サイアミディン

不自然な物質への依存の怖さ

いつも見ているケアネットニュースで、こんな記事が紹介されていました。

オピオイドとベンゾジアゼピンの併用はリスクか?/BMJ
提供元:
ケアネット
公開日:2017/03/28


オピオイドというのは簡単に言うとモルヒネなどの麻薬とそれに準じる薬物の総称です。

がん性疼痛など難治性の痛みに対して最も強力な鎮痛作用を有すると言われているのがオピオイドです。

オピオイドを適切に使用すればどんな痛みでもコントロールする事ができると言われている反面、問題となっているのはその過剰投与です。

例えばモルヒネを使用すれば便秘の副作用は必発ですが、

それ以外にも意識混濁、精神興奮、呼吸抑制、口腔内乾燥、皮膚掻痒、排尿障害、痙攣など、

痛みを抑えたいがために使い過ぎると様々なトラブルを引き起こしてしまう諸刃の剣なんです。
そんなオピオイドの過量投与が、ベンゾジアゼピン系の薬を使用していると起こりやすくなるというのが今回の記事です。

(以下、引用)

米国・スタンフォード大学のEric C Sun氏らは、民間医療保険の支払いデータから、

オピオイドとベンゾジアゼピン系薬の併用使用の傾向、および併用使用とオピオイド過剰摂取との関連を調べるレトロスペクティブな分析を行った。

その結果、2001~13年の間に両薬の併用は1.8倍に急増しており、併用がオピオイド過剰摂取の全リスクに有意に関与していることが明らかになったと報告した。

(中略)

オピオイドのみ使用者と比較して、併用者はER受診やオピオイド過剰摂取による入院のリスクが有意に高かった(補正後オッズ比:2.14、95%信頼区間[CI]:2.05~2.24、p<0.001)。

また、同リスクについて、オピオイドの間欠的使用者の補正後オッズ比は1.42(1.33~1.51、p<0.001)、常用者は1.81(1.67~1.96、p<0.001)であった。

この関連について因果関係があるものとして試算すると、

オピオイドとベンゾジアゼピン系薬の併用を解消することで、オピオイド使用に関連したER受診およびオピオイド過剰摂取による入院のリスクは、15%(95%CI:14~16%)減少可能であると示された。

(引用、ここまで)



要はオピオイドを単独で使用するよりも、

オピオイドとベンゾジアゼピン系を併用した方が、オピオイドの過量投与が多かったという話です。

なぜオピオイドと関係のないベンゾジアゼピン系を併用することで、オピオイドを使い過ぎてしまうのでしょうか。


ベンゾジアゼピン系と言えば、抗不安薬とか睡眠導入薬として医療現場で気軽に処方される反面、

その強固な依存性が問題となっている薬で、当ブログでも過去に何度も取り上げています

このベンゾジアゼピン系の依存性の強さを私は現場でひしひしと感じています。

睡眠薬依存症になってしまっている人は私の外来にも非常に多く訪れるのですが、

どれだけ説得しても、睡眠薬を止めることだけは絶対にできないという患者さんとはかなり高い確率で遭遇します。

タバコのニコチンによる依存性もたいがい強固ですが、

ベンゾジアゼピン系にもそれと同じくらい強い強固さを私は感じています。

ベンゾジアゼピン系を使えば、確かに不安は和らぐし、睡眠も導入されます。

しかしそれはGABAという抑制性神経伝達物質の受容体を強制的に刺激する事によって引き起こされる現象なので、

薬が切れると再び使用前の不安や不眠の状態に引き戻されます。

その間、根本的な問題は何も解決されていないので、再びベンゾジアゼピン系を使い、これを繰り返す事になります。

そして繰り返す事が長くなればなるほど耐性というものができて徐々に薬が効かなくなり、薬の量がどんどん増えていき、

次第に薬の副作用とともに、薬がないと正常が保てない身体へと変貌してしまうのです。

そしてこの薬への渇望感、偽りの正常感へ戻そうとする異常な欲求が、

オピオイドの使用を必要以上に見積もり、過量投与へとつながってしまうのではないかと私は思います。


かたや適切に使用すれば良好な状態を維持することのできるオピオイド、

もう一方は使用すればするほどに、正常からかけ離れていってしまうベンゾジアゼピン、

さて、この両者の決定的な違いはどこにあるでしょうか。

オピオイドの代表格であるモルヒネは、近い構造の物質が人体に備わっています。ドーパミンやβ-エンドルフィンなどです。

それに対してベンゾジアゼピンは人体には存在しない合成薬物です。

身体にとって自然に近いか否かという所に両者の大きな違いがあり、

不自然な物質に依存することが、不自然な状況を作りだすという事を教えてくれているように思います。

本来ヒトが摂取するはずのなかった糖質を過剰に摂取してしまったがために、

非常に不自然な状態が引き起こされ、様々な難病の増加につながっているという現在の状況と、

共通構造があるように私には思えます。


たがしゅう
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たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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