サイアミディン

医師には無益でも、患者には有益

先日、病院の当直業務をしていた時に、

深夜1時くらいに胸が痛いと行って救急受診された60代女性の患者さんがいました。

その方はめまいや痛みなど、いわゆる不定愁訴と呼ばれる様々な症状でしばしば救急受診を繰り返しておられる常連さんでした。

私もようやく寝入ったばかりの状況で起こされたので、正直「うーむ、なんでこんな時間に・・・」と思ってしまいましたが、

いつもの鎮痛剤の注射をしてほしいという希望があり、電子カルテを開いて以前の注射内容を確認していたら、

実は半年くらい前に私は一度この患者さんを診察していたという事に気づきました。
独居で食生活が乱れ、胸が苦しいという訴えで救急受診されたのをたまたま私が診て、

いつも希望される点滴とともに行った血液検査でHbA1c9.5%の糖尿病がある事が発覚、

点滴終了後、症状は軽快し、再発予防のために糖質制限と深い深呼吸を簡易口頭指導してお帰ししていたのでした。

「あの時、教えた食事指導と深呼吸のことは覚えていますか?」

そうその患者さんに問いかけたところ、急に表情が緩やかになり、

「あぁ、あの時、深呼吸を教えてくれた先生ね。思いだしたわ。食事は肉とか魚とか食べているよ。」

そして直近の血液検査を確認したところ、HbA1c 7.9%まで下がっているようでした。

半年間でHbA1c9.5→7.9%の変化ですから、十分な糖質制限とは必ずしも言えないけれど、それでもやらないよりは全然良い結果です。

何よりあの時の指導内容を好意的に受け止めてくれていたことが私は嬉しかったです。

そしてその後は翌朝に家族の悩みを話されたり、自分の趣味の踊りについて楽しそうに話されたりしました。

そんな患者さんの姿を見て、この患者さんは深夜自分の中でストレスが無性に抑えきれなくなり、痛みという形で症状が出現したのではないかと思いました。

いつもの鎮痛剤も注射したのでそれが効いたのかもしれませんが、この患者さんに本当に必要なのはストレスマネジメントだったように思います。


たまにいつもの点滴と称してビタミン入りやめまい止め入りの点滴を受けに定期通院される患者さんがいます。

客観的にみて点滴の効果は一時的であって、それが現状を維持しているわけではないと思いますが、

それでも患者さんが点滴の効果を強く信じていて、別に毎回点滴をする必要はないと思うと諭しても、頑なに点滴を受ける事を希望し続ける患者さんがいます。

けれども、冒頭の患者さんのようなケースを見て、たとえ医学的には効果が乏しかったとしても、

本人が強く信じている医療行為は、ストレスマネジメントの観点からみて有益なのではないかと思うようになりました。

別の言い方をすれば、プラセボ効果を有効に使うべき、とでもいいましょうか。

やはり心の問題を置き去りにして病人を包括的に診る事はできないと改めて感じさせられました。

そしてもう一つは私が地道に撒き続けている糖質制限の種は、

少しずつ、しかし着実に芽を出して、やがて花が咲く方向へ向かって進んでいる事を実感しました。

冒頭の患者さんは最終的に痛みなく、満足そうに帰って行かれました。


たがしゅう
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非公開コメント

よかったですね

たがしゅうさん、おはようございます。
糖質制限の種が成長していることを実感できてよかったですね。

その女性の患者さんは、自分のことを覚えてもらっていたことが何より嬉しかったのではないかと思いました。

良いお話しをありがとうございました。

Re: よかったですね

あきにゃん さん

 コメント頂き有難うございます。

 正直言って種をまいても芽が出ないことの方が圧倒的に多いですが、
 それでもこういう患者さんとの出会いを経験すれば、また勇気をもらうことができます。

 あせらず、ゆっくり、着実に、です。

No title

医は仁術
というのはこういうことではないでしょうか。
その方は、話を聞いてもらいたかったというのが、
本当の理由のように思えます。
先生、これからも仁術を行ってくださいませ。

バラを献じたる手に余香あり

種は先生自身の中にも撒かれているかもしれません。

Re: No title

じぇみんまま さん

 コメント頂き有難うございます。

 「いつもの点滴」をするだけではダメで、「やはり親身になって事情を聴く」という所がキモなのではないかと思います。

 ちなみに、今日もまたそれを実感する出会いがまたありました。今後もそういう事を心がけていきます。

Re: バラを献じたる手に余香あり

やまたつ さん

 コメント頂き有難うございます。
 シンプルかつ奥深いメッセージですね。わかりやすいです。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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