サイアミディン

マンガで伝える技術

医者になる動機を聞かれた時に

漫画『ブラックジャック』を読んだことがきっかけになったと言う人は結構いるような気がします.

『ブラックジャック』というのは,無免許の天才外科医ブラックジャックが,法外な治療費を請求しつつも誰も助けられない病気の手術を成功させ,そこから生まれる人間の複雑な感情や葛藤について描かれたヒューマンストーリーです.

私は内科医ですが,かくいう私もブラックジャックに影響を受けた人間の一人です.

私の中で印象に残っている有名なセリフに,ブラックジャックの恩師である本間丈太郎医師が臨終の間際に言った「人間が生きものの生き死にを自由にしようなんておこがましいとは思わんかね」というものがあります.

医療ができることには限界があり,謙虚な気持ちで診療に臨まなければならないという事を鮮烈に印象付けられました.

そんな『ブラックジャック』を書いた作者,漫画界の神様と呼ばれる手塚治虫先生は,自身が漫画家でかつ医師免許を取得したれっきとした医師です.

これを初めて聞いた時は驚きましたが,それゆえにかける説得力のある漫画だと思いましたし,こういう形の医師としての生き方もあるのだと深く考えさせられました.

漫画というのは人に物事を伝える時に独特の強い力を持ったツールだと思います.
私がもう一つ愛読している漫画に,これまた有名な『ONE PIECE』という漫画があります.

言わずと知れた少年漫画雑誌「ジャンプ」に長期連載されている海賊をテーマにした冒険漫画です.

たかが少年漫画と思われる方もいるかもしれませんが,この漫画も相当すごい漫画です.

1997年から続いている長寿漫画ですが,作者の尾田栄一郎先生は,この漫画のストーリー構成をなんと中学時代にすべて完成させていたそうです.

ざっくりと言うと「ゴムゴムの実」という全身がゴムになる果物を食べた主人公ルフィが,海賊の頂点である「海賊王」になるために,敵対する海軍を蹴散らしながら冒険していくという物語です.

こういうとよくあるただの冒険漫画のように聞こえるのですが,読んでみればわかりますが,実は実社会の問題点も鋭く突かれていたりする描写や,心に残る「名言」が多く書かれています.

例えば作品中に登場する海軍は,正義を掲げる実社会で言えば警察のような組織として扱われていますが,海軍の上層部が権力を振りかざし,正義の名の下に非人道的な行為を繰り広げているような描写がなされています.

人種差別の問題,常識で希望を否定する人々,叶わぬ壁を超えるために立ち止まって力を蓄えることの重要性,など教えられることがたくさんあります.

そんな『ONE PIECE』の中にも医者が登場します.世紀のヤブ医者「ヒルルク」というキャラクターです.




ヒルルクは元泥棒で,不治の病にかかってしまい,どの医者にも治療できないと見放され途方に暮れた時にある国で辺り一面の綺麗な桜の景色を目にしました.

その後ヒルルクは医師に「まるで健康体だ」と言われ,その奇跡の体験を受けて泥棒から医師へ転向したというわけです.

しかし元が泥棒で、我流で医療を進めるが故に,患者に麻酔銃を打ったり,カエルのエキスを飲ませたりとやることがむちゃくちゃなのですが,

すべて「心から患者を救いたい」という一心で様々な行動を起こしているのです.

そんなヒルルクが悪者の策謀にはまって殺されることになり,死ぬ間際に放った次のような言葉があります.

「人はいつ死ぬと思う…?

 心臓を銃で撃ち抜かれた時……違う

 不治の病に犯された時……違う

 猛毒キノコのスープを飲んだ時……違う!!

 …人に忘れられた時さ…!!!」



非常に印象的でした.

覚えてくれている人がいる限り,人はたとえ死んでもその人の中で生き続けることができるのだと.

その通りだなと思いました.

そして今再びこの言葉を思い出した時に,自分が思った事を形に残していく事にも大きな意味があるのだと,改めて考えさせられるところがあります.

『ONE PIECE』の中にはこれ以外にも心に深く刺さる名言が数多く見受けられます.

まだ読んだことのない人は是非ともご覧になってみて下さい.



たかが漫画,されど漫画です.

手塚先生にしても、尾田先生にしても、

他の誰にも真似ができない大事な事の伝え方を

「マンガ」という技術を用いて成し遂げておられます。

心より尊敬する次第です。


たがしゅう
関連記事

コメントの投稿

非公開コメント

うぅぅん…

酸性食品の取り過ぎには要注意!糖尿病のリスク56percentも増加

こんな記事が載っていました!
絶望的です…

ゲルソン療法

たがしゅう先生

こんにちは^^

ゲルソン療法という、過激な(笑)健康法に
関して、先生はどのように思われますか?

癌の原因は、ナトリウム、動物性の脂肪、油
という考えで、塩分0の食事を推奨されていますが、危険じゃないんですかね??



『1.ゲルソンミラクルと言われる理由
 からだはみんな異なります。
 健康法を、鵜呑みにせずに、からだとコミュニケーションして自分なりの方法を確立しましょう!!

2.食べ物から効果
①動物の蛋白質(肉・魚・乳製品)は、消化にエネルギーが必要なので、内臓に負担がかかりやすい。
 消化できたときにはエネルギー値が高い。
 消化不良を起こさないような、消化酵素をもった生野菜の摂取を同時にする、消化剤を使うなどの工夫が必要。

②ナトリウムを完全にやめる。
 なぜなら、細胞にナトリウムが多いと、ガンを増やしていくのだから。
 ここで言う、ナトリウムとは塩のこと。ガンの人は野菜に多いカリウムをなるべく取る様にする。
 NaとKのバランスは、健康維持に重要なポイントである。

③健康な人でも、精製塩でなくミネラルも含有した自然塩を取ること。
 ナトリウムはからだを冷やすので、汗を流すときには取る必要があるミネラルだが、ガンの人が汗を流すのはまれな事なの で、取ることで、余計からだを冷やす事になる。
 このように、塩はからだに悪いものではなく、必要としない人は取らない方がからだは喜ぶ。
 塩は良いか悪いかの論争自体がナンセンス!

④からだの内臓再生のプログラムのために1日13回のフルーツ、野菜のジュースの摂取(肝臓の解毒作用を強めるために、
 ビタミン・ミネラル・酵素を大量に必要とする)
 わずかな市販のジュースを飲んでも解毒にはならない。

⑤肝臓の強化―血液は3分ごとに肝臓のフィルターを通過。肝臓が弱いと、血液が汚れたまま、また、腸から全身に回る。
⑥そのために必要なのが コーヒー浣腸 〔1日5回〕日本でも、やる人はどんどん増えている。
 ガンの人には大量のジュースの摂取とセットで必需。体毒を排出する肝臓の強化。
 コーヒー浣腸をすることで、肝臓を洗い出す。
 ガン細胞の死骸を外に排出する事で、痛みも取れる。(関節病の痛みも取れるので、万病に効果あり)

⑦遺伝子組み換えの野菜や防腐剤、色素など、肝臓に負担になるものは入れない、ほかにガン細胞を元気にするようなものは入れないこと。これは、免疫を司る、甲状腺も強化する事になる。

<ガンの原因は、栄養素の欠乏と毒性の蓄積に尽きる。 それと、運動をしないナトリウムの滞りやすいガン体質にはそれ以上 ナトリウムは入れない、原因は運動不足から汗がでにくい冷えた体質になっているからだ>』

私には到底実践できませんが・・・

Re: うぅぅん…

糖尿人の姉 さん

 情報を有難うございます.

> 酸性食品の取り過ぎには要注意!糖尿病のリスク56percentも増加

 こういう時に動じる必要はありません.

 なぜなら糖質の摂取量がどうであったかという情報がないからです.

 糖質摂取を放置したまま酸性食品を摂っているのだとしたらそれはよくないだろうと思います.

たかが漫画されど

いつも拝見しています、私の場合は ブラックジャックによろしくをよく読んでました。
主人公の絶対曲げない真っ直ぐな所、真面目で融通のきかない生き方がすごくよかったです。

愚息がそれを読み医師を志しただいま浪人生です。
漫画が彼の人生を変えたみたいです。それも高校二年になってから

されど漫画でした。たがしゅう先生のような先生に患者が一番の医師になれればと、

人生てわからないですね。

Re: ゲルソン療法

健康マニア さん

 御質問頂き有難うございます.

 ゲルソン療法については申し訳ございませんがきちんと語れるだけの知識を私は持ち合わせておりません.

 ただ教えて頂いた情報について考えれば,全体的に賛同しかねる治療法ですね.

 例えば,塩分はある程度人体に必要だと思いますし,動物性蛋白質が消化しにくいというのも従来の常識に基づいた誤った解釈ではないかとも思います.

 でも,また折をみて自分でも勉強してみようと思います.教えて頂いて有難うございます.

Re: たかが漫画されど

奈良県吉野郡けんさん さん

 いつもコメントを頂き有難うございます.

 たまには趣向の違う記事もいいかとこんな話題を書いてみた次第です.

> 愚息がそれを読み医師を志しただいま浪人生です。
> 漫画が彼の人生を変えたみたいです。


 そうですか.素晴らしいことですが,これからの時代医療に携わることはとても大変です.ある意味覚悟が要る選択だと思います.時には見たくないものを見なければならないこともあります.

 でも、是非とも頑張ってほしいと思います。

 私は,これから医師になる人には少なくとも糖質制限,湿潤療法は絶対に知っていてもらいたいです.どうか息子さんに宜しくお伝え下さい.

BJ先生

先生もでしたか!
私も今まで沢山、ブラックジャックに影響を受けたDoctorに
お会いしてきました~
あと、漫画ではないですが、年代を問わず、白い~、それに、BJによろしく、
その他やっぱり医師が主人公のものや病院が舞台のものは、
考えさせられるものがあります。
私自身も・・・
こんなに雑談したりスタッフが集まれるほど暇じゃないよ!とか
ツッコミ入れつつ、話の核心やテーマは、同僚とも話します。
そういうのって、何年たっても、キラキラした初心、
素直で謙虚なケアへの気持ちを思い起こすのにもいいかな、と思っています。
ところで、
すごいdata、N先生のHPにも載ってましたね、
長くなるので、そのへんはまた、メールします。私の方は、歓送迎会や忘年会続きで、なかなかKD食やプチ断食の継続やトライが、この後またしばらく困難です。

ありがとうございます

そうですね、糖質摂取に関しては触れていませんね!
安易な記事を載せないで欲しいです!

Re: BJ先生

KCO さん

 いつも応援を頂き有難うございます.

 いろいろな漫画ありますが,良い漫画が書ける人って本当にすごいと思っています.

> すごいdata、N先生のHPにも載ってましたね、

 N先生の何でもオープンに公表される姿勢には心より敬意を表しています.

 「医学の情報に著作権はない」ともおっしゃっていました.そのように無償で情報を公開されるからこそ,信頼されているのだと思います.

 私も大事な情報は隠すことなく皆さんと共有していきたいと思います.

ある仏教徒の「死後の世界」観

死んでから結ぶ果などというものは、どうでもよいではないかという者もあるかもしれないが、それはあまりに見解のせまい、まったく現実的で、利己主義な考えだとしなければなるまい。そんな考え方では、結局、真に生きるに値するような人生はおくれるはずがないのである。けだしわたしどもには、みんな子供もあるし、隣人もあるし、同胞というものもある。わがなきあとには、そんなものはどうなってもよいという訳のものではあるまい。

さらに眼をあげて言えば、わたしどもは、いかに微力であろうとも、なおかつ人類とか世界の運命と、まったく無関係ではないかも知れない。わたしは与謝野晶子さんの歌の一首を感銘深く記憶しているのであるが、それはこうである。

劫初より造りいとなむ殿堂に
     われも黄金の釘一つうつ

人類がはじまってからこのかた、ずっと続けて造りいとなんできた殿堂とは、昌子さんの意味するところでは、たぶん、文学というものであろうかと思われる。その殿堂のすぐれた造営のために、わたしもまた黄金の釘ひとつでも貢献したいという。それが昌子さんの願いというものであり、また意気込みであったに違いあるまい。

そんな能力はわたしにはないけれども、なおかつ、わたしだって、人類の運命や世界の成りゆきについて、まったく無関心ではありえない。それをもまた「劫初より造りいとなむ殿堂」ということをうるならば、たとえ「黄金の釘」ではなくとも、せめて石ころの一つでも貢献をしたいものと思う。それが、この歌一首によせるわたしの感慨なのであり、このこころあって人ははじめて、まことに生きるに値する人生を見出すことをうるであろうと思うのである。

とするならば、わがなきのちに結ぶであろう果こそ、もっとも心しなければなるまいと思えてならない。

(増谷文雄、『業と宿業』より)

Re: ある仏教徒の「死後の世界」観

きみぴょん さん

コメントを頂き有難うございます。

死後の世界があるかどうか、私には知り得ぬ事ですが、今生きている証を残して行く事はできると思います。

その行いが人類にとって吉と出るか凶と出るかはわかりませんが、

自分の信じる道を突き進んで、悔いのないように生きたいと思っています。

医師の意志の映画

たがしゅう先生

今年の年初、映画「東ベルリンから来た女」を観ました。

内容は
 http://www.barbara.jp/

旧東独でのお話で、近頃の凡医師には見せたい映画でした。
なにせ、今年国内で4名が死亡したとされている、マダニのウイルスのワクチンを、取り寄せていては間に合わないってことで、自分で作ってしまうという優秀な医師達だと暗示しておりました。
 そして最終場面近くでは「医師の本能」のようなものを見ることが出来ました。
映画としてもとってもいい内容でしたので是非TUTAYAかAmazonで・・・

Re: 医師の意志の映画

Yamamoto_ma さん

 いつも情報を頂き有難うございます。

> 映画「東ベルリンから来た女」

 是非とも見てみたいと思います。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
これまでの訪問者数
FC2アフィリエイト
メールフォーム
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR