サイアミディン

糖質は睡眠導入剤か否か

糖質制限の理論を知ると,一見関連がないと思っていた事柄が一本の線につながるということをよく経験します.

今日は糖質と睡眠の関連について考えてみます.

食後に眠たくなるということは誰もが一度は経験している事ではないかと思います.

糖質を制限すると,この食後の眠たさがなくなるということを実際に経験することができます.

この事実から考えるに,糖質摂取によって血糖値が上昇し,上昇した血糖が下がる際にヒトは眠気を感じているのではないかということが推測されます.

いわば糖質は睡眠導入剤と言えるかもしれません.

しかし一方で糖質過多のこの現代,不眠で悩まされる人が非常に多いというのもこれまた事実です.

糖質が睡眠導入剤だと仮定すれば,不眠の人が多いのは理屈に合わないように思えますが,

はたして相反するこの二つの事実,一本の線につながるでしょうか.
この事を考えるために,一つ先日の記事を参照して頂きたいと思います.

それは糖質を摂取した際に生じる気分の高揚です.

糖質を摂取し血糖値が上がった際にヒトは幸福感を感じます.しかしそれは糖質によって作られた一時的な感情でした.

それが繰り返されることで次の糖質,また次の糖質と新たな糖質を欲し続けるようになり,

だんだん満足が得られるまでの糖質量が多くなっていきます.アルコール依存の人のアルコール量が徐々に増えていくのと同じ構図です.

そして最初は幸福を生み出していたはずの糖質が,慢性的な高血糖にさらされることで変性蛋白や神経伝達物質のかく乱によって,やがて幸福の逆であるうつの原因になってしまうという一連の流れです.

これが睡眠導入剤であったはずの糖質が,いつの間にか不眠の原因になっていくストーリーとさも似ているのです.


先日,睡眠に関する勉強会に参加して参りましたが,

この仮説を補強するように,「不眠とうつは相関している」というデータが示されていました.

また不眠が慢性化するとうつのリスクが高まるという事も言われていました.

その会では「なぜ不眠がうつの原因になるのか」ということについてはわかっていないという事でしたが,私はおそらく両者に糖質の中毒性と依存性が密接に関わっているのではないかと考えます.

すなわち最初は睡眠導入剤的な役割であった糖質が,繰り返し摂取することによって徐々に要求量が増え,その量に達しない場合に不眠を覚えます.

そして不眠を覚える時には身体はすでに慢性的な高血糖にさらされている状況であり,慢性的な高血糖によって前述のようにうつが引き起こされるという流れです.


それから「睡眠相後退症候群」という夜になっても寝れない,寝付けないという状態を示す睡眠障害があるのですが,
なんとこの病気の6~7割がうつを持っていて,それは夜型人間の人に多いようです.

しかも夜型人間かどうかというのは「時計遺伝子」による遺伝的素因によって規定されていて,そうした人は感情障害を発症しやすいといった傾向まであるそうです.

先日記事にしたようにある人は糖質で幸せになる,ある人は糖質で切れやすくなる,といった個人差は一重に遺伝的素因の違いによって生み出されているのだと感じます.

あと睡眠と言えば睡眠薬ですが,

単剤の睡眠薬をやめられたという人は45%程度だそうで,半分以上の人は一度始めた睡眠薬をやめられないというデータがあるそうです.

これは睡眠薬の依存性の問題もさることながら,糖質過多の生活を見直さない限り,前述の一連の流れが止まらないからというのも大きいと思います.

すなわち根本的には長く糖質を摂り続けることが不眠の原因となってしまっているのです.

いかに付け焼刃的な幸せや睡眠がよくないかということです.

寝酒も同様に一時しのぎで,繰り返す事で酒量が増えていく患者さんには日常診療でよく出くわします.

アルコールと糖質は同じ中毒性を持つという意味では共通していますが,

両者の違いは「糖質の方がはるかに日常的で,中毒性が弱い」ということです.

アルコールと違って普通の人は毎日3回以上(おやつを含めれば4回以上)糖質の中毒性に暴露され続けます.

それでも短い期間でみると糖質は悪影響よりもおいしかったり,ぐっすり眠れたり,幸せを感じたりと良い面の方が目立つかもしれませんが,

中毒性が弱いがゆえにゆっくりゆっくりと時間をかけて依存性を形成していくために,

なかなかその悪影響を自覚するのが難しく,気が付いた時には食べ過ぎ(肥満)で不眠でうつという不健康状態になって病院の薬が切り離せなくなってしまっているということです.

これってすごく恐ろしいと思いませんか.

そう考えると不眠にもうつにも肥満にも,

やっぱり糖質を控えるのが一番です.


たがしゅう
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あかるい気持ちで生きること

 私は、自転車通勤なのですが、たまに電車に乗ると、朝から爆睡している人や不機嫌そうな顔に出会います。
 現代社会のストレス、「格差社会」、連帯感のない社会風潮 + 糖質過多の生活がそうさせるのでしょうね。
 駅に着いて、「降ります」と言っても、動いてくれない人が、結構います。何もいわずに、人にぶつかるようにして降りる人がいます。一声かけあえばいいのに・・・。

この「不機嫌社会」ともいえる時代状況を、何とかしたいですね。
 もちろん、一方で、とても礼儀正しく、社会的連帯感に富んだ人たちもいます。
 私は、ホームレスの支援活動をときどきしますが、心の優しい人たちがボランティアで参加しています。
 糖質オフで「心のやすらぎを」 

糖質依存、そしてそれによる血糖値の乱高下による心の乱れ・・・悲惨な、殺人・障害事件の陰に、余りに多い糖質の摂取があるのではないでしょうか。

睡眠導入剤
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9D%A1%E7%9C%A0%E8%96%AC

勧告とガイドライン[編集]1996年には、世界保健機関による「ベンゾジアゼピンの合理的な利用」という報告書において、ベンゾジアゼピン系の「合理的な利用」は30日までの短期間にすべきとしている[10]。

英国国立医療技術評価機構(NICE)による、2004年の不眠症のガイドラインにおいて、睡眠薬の利用は重度の不眠に限り、かつ短期間に留めなければならないとしている[53]。非ベンゾジアゼピン系のゾルピデム、ザレプロン、ゾピクロン、短期作用型ベンゾジアゼピンの比較評価については有効なデータがなく、最も安価な薬物を選択すべきとしている。投与中に睡眠導入剤を切り替える場合、患者がその薬剤を直接原因とする副作用が発生した場合のみに限るべきだとしている。これらの睡眠導入剤について効果を示さなかった患者については、いかなる他の薬剤も処方すべきではないとしている。

アメリカ合衆国では、アメリカ食品医薬品局(FDA)によるベンゾジアゼピン系/非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬の添付文書には、7~10日の短期間の使用に用いる旨が記載されている[54]。

 日本は、長期かつ複数の薬剤を過剰投与していますね。

テーマの提供

たがしゅうさん

ブログどんどん充実してきますね。
勉強の時間大丈夫ですか?

と言いながら、糖尿病ネットから資料です。

http://www.dm-net.co.jp/calendar/2013/020929.php

○ストレスが糖尿病治療を難しくする ストレスをコントロールする方法

○世界糖尿病デー 世界の糖尿病人口は3億8200万人に増加

○CAD合併糖尿病の予後を血中の鉄成分で予測 [HealthDay Pro]

○国民医療費38.6兆円 糖尿病の医療費は1.2兆、最高を更新

○被災したフィリピンの糖尿病患者さんへのご支援をお願いします IDAF

 読者のみなさん
東京は、今日は、朝日が綺麗です。
幸せな一日になりますように・・・

Re: あかるい気持ちで生きること

わんわん さん

 いつも見守って頂き有難うございます。

>  私は、自転車通勤なのですが、たまに電車に乗ると、朝から爆睡している人や不機嫌そうな顔に出会います。
>  現代社会のストレス、「格差社会」、連帯感のない社会風潮 + 糖質過多の生活がそうさせるのでしょうね。


 これはわんわんさんのご指摘の通りではないかと私も思います。

 糖質過多の生活は、それが全てではないにしても、人によっては本当に精神的に悪影響を与えていると思います。

>  日本は、長期かつ複数の薬剤を過剰投与していますね。

 これもご指摘の通りです。

 医師側の感覚でいえば、不眠の人が来た時に「とりあえず睡眠薬を飲んでみますか?」とするのが、対応としては圧倒的に楽なので、ついついそうしてしまう医師が多いのではなかと思いますが、

 これは問題の先延ばしにしかなっていないということを肝に銘じなければならないと思います。

 すでに睡眠薬依存がかなり浸透してしまっている現状の中でなかなか難しいことではありますが、私はできるだけ睡眠薬に頼らない睡眠の治療を目指していきたいと考えています。

Re: テーマの提供

わんわん さん

 テーマの御提供有難うございます。

> 勉強の時間大丈夫ですか?

 空いた時間を利用して書いていますので大丈夫です。今も電車での移動時間を利用して返信しています。

 それにブログを書くこと自体が私にとっての勉強です。みなさんのコメントに教えられることが本当に多く、やりがいがあります。

 ただ毎日記事を更新するのはそろそろ厳しくなってきたかもしれません(^_^;)。書けなかった日はどうか大目に見て下さい。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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