サイアミディン

人に伝わりやすい話し方

先日入院中の特定の患者さんに対して、

担当の医師、看護師、リハビリ療法士、栄養士、メディカルソーシャルワーカーが一同に介して、

患者さんの現状を報告し合い、問題点や今後の方針について検討するカンファレンスに参加しました。

その時は院長先生のとある患者さんについてのカンファレンスで、私はオブザーバーとして参加していました。

各スタッフがメモを見ながら話される内容には詳しい情報がたくさん含まれているのですが、

初めて聞くせいもあってなのか、どうも内容が頭に入ってきにくい印象を持ちました。

ところが最後に院長先生が病状の報告を説明する際は、それまでとは一転してすっと頭に入ってきました。
別に院長のヨイショをするわけではありませんが、本当にそう思いました。

院長は比較的落ち着いたトーンでややゆっくりとしたテンポでメモを見ずに話をされていました。

それに対し他のスタッフは、メモを見ながら緊張も多少あるのかやや早口で抑揚のない単調な調子で話されていた人が多かったです。

どうやらその辺りに話の伝わりやすさのヒントがありそうです。


そう思ったのには理由があって、実は同じ頃、たまたまこんな本を読んでいたのです。



あの人の声はなぜ魅力的なのか ~惹かれる声と声紋の科学~ (知りたい!サイエンス) 単行本(ソフトカバー) – 2011/10/21 鈴木 松美 (著)

何かを口頭で伝えようとするとき、その話し方によって伝わり方は確実に変わってくるということです。

その事を考える上で非常に参考になるこの本に書かれていた内容を一つ紹介します。

(以下、p12-13より引用)

【"振り込め詐欺"は、人の心理をコントロールする音響技術のプロ?】

電話一本で、巧妙にお金を振り込ませる"振り込め詐欺"の被害は、依然として減少傾向にはありません。

どうして、あんな手口に騙されてしまうのだろうと不思議に思われる方もいらっしゃるでしょうが、

彼らは声の特性や人間の心理状態の動向をきちんと把握し、じつに巧妙なテクニックを用いているのです。

そのキーポイントになるのは、話速(わそく=話すスピード)の変化です。

ゆっくりとした聞き取りやすい速度というのは、1分間に350字程度の言葉です。NHKのアナウンサーが、ニュースを読む速度といえば、おわかりいただけるでしょう。

当然ですが、1分間にしゃべる文字数が増えれば、それだけ早口になります。

人により違いはありますが、1分間に600字を聞かされたら、一般的なお年寄りは言っている意味が理解できなくなります

言葉が消化できなくなる、つまり頭が回らなくなってしまうのです。

それを騙すときの話術に取り入れたのが、"振り込め詐欺"の手法です。たとえば、こんな電話がかかってきたとします。

「△△警察の□□です。お宅のお孫さんが、電車内で痴漢をして逮捕されました。被害者の方は、示談にしてもいいと言っています。そのためには至急200万円を振り込んでもらなわければなりません。今はもう2時半ですから、あと30分で銀行が閉まります。急がないとお金の用意が間に合わなくなりますよ。」

これを1分間に530字くらいの早口でしゃべります。そうすると電話を受けた人は、その早口に巻き込まれ、頭が混乱してパニックに陥ってしまいます。

彼らが巧妙なのは、全体的には早口でしゃべりますが、「痴漢」「逮捕」「200万円」「銀行」「急がないと、お金の用意」などのとこをは、話速を300字くらいに落とすことです。

その結果、話速を落とした部分だけが強く印象づけられて頭に残り、あとのところは、すっかり消し飛んでしまうのです。

(引用、ここまで)



どうやら口頭で何かを伝える時には、それに適したスピードというものがあるようなのです。

この事を意識していないと、しゃべった本人は伝えたつもりでも、それを聞いた側にはほとんど伝わっていないという誤解の元になりかねません。

件のカンファでの聞き取りやすさの違いはその事も関係していたのではないかと考察します。

ただ、NHKのアナウンサーのスピードが一番良いなどとはいろいろな所で聞く話ですが、NHKのニュースを聞いていても何だか頭に入ってきにくいことが私はあります。

それは文章を読んでいるからで、そこには抑揚がないからではないかと考察します。

例えばテレビ通販で有名なジャパネットたかたの元社長、高田明氏の話し方を想像すれば適切な話速に加えて抑揚の必要性もすぐに理解できると思います。


これは自分が誰かに何かをプレゼンしなければならない時に大いに応用できる話です。

少なくともしゃべるスピードは早くなり過ぎないようにすること、特に強調したい内容の時はNHKのアナウンサーのスピードを意識すること、

そしてメモを読むプレゼンの仕方はできるだけしない
方がよいです。なぜならメモを読みながら抑揚もつけるのは至難の業だからです。

メモを使わないと不安になる気持ちもわかりますが、メモを使ってあまり伝わらないのと、メモを使わないで少なくともしっかりと情報が伝わるのはどっちが心象がよいかという話にもなってきます。

本番になると緊張するという場合は、最初から話速を1分間に200字程度などと遅めで練習しておくのもよいかもしれませんね。

加えてパワーポイントなどでスライドを使う場合には、1スライドに情報を詰込み過ぎないようにすることも大事になってくると思います。

そのような事を意識し、質の高いプレゼンテーションができるように私はなりたいです。


たがしゅう
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No title

たがしゅう先生 新天地でのご活躍お祈りしております。
さて、プレゼンと日常会話とは別のものでしょう、でも先生にオフ会等でお話しする機会に恵まれた時、いつも先生のお話しのされかたは声質・ボリューム・スピード・抑揚 とても聞きやすく私は心地いいなあと思います。印象深いお言葉も記憶に残りますし。

Re: No title

ユッキ さん

 過分な評価を誠に有難うございます。
 しかし自分の中ではまだまだ未熟です。引き続き精進したいと思います。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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