の因果関係についてははっきりとしない部分はあります。原因か結果かの判断はなかなか容易ではありません

けれどグルコーススパイクが酸化ストレスのリスクとなる事は明らかにされていますし、

散発とはいえしばしば高血糖に曝されていれば糖化のリスクともなりえるでしょう。

しかも短時間で治まるためHbA1cには反映されず通常の健康診断では異常と見なされないという厄介さです。

こうしたストレス性の血糖上昇を意識するという事は、見えない部分も意識すべしという宮本武蔵の教えにも通じます。

たとえ糖質制限が完璧でも、ストレスマネジメントが出来なければ、本当の血糖コントロールはできないのではないかと私が考える理由はここにあります。



ましてやこのような固定観念の強い患者さんにストレスマネジメントを理解してもらうのは至難の業です。

なぜならば、この患者さんにとってのストレスを軽減することができるのは、自分の希望通りにめまい止めの点滴を打ってくれる医者であって、

糖質制限を教えてくれる医者でも、漢方を処方する医者でも、ストレスマネジメントについて懇々と指導する医師でもないからです。

医学的に正しい事と現場でやらなければならない事に大きなギャップがあるということを、

私はここで強く感じます。


たがしゅう
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ストレスマネジメント

臨床心理士です。
先生のブログはいつも示唆に富んで参考になります。

記事の患者さんのような方はなかなか固いのでいわゆる正攻法のカウンセリングやアドラーはうまく入らなかったりします。

解決志向アプローチやマインドフルネスは面白いですよ。もしかしたら先生の診療に役立つかもしれません。
もしご興味ありましたら検索してみてください(*´ω`*)
この患者さんが楽になることをお祈りします(*´ω`*)

Re: ストレスマネジメント

クララ さん

コメント頂き有難うございます。
また参考になる情報を頂き深謝申し上げます。

解決志向アプローチ、マインドフルネスともに勉強させて頂きたいと思います。

No title

2型糖尿病患者です。
ストレスによる血糖値の上昇は、まざまざと感じています。
介護屋さんなので、当然夜勤があるわけですが、食べていないのに高血糖。夕食はスーパー糖質制限レベルなのに、深夜に血糖測ると200超えていたり。
夜勤の時は、みそ汁と、茶碗蒸し(市販)くらあいしか口にしないんだけど。食べるのは19時頃、深夜に血糖測定するのは1時頃。夕食前血糖値より上がっていることは良くあるんです。
食べたものを考えても、ここまで血糖値上がらないだろう? という血糖値の上昇を夜勤のたびに感じてます。

Re: No title

teru さん

 コメント頂き有難うございます。
 またストレスによる血糖上昇の実情を教えて頂き深謝申し上げます。

 本来眠りが誘導される夜間に活動しなければならない夜勤によりストレスを生じるのはある意味必然です。
 そんな不自然でも継続せざるを得ない状況に対しても、ストレスマネジメントの選択肢が提案できるよう私自身の理解を深めていきたいと思います。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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