サイアミディン

シンプルな治療、それでも治る

新しい病院での褥瘡回診を担当させて頂く事になりました。

10年前に私が院内に広めた褥瘡のラップ療法が今でもきちんと行われており、

褥瘡の処置に関しては近隣の病院と比べて定評がある状態になっているそうです。

褥瘡回診に際しては、夏井先生がおそらく世界一シンプルな褥瘡治療のフローチャートを作っておられたのでそちらを参考にさせて頂きました。

外用剤はワセリン以外一切使わない。発赤のみの褥瘡ならフィルム剤、黒色壊死/高度発赤がなければ穴あきポリエチレン袋+紙おむつ、通称「穴ポリ」を当てる。

当院では「穴ポリ」を看護師さんが自ら作ってくれる文化が根付いており、処置の体制は万全です。

そして黒色壊死/高度発赤があれば、それは感染が疑われる状況なので、デブリドマン/ドレナージを行う。これくらいの事であれば内科医の私でも行うことができます。
今までは他科との兼ね合いで褥瘡に対してこうした治療を行う事ができず、指をくわえて見ることしかできなかったのがようやく自分の責任で褥瘡を診る事ができる環境となりました。

改めて襟を正してきちんと診ていかなければならないと思います。


ところが、前述の夏井先生のフローチャートにはこのような事が書かれています。

(以下、引用)

週に一回の褥瘡回診も一人当たり10秒程度で終了し,病院全体を回っても5~10分で完了です。褥瘡回診といえば医者と看護師などがゾロゾロと大名行列を作って行うものですが,当院では無縁です。

(引用、ここまで)



それは流石に夏井先生の熟練の技がなせる業じゃないのかなと思って、

ひとまず14時~15時を褥瘡回診の時間にするということでやってみることにしました。

約80床の病院で、褥瘡患者は5名いました。一人一人看護師さんに誘導されながら見ていきましたが、

確かに1例10秒くらいで終わります。移動時間を含めても14時10分くらいには回診が終了してしまいました。

なぜなら診るポイントが非常に限られています。褥瘡の深さ大きさに関わらず感染が疑われなければ、たいてい穴ポリでカバーできます。せいぜい浸出液が多い場合に紙おむつ直当てを指示するくらいです。

だからほとんどのケースで、「そのまま穴ポリを当てて適宜洗浄して下さい」というだけで終了です。非常に簡単です。

これで治ってしまうのですから、褥瘡治療の専門家がやっている先端医療って何なんだ、という疑問を禁じ得ません。

要するに「身体が傷を治そうとして起こす反応を極力邪魔しない環境を整えること」

これが褥瘡のラップ療法や湿潤療法に共通する治療原理であり、

この事は糖質制限にも通じる共通原理であるように私は思います。

これからも引き続き臆せずに院内革命を起こしていきたいです。


たがしゅう
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No title

私は褥瘡を見るとき・・・

確かに処置だけのことを言えば、10秒で終わるけれど、
なぜ、その褥瘡が、できたか?
なぜ、治っていかないか?
を考えたとき、

拘縮の具合で、ポジショニング方法は、違うし、
体交が悪さをしているのではないか?と疑うし、
最近の栄養状態は?
車いすへの移乗方法が、悪さをしていないか?

などなど、

様々な要因をナースと共に探っていくため、
時には小一時間、ベッドサイドに居続けることもあります。

開放性湿潤療法が当たり前になると
さらなる改善点を探りたくなりますよ。

Re: No title

たかはし先生

 コメント頂き有難うございます。

 なるほど大変勉強になります。
 木も見て森も見るの発想を、褥創にも応用しなければならないということですね。

 今後経験を積み重ねていけば、議論が必要な場面も出てくると思います。先生のご意見を参考にさせて頂きたいと思います。

No title

勤務しているのは、老健です。
最近施設長が総合病院で形成外科だったDr.に変わったのだけれど、
ユーパスタ、ゲーベン、エキザルべ、フィブラストですよ。
看護師も、ユーパスタ、ゲーベン、エキザルべ大好きですから。
ワセリンでいいんじゃね? と思う介護屋は、俺くらいしかいないけどね。

Re: No title

たこさん さん

 コメント頂き有難うございます。

 一般的な医療者には、傷に対しては心情的に何か外用薬を使わないと不安という感覚があると思います。
 しかし糖質制限や湿潤療法を通じて、マイナスの医学の重要性がわかれば、何も使わない事がごく自然だということが理解できますし、その原理に皆少しずつでも慣れていく必要があると私は考えています。

自然治癒力を邪魔しないこと

こんにちは。先生の文章から思い出した言葉があります。ドイツの有名な医師が残した、人間に備わっている最大の名医は、食欲不振と発熱である、という名言です。私たちは、病気で食べられない日が続くと、病院で点滴をしてもらうことが当たり前になっている気がします。たとえブドウ糖を入れず、ビタミン類のみの点滴をお願いしたとしても、これは自然治癒力を邪魔していることになるのでしょうか?良く考えれば、体が食べることを拒否しているのに、血管から栄養注入するなんて大変強引なことのように思います。

Re: 自然治癒力を邪魔しないこと

りんご さん

 コメント頂き有難うございます。

> 人間に備わっている最大の名医は、食欲不振と発熱である、という名言
> たとえブドウ糖を入れず、ビタミン類のみの点滴をお願いしたとしても、これは自然治癒力を邪魔していることになるのでしょうか?
> 体が食べることを拒否しているのに、血管から栄養注入するなんて大変強引なことのように思います。


 私も基本的にりんごさんの御意見に賛同します。

 発熱も食欲不振も、元はと言えばその必要があって起こっている現象です。
 それが正常に機能している状況においては、その症状のままに従うのが基本だと思います。

 ただし例外は何らかの原因でその機能がオーバーヒートして、必要もないのに発熱、食欲不振を起こしているような状況です。その場合は放置しておくと命に関わるので何らかの人為的介入が必要です。
 食欲不振のままに任せて食欲が復帰しない場合であれば最低限の水分・栄養点滴は必要だとは思いますが、ちょっと調子が悪いから点滴をしてもらうという発想はよろしくないと私は考えます。

No title

たがしゅう先生
お返事ありがとうございます。
これからも自分の体が症状で訴えていることを
安易に薬で抑え込まないように、体が治そうと奮闘しているのを邪魔しないように心がけます。
ありがとうございました。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
漢方好きの神経内科医です。
南鹿児島さくら病院に勤務しています(下段にリンクあり)。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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