サイアミディン

複雑なネットワークにどう立ち向かうか

時々読んでいる日本医事新報で「脳-心-腎連関」が特集されていました。

「脳腸相関」というのは当ブログでも過去に取り上げましたが、脳と心臓と腎臓も互いに密接に連携しているというのです。

例えば、何らかの原因で心臓に負担がかかると交感神経が活性化し、心拍数が増加します。その指令を下しているのは脳とされています。

また腎機能が低下すれば、血液中にアンギオテンシンⅡという昇圧物質が増加し、脳に直接作用することで交感神経系を刺激して高血圧の悪循環となります。

これ以外にも様々なネットワークが脳と心臓と腎臓との間でつながっているのを総称して「脳-心-腎連関」といいます。



日本医事新報 2017年 2/18 号 [雑誌] 雑誌 – 2017/2/20
この特集を読んでいくと、細かい所までいろいろ書かれているのですが、

逆に言えば情報が多過ぎて頭の中で整理して理解するのはなかなか難しい作業です。

しかしそれだけ複雑なネットワークを理解しても、大切なのは臨床現場の患者さんにどう活かすかということです。

それができなければいくら細かい知識をたくさん持っていたとしても、無用の長物とさえ思います。

特集の中では「アンギオテンシンⅡをブロックする降圧剤の使用は脳-心-腎連関の観点から有効であると考えられる」という趣旨の内容が書かれていたりもしましたが、

私はそういうことではないと思うのです。アンギオテンシンⅡをブロックする降圧剤は、世の中で最も多く出回っている降圧剤です。

有効であるというのなら、はたして今、高血圧は制圧できてますか?と問いかけてみたいです。

今の現状が満足のいく治療効果が得られている状態だと言うのなら、その人と私は見ている世界が違います。

細かく「脳-心-腎連関」を解析して、その中の一つの物質に着目してその物質を賦活したり、阻害したりするやり方は西洋医学全体に散見されるアプローチ法ですが、

以前にも記事にしたように、必ず何らかの歪みを生じる事になります。

そうではなく、脳-心-腎連関から学ぶべきことはもっと包括的な内容だと私は考えます。

すなわち、「人間の身体は非常に精密なネットワークが構築されている」ということです。

「何を当たり前のことを」と思われるかもしれませんが、これは大事なことです。

うかつに手を出せば、歪みを生じてせっかくの絶妙なネットワークの妙を崩してしまう事になりかねないという事がわかるからです。

そして、もっと言えば、現代科学で解明されたのが「脳腸相関」や「脳-心-腎連関」なのであって、

まだ解明されていない身体の中でのネットワークは実は無数に存在していて、私達がそれを知らないだけかもしれないからです。

漢方を切り口に東洋医学の勉強をしていると、「経絡」と呼ばれるものの存在に突き当たります。

経絡の流れに沿って鍼を打てば、例えば指に針を刺す事で腰の痛みがよくなったり、舌に鍼刺激をツンツン与える事で食欲が改善したりするという不思議な現象が見られます。

それを気のせいだとか、たまたまだとか、プラセボ効果だといって片づけてしまえばそこまでの話ですが、

私達の身体はそれだけ複雑な未解明のブラックボックスが多い複雑な「構造」を持ったものだという事がわかれば、

西洋医学だけでどうこうしようという発想自体がいかに愚かな行為かという事が見えてこないでしょうか。

とある東洋医学の名医の先生に「経絡とは結局何なのでしょうか?」と質問した事があるのですが、

その先生は「経絡とは見えない神経のようなものです」と答えられました。実に言い得て妙と思いました。


ただ一つだけこの特集で細かい部分を読んで参考になった事がありました。

それは「圧受容体反射に関与する脳内ネットワークの最終情報統合部位である頭側延髄腹外側野(rostral ventrolateral medulla:RVLM)内で最も強力に交感神経活動を活性化するのが、アンジオテンシンⅡ受容体により産生される酸化ストレス炎症である。」という記述です。

これを見て多くの医師はやはりアンギオテンシンⅡ受容体の阻害が重要だと考えるかもしれませんが、

私は「酸化ストレス」と「炎症」という部分に特に注目します。

細かい事は抜きにしても酸化ストレスと炎症は、

ストレスと関係の深い交感神経を最も強力に活性化するという事です。

これまでの学びであらゆる難病にはこの酸化ストレス炎症の両者が深く関わっている事には確信を持っています。

そしてそれらを間接的にコントロールしうるストレスマネジメント、心の問題。

それらを良好にコントロールするためにはどうすべきか、というのを考える必要があります。

糖質制限する断食をする、一時的にステロイドを使う、類ステロイド作用を持つ漢方薬を使う、マインドフルネス・・・

私がこの特集から学んだのはそういう考えです。

決して今まで通り降圧剤を使おうという結論にはなりません。


たがしゅう
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藤川先生の高血圧の記事

広島県廿日市市の藤川心療内科クリニックの藤川先生は、
自然治癒の健康相談ー5,高血圧
三石巌:全業績ー6、分子栄養学の健康相談、より
http://ameblo.jp/kotetsutokumi/entry-12252534349.html
という記事で、
次のように書かれています:

『高血圧には、高タンパク食+C+E。
糖質摂取量も減らすべきでしょう。
タンパク質+Cで血管壁のコラーゲンを強化、柔軟化。
Eで動脈硬化、プラークを軽減し、血中の過酸化脂質を還元して血流を改善。
Eによる血流改善効果により、腎臓の血行を改善。』

関心がおありでしたら、詳細はサイトをご覧になってください。

高血圧への対処法は、人体を制御する自然の法則に即した様々なものが必要であると私も思います。
非常に安易な、金儲け主義の化学合成薬の降圧剤は、死亡リスクを高めるというデータがありますから、絶対必要な緊急的な場合を除いて、避ける方が良いと思います。

Re: 藤川先生の高血圧の記事

情報提供 さん

コメント頂き有難うございます。

御指摘のようにいわゆる西洋薬の降圧剤は、緊急避難的に使うことはあっても、慢性的に使うべき性質のものではないと私は思います。

またビタミン類はもともと自然界に存在する物質である分、合成薬物に比べると安全性は高いですが、それでも使い過ぎれば歪みを生じますし、ビタミンありきで現状維持するのは本質的ではないと私は考えます。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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