サイアミディン

インフルエンザへの本質的な対策

インフルエンザが流行しているようです。

私の勤める病院でもインフルエンザの患者さんを散見するようになってきました。

発熱で救急受診された患者さんにはほぼ全例インフルエンザ検査を実施し、

検査陽性、つまりインフルエンザに感染しているとわかれば、抗インフルエンザ薬を処方し感染を拡大させないように、

なるべく人との接触を避けて自宅で療養するよう指導するのが通例のパターンとなっています。

学校や職場など集団感染が懸念される場面では、出席や出勤を停止するようにも指導し、

とにかく感染を不要に拡大させないようにすることが医療者の責務だと言う風潮があると思いますが、

はたしてこれは本当に本質的な問題の解決になっているのでしょうか。
インフルエンザに限らず、ウイルス感染症というのは、

自分の身体の細胞と似た構造を持つ異物に対する免疫反応です。異物を除去しようとする抗原抗体反応が発熱をはじめとした諸症状を引き起こします。

これに感染し、免疫反応を起こすという現象そのものは起こってしかるべき現象です。むしろ起こってもらわないと困ります。

ところが、インフルエンザによって重症化する患者における本質的な問題は、その異物を除去する免疫反応を自分の中で終息させることができないということです。

免疫反応を起こす細胞の働きが低下しているのかもしれないし、免疫を終息させる抗炎症作用の物質の材料が足りないのかもしれない、各個人によってその状況は様々でしょう。

ただ少なくとも重症化するかどうかが、感染したウイルスの種類のみによって決まるというわけではないと私は思うのです。


そもそも、感染者を隔離したり、感染が発覚した時点で自宅療養を指示する事が本当に感染予防になるでしょうか。

人間、見えないものの存在の認識はとかく甘くなりがちで、わからない所は自分達の都合の良い解釈で捉えてしまう傾向があると思います。

例えば、ある発熱患者が救急外来を受診し、インフルエンザ検査を受けて陽性だという結果が出たとします。

その患者は救急外来を受診する前から調子が悪かったわけで、その途中ですでにインフルエンザウイルスを放出している段階がすでにあるはずです。

自宅を出て病院に向かう道すがらウイルスを放出していますし、

病院に到着して受付をして医師の診察になるまで待合室で待っている時もウイルスを放出しています。

それからようやく医師の診察になってウイルスが判明して、じゃあ自宅で安静にしていましょうと言われても、もう遅くないですか?という話です。

それに発熱した人が全員病院へ受診するとは限りません。

実はインフルエンザに罹患しているけれど、検査していないからその事に気付かず、普通に出勤している人は職場でインフルエンザウイルスを無意識にばらまきまくりです。

だからインフルエンザウイルスの存在をたまたま可視化する事ができた患者だけに対策を打った所で、それは見える部分しか見ていないという事になるのではないかと私は思うのです。

もっと言えば、これだけ世間的に注目されているインフルエンザでさえこの状況です。世の中にはウイルス感染症などごまんとあります。

ノロウイルス、RSウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、それらすべての対策はできているのでしょうか。

近年話題になったデング熱は、フラビウイルスというウイルスによる感染症です。医師なら症状からどんなウイルス感染症が起こっているかを即座に見抜き、各ウイルスに応じた適切な対応を指示する事ができるとお思いでしょうか。

私は医師だからわかりますが、断言します。そんなことができる医師はほとんどいません。

今私の目の前にデング熱の患者が来たとしても、はっきりいって私は診断できる自信がありません。普段診断し慣れていないからです。

デング熱は運よく大流行しなくて済んだということなのでしょうか?おそらくデング熱だったとしてもデング熱と気づかず、何らかのウイルス感染症だと処理されている事がほとんどだろうと推測します。

またその見落としのせいで、とりかえしのつかない事態が起こっているかと言われればそういうわけでもありません。多くの症例は自然に起こる自身の免疫反応のおかげで自然に治っているのです。

でも歴史を振り返れば、インフルエンザでもパンデミックと呼ばれる世界的大流行が過去には起こっています。やっぱりインフルエンザウイルスが原因で大事に至る事もあるではないかと思われるかもしれません。

しかしそれすらもインフルエンザはきっかけに過ぎず、本質的な問題は罹患した集団の免疫力が軒並み低下していたという事にあるのではないかと私は思うのです。

つまり、インフルエンザへの本質的な対策は、他者との隔離でもなく、ワクチンをせっせと打つことでもなく、

異物が感染した時に適切に免疫反応を起こし、正しく免疫反応を修復させる栄養状態を保持させることではないか
と私は考える次第です。

そのような栄養状態を確保するための基本は、言うまでもなく糖質制限です。


それでも、「新規のインフルエンザ患者を見つけたら、その時点で他者との接触を防ぐように命じれば新たな感染拡大を防ぐことができる、そこに価値があるではないか」という反論も聞こえてきそうです。

しかし本当にそうでしょうか。
その人を隔離したからと言って相変わらず世の中は未診断の患者から出るインフルエンザウイルスであふれかえっているのではないでしょうか。

だとすれば、その患者さんが休んだ所で、他の人達がインフルエンザに罹患するリスクはほとんど変わりません。

また免疫状態が正常に機能している人であれば、たとえインフルエンザウイルスに接触してもインフルエンザにかかりにくいですし、

かかったとしても比較的短期間の軽症で済みます。それは糖質制限実践者との交流を経て私が強く実感するところです。

そしてもし、その自宅安静を命じた患者さんが学校や仕事での大事な局面にいて、休んだことによってその後の人生に大きな影響を与えてしまったとすればどうでしょう。

そんな事はないと絶対に言い切ることができるでしょうか。

そのデメリットを押してまで他者との接触を避けるように指示する事に有益性がはたして本当にあるのか私は疑問です。

インフルエンザにかかった人が自宅安静でメリットがあるとすれば、

安静にしていた方が早く治るという点においてです。

自宅安静にさせる事で他者への感染を拡大させるリスクが減るというメリットは、

ほとんどないと私は考えます。


たがしゅう
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No title

歴史上に現れる最初のバンデミックといえば第一次大戦におけるスペイン風邪ですが、成年男子の大量動員により兵舎の人口密度が恐ろしく高かったことが背景にあります。
逆に言えば、人口密度を下げれば感染の急拡大は避けられるわけです。手洗いうがいをやりましょうじゃなくて、満員電車を避けれる在宅勤務や、学校の小クラス化を推進するのが正しい効率的な公衆衛生だと思います。あるいは湿度への注意喚起とかですね。

水。

かなり久しぶりにコメントします。
私も同感です。

この時期、インフルや風邪が流行りますよね?
毎年、医者が売上のためにわざわざウイルスを
撒き散らしていてるんだと本気で考えたりしました。
くだらなすぎますが(笑)
で、先日のテレビでやっていたことがありまして、
それはNK細胞は「水」があると活性化するということ。
NK細胞はご存知のように、体内に入ってきた菌と
戦ったり、癌細胞までやっつけたりしますよね。
ですが、この季節は寒くて水(水分)ってとらなくなりますよね?
そうすると、免疫が落ちてしまう・・・。
よって風邪やインフルにかかってしまう。
そう!水なんです。
夏場はよく水分とりますよね?
おそらくこの時期にあまり水分を積極的に
摂っていない人が風邪やインフルにかかるのでは?
だからこの時期に流行ってしまうだろうと考えています。

Re: No title

SLEEP さん

 コメント頂き有難うございます。

> 人口密度を下げれば感染の急拡大は避けられるわけです。手洗いうがいをやりましょうじゃなくて、満員電車を避けれる在宅勤務や、学校の小クラス化を推進するのが正しい効率的な公衆衛生だと思います。あるいは湿度への注意喚起とかですね。

 おっしゃる事は一理あると思います。

 ただ、理想はそうだとしても電車とか学校のシステムはもはや社会の中に定着しきっており一人二人がそれを気を付けた所で集団としてはそれを変えられない人がほとんどで実質的な感染拡大防止効果は期待しがたいと私は思います。

 だから一人一人が着実に実践でき、集団が変わらなくても個々にメリットがある栄養状態の改善が、本質的なウイルス感染対策になるのではないかと私は考える次第です。

Re: 水。

美月 さん
 
 コメント頂き有難うございます。

> おそらくこの時期にあまり水分を積極的に
> 摂っていない人が風邪やインフルにかかるのでは?


 良い視点と思います。

 水は人間の身体の60%を占め、一定になるように巧妙にコントロールされている物質です。
 そのバランスがくずれやすい時期に感染や乾燥肌などのトラブルが起こりやすいというのは理にかなっていますし、少なくとも一因にはなっているはずです。

 ただ水分が多い、少ないといった単純に絶対量の問題だけではなく、実際にはその奥に代謝障害があって、水分量を一定にコントロールする力が衰えているという事が往々にしてあるであろうという点を見逃してはいけないとも思います。

A型に感染しました

普段は糖質制限していますが、ついに会社で蔓延した結果、感染してしまいました。当初は風邪の症状で、市販の総合感冒薬薬でしのいでましたが、呑むのをやめると38℃まで上昇したので、もしやと思い受診して、検査、即A型判定。院内でイナビル服用。翌朝には、ほぼ平熱に戻りました。
何れにせよ、大事にならずに良かったです。

Re: A型に感染しました

萩野明生 さん

 コメント頂き有難うございます。
 
 糖質制限も万能ではありません。私も糖質制限中に風邪をひいた事はございます。

 ただ、もし風邪やインフルエンザの罹患を失敗とみるならば、自分の糖質制限に見直すべき点がなかったかを考え直すよいきっかけになるかもしれません。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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