サイアミディン

糖質制限推進派医師こそが立ち向かうべき課題

先日、とある糖質制限実践者との交流で、

素朴かつ芯をつく質問をされてドキッとする事がありました。

「医療関係者の方は糖質、タンパク質、脂質それぞれを摂ったらどのくらいインスリンが出るかって認識しているものなのですか?」

インスリンの値は血糖と違って簡易測定器なるものはありませんから、基本的には病院での採血でないと測定できません。

また保険の問題もあり何度も採血する事は一般的ではありませんから、医療機関で食後インスリン動態を把握する機会があるとすれば私の知る限り、未診断の糖尿病の診断目的で行う75gOGTT試験の時くらいだと思います。

この試験は75gの糖質が含まれるブドウ糖入り炭酸水を飲んでもらい、摂取前、30分後、60分後、120分後に採血をして血糖値の推移を確認するというものです。

2時間値で血糖200mg/dL以上が確認されたら「糖尿病型」と判定され、2回糖尿病型と判定されたら糖尿病と確定診断されます。

この75gOGTT試験で採血する際に血糖と一緒にインスリンを測定することがあるのです。
その人の糖尿病がインスリン分泌不全型なのか、インスリン抵抗性型なのかを判断する目安にするためです。

ただこの場合、純粋な糖質75g負荷なので、タンパク質や脂質を摂取した時にインスリンがどのくらい出るのかは全くブラックボックスです。

ではタンパク質版の75gOGTT試験のようなものはないのかと言われたらありません。同様に脂質でもありません。

だからタンパク質でもインスリン分泌されるがグルカゴンとの同時分泌で基本的には血糖は変動しないとか、脂質ではインスリンは分泌されないとか生理学的には言われているけれど、

じゃあ、実際の患者でどの程度純粋なタンパク質負荷、純粋な脂質負荷でインスリンがどうなるのかという事はわからないというのが実情なのではないかと思います。

ということは、基本的に医者はタンパク質や脂質によるインスリン変化を把握せずに診療に当たっているという事になります。

ではどうすれば調べられるかという事になりますが、これにはいろいろとハードルがあります。

例えばタンパク質75g摂取で食後インスリンがどうなるかという事を調べようかと思ったら、何を摂取してもらえばよいかという問題がまず現れます。

プロテインパウダーのようなものを水に混ぜれば良いという声も聞こえそうですが、実際に私達がタンパク質75gを摂取するのは肉とか魚とか卵とか複雑有機化合物としてです。

しかもひと口にタンパク質といっても、実際には20種のアミノ酸が関わっており、それぞれ糖原生アミノ酸とかケト原性アミノ酸とか性質が異なっています。その中のどれを扱うのかという問題も出ますし、一塊にしたものとバラバラに分析した結果を一緒くたにしてよいのかという問題も出てきます。

脂質に至っては脂質版75gOGTT試験をしようとすれば、それこそ油をそのまま飲むような事をしなければなりません。私は想像するだけで気持ちが悪いです。

いくら脂質が良いと言っても他の食材とバランスよく交じっていてこそであると感じます。


それならばという事で私が思いつく方法は、絶食点滴中の入院患者さんにアミノ酸輸液、脂肪製剤を投与する前後のタイミングで投与前後のインスリン値を測定するという方法です。

人工的な環境で、経口摂取と同じとは言えませんが、糖質入りの点滴でも血糖値が理論通り上昇する事を考えれば、ある程度の目安にはなるのではないかと考えています。

血糖値やケトン体は簡易測定器の登場により一般の糖質制限実践者の皆さんの尽力により様々な実態が明らかになってきましたが、

インスリンの食後分泌動態に関しては、少なくとも現時点では糖質制限推進派の立場の医師でないと解明できないのではないかと思います。

機会を伺いつつそうした知見を明らかにしていきたいと考えています。


たがしゅう
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いつもブログを楽しみに拝見しています。

糖質制限に出会って1年半になりますが、衆知されてない以前から、諸先生方や実践者の皆さんの集合知でブラッシュアップされてきた事をいつも感じます。

今回のインシュリン量への疑問も、そのような集合知の芽が出た瞬間に感じられて、嬉しくてコメントしました。

新しい環境で、先生の信念に沿った治療とデータ収集ができれば良いなと思っています。

私も、出来ることは限られていますが、糖質制限の本やブログで勉強し、押し付けすぎないように^_^ 、必要な人に糖質制限を広めていきたいと思っています。

Re: タイトルなし

なか さん

 コメント頂き有難うございます。

 誰かの感じた疑問がきっかけになり、また別の誰かが解決策を提示するという形で、
 一人で考え続けるよりもよほど効率的でよいものが出来上がっていくという利点が集合知を作る場にはあると思います。

 おっしゃるように押しつけがましくならないように伝えていく必要があると私も感じています。

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Re: OGTTについて

御指摘頂き有難うございます。修正させて頂きます。

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Re: No title

ぺこら さん

 コメントと情報を頂き有難うございます。

 患者さんと相談しながら、時期が来れば適宜実践していこうと思います。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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