サイアミディン

腸の調子は食物繊維だけで決まらない

糖質制限がだいぶ時代の波に乗って来た感覚を得ています。

そんな中、公然と糖質制限を批判する医師ははっきり言って時代遅れと感じざるを得ません。

当ブログでは専門家と呼ばれる人達が書いた様々な糖質制限批判本に反論記事を書いてきました。

今回は次のような批判本を目にしましたので、中身を吟味していました。

「炭水化物」を抜くと腸はダメになる (青春新書インテリジェンス) 新書 – 2015/6/2
松生 恒夫 (著)


結論から言えば、この本でも目新しい事が述べられていたわけでもなく、

むしろ専門家としてどうなのかと思うごまかしが満載の文章でした。

今回はこの本のごまかしについて指摘したいと思います。

(以下、p26-28より引用)

【腸の健康に炭水化物が欠かせない本当の理由】

現在、メタボや糖尿病にかかるリスクとして問題となっているのは、

食後に血液中の糖分が高くなること、つまり高血糖状態になることです。

食後高血糖にならないために炭水化物(糖質)を制限するというのが、いまの流行です。

糖尿病の患者さんが、食後高血糖を予防するために、炭水化物(糖質)を極端に制限するというのは、わからない話ではありません。

しかし、病気でもない人が、炭水化物(糖質)を極端に制限するのは、ちょっと考えものです。

低炭水化物食を長期にわたっておこなった場合の効果や安全性は明らかになっておらず、むしろさまざまなリスクも指摘されています。

たとえば、日本糖尿病学会の指摘では、デンマークでの報告として、糖質オフダイエットを長期間にわたって実行した結果、脳梗塞などの発症に結びつく可能性が述べられています。

さらに前述したように、炭水化物を抜くことで食物繊維やマグネシウムなどのミネラルが不足するために、便秘などの腸の不調を招いてしまいます

食物繊維摂取量が長期にわたって低値であると、脳梗塞を起こす可能性が高くなるという報告もあります。

ところで、食事から炭水化物(糖質)をとらなくても、肝臓は必要に応じて、

筋肉から放出された乳酸やアミノ酸、脂肪組織から放出されたグリセロールを利用して糖新生(体内で糖を作りだす働き)をおこない、血中にブドウ糖を供給することができます。

つまり、炭水化物を抜いてもブドウ糖(グルコース)を胎内に供給できる働きがあるのです。

そこで炭水化物抜きダイエットをして糖分をとらなくても大丈夫であり、その分、肉類などのタンパク質や脂質、あるいは糖質が少ないアルコールならいくら摂取してもよいという理屈になるわけです。

しかし、これはブドウ糖(グルコース)だけを見るとよいかもしれませんが、炭水化物に含有される食物繊維やミネラルが不足することを考えると、決していいことではありません。

さらに肉類(赤身であっても)やアルコール摂取が過度となり、大腸がんなどのリスク増加につながることも見落とされています

それらのことから総合すると、炭水化物抜きの食生活は、腸にとってはいいことはまったくないのです。

糖尿病などで血糖値のコントロール不良の人は、炭水化物抜きダイエットをおこなうのはやむを得ない面があるとしても、

単なるダイエット目的の人は決してすすめられたものではありません。

とくに、炭水化物の中でも精製していない玄米や大麦などは、食物繊維やミネラル分の含有量が多いので、腸を含めた体全体の健康にはとても効果的です(ただし後述しますが、便秘傾向のある人の場合、玄米食は注意が必要ですが)。

(引用、ここまで)



この本の場合、糖質制限批判というより、炭水化物抜きダイエット批判という方が正確かもしれませんが、

主な著者の主張は「炭水化物を抜くと食物繊維が少なくなるので、便秘となり腸にとって良くないし、大腸がんの原因にもなる」とまとめられると思います。

しかしこの主張を述べるに当たって著者が書いた内容におかしい所が散見されるのです。


まず、糖質制限批判でよく聞かれる「長期の安全性が保証されていない」に関しては、もはや耳にタコができるくらい何度も聞いた話なので過去記事も御参照頂きたいですが、

こういう事を言う人の思考パターンは、決まってエビデンス中心主義だと言えると思います。

つまり、どこどこに糖質制限を長期に続けると脳梗塞になるというデータがあった、どこどこに食物繊維が足りないと脳梗塞になるというデータがあった、というように、

他人が作ったエビデンスという名の体裁のよいデータの、自分の主張の都合の良い部分だけを切り張りして、もっともらしい主張を展開するのですが、

そこには「なぜ?」を考える視点が欠如しています。また疑うことをしない極めて非科学的な態度です。

脳梗塞はなぜ起こるのでしょうか。決して「そういうデータがあるから」ではありません。

動脈硬化が進行したり、心房細動があって血栓ができる事が主な原因です。

それらの背景には高血圧や糖尿病などの生活習慣病があり、もっと根源的には酸化ストレスが関与しています。

糖質制限は、確実に血糖値の乱高下を減らし病院の源流に当たる酸化ストレスを減らすことができるというのに、それなのに脳梗塞が起こりやすいと主張するならばそれを覆すだけの根拠が必要です。

そういうデータがあるからだという主張を続けるならば、ここでそのデータが間違っているかもしれないという視点を持つ必要がある事がわかります。

病態生理とマッチしないデータを疑う事ができない人達の思考がまさにエビデンス中心主義というものだと私は思います。


他にも「炭水化物を抜くことで食物繊維やマグネシウムなどのミネラルが不足するために、便秘などの腸の不調を招く」について言えば、

「炭水化物=糖質+食物繊維」ですから、炭水化物を抜けば食物繊維が不足するというのはわかります。

しかし炭水化物を抜くことでミネラルが不足するというのは如何なものでしょう。それとこれとは関係ないでしょう。

一歩譲って考えれば、「玄米のようなミネラルを含む炭水化物を抜けば」という意味で言われたのかもしれませんが、言葉足らずですし、炭水化物を抜いたところで他の食品でミネラルを摂ればいいだけのことです。ここに一つごまかしがあります。

また全体を通じてまるで食物繊維が必須栄養素のようなトーンで書かれていますが、

そもそも食物繊維は必須栄養素ではないのです。食物繊維が少ないと便秘するというのも大きなごまかしの一つです。

食べなくても便は出る、むしろ便秘の人は一旦消化管を休ませることが便秘解消の有効手段だという事は断食を通じて多くの人が実感する所です。

そして食物繊維が足りないと便秘になると主張しておきながら、最後「便秘傾向のある人の場合、玄米食は注意が必要」と書かれている所も自己矛盾を生じています。

玄米には便塊を作る不溶性食物繊維が多く含まれているので便秘を増悪させる可能性があるという事からそういう注意を書いているわけですが、

それなら「食物繊維が足りないと便秘になる」というメインの主張が崩れるではないですか。

さらに「肉類などのタンパク質や脂質、あるいは糖質が少ないアルコールならいくら摂取してもよいという理屈になる」という表現も若干悪意を感じます。

糖質を制限していれば、カロリーを制限せずとも適切な摂取量に留まるというのが正しいニュアンスなのに、

肉ばかりを極端に食べ続けているような偏ったイメージを与えてしまう表現に思えるからです。これも糖質制限批判者によく見られる傾向です。

加えて、「肉類(赤身であっても)やアルコール摂取が過度となり、大腸がんなどのリスク増加につながることも見落とされている

それを言うなら、肥満や糖尿病が大腸がんのリスク増加につながるという事も見落とされています。お互いさまです。

もっと言えば、肉類が大腸がんを増やすというデータ自体の信ぴょう性が乏しく、逆の結果を示す信頼度の高いデータもあるわけです。

そのような状況を踏まえて、「炭水化物抜きの食生活は、腸にとってはいいことはまったくない」だとは、

初めから結論ありきの論評に思えてなりません。

炭水化物を抜いて血糖値の乱高下が減り、血流が良くなれば腸にとっても良いではありませんか。


そもそも便通の問題は食物繊維の多い少ないだけで決まるほど単純ではありません。

腸内細菌との相性もあります。腸内細菌には驚くほどの多様性がある事は専門外の私でも知ってます。

所詮この本の糖質制限批判は、

都合の良いところだけを切り貼りして作った非科学的な批判だと私は思います。


たがしゅう
関連記事

コメントの投稿

非公開コメント

糖質制限

患者の側からのエビデンスから言わせていただきます。

糖質を止めるとオナラが少なくなり、糖質を食べ始めると臭いオナラが出始めます。

糖質制限の方が便はよく出ます。

これは僕が糖質制限を始めて半年での実感です。

医者がエビデンスという言葉を使うなら、少なくとも1年間は自身が実験してからにしてほしいです。

実験動物を使うような卑怯な方法ではなくで・・・。

Re: 糖質制限

アラジン さん

 コメント頂き有難うございます。

 糖質制限によって便通がどうなるかは、私の知る限り様々なパターンがあります。
 勿論、アラジンさんのようにスムーズに行くパターンも患者指導の中で数多く経験します。
 それなのに糖質制限をすると便秘になると決めつけるのはおよそ科学的な態度ではないと私は思います。

 明日は糖質制限後に便秘となる人の原因について私の一つの考察を記事にしたいと思います。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
これまでの訪問者数
FC2アフィリエイト
メールフォーム
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR