サイアミディン

頻回な強い刺激はやがて機能を低下させる

先日出張でビジネスホテルの喫煙者用の部屋に泊まりました。

私はタバコを吸いませんが、近隣のホテルが全て満室で、ようやく見つけたそのホテルでも喫煙者部屋しか空いていなかったためです。

いざ泊まってみると壁などに染み付いたタバコの匂いが非常に鼻につきました。

場面は変わり、日常診療の場面では、

患者さんがタバコを吸っているかどうかは患者さんに尋ねなくてもすぐにわかります。明らかにタバコの匂いがするからです。

しかしタバコを吸っている当の本人は、意外とタバコの匂いがする事に気付いていない事があります。
他人が不快に感じる匂いにどうして気が付かなくなってしまうのでしょうか。

そこにはドーパミン神経系の性質が密接に関わっています。


嗅神経は以前にも触れたように、鼻部から脳へと直接つながっており、最前線で外界の刺激を感じ取る神経です。

本来であれば良い匂い、悪い匂いを鋭敏に嗅ぎ分け、危機を未然に回避するのに役立つものです。

タバコの煙にはアンモニアやアセトアルデヒドなど悪臭法で指定される特定悪臭物質が含まれており、

発癌性物質など200類以上の有害化学物質が科学的に同定されているそうです。

だから喫煙者にとってもタバコの煙は身体が避けたいものであるはずなのに、

困ったことにタバコの中のニコチンが脳内のドーパミン神経系を同時に刺激するために、

急峻に多幸感や満足感がもたらされてしまいます。それが有害性を感知する嗅神経の働きをマスクしてしまいます。

しかも、そうやって脳が偽りの満足感に満たされている間に、有害な匂い刺激はタバコを吸う度に嗅神経へ加わり続けることになります。

強い刺激が常態になれば弱い刺激を嗅ぎ分ける繊細さは失われ、嗅神経の働きは鈍っていきます。言い換えれば「耐性」が形成されてしまうわけです。

そのようにして喫煙者がタバコの悪臭に気付かない状況が生み出されてしまうわけです。

この話は香水の匂いが強い女性にも通じるものがあります。

良い匂いがドーパミン神経系を刺激し、日常的に繰り返される事で耐性ができ、今までの量では満足できなくなってきます。

それが高じれば、自分にとっては普通の匂いが周りにとってはキツすぎる匂いに感じられる状況が生まれます。

不自然にドーパミン神経系が刺激されるのは、ほどほどにしておかないと神経が疲弊してしまうと一般化できるかもしれません。


不自然なドーパミン刺激と言えば糖質摂取もそうですね。

アルコール常飲者における「休肝日」という言葉は随分一般的になりましたけれども、

糖質制限ができない人はせめて「休糖日」を設けないと、神経も腸管も疲弊してしまいかねません。

また糖質制限をしている人なら神経の疲弊は大分軽減されますけれど、

食べること自体でもドーパミンは出ますので、頻回に食べる人はやはり注意が必要だと思います。

出すべき時に出し、そしてあまり出し過ぎないこと。

どちらにも着地させてもらえない不安定さがありますが、

それこそがドーパミン神経と長くうまくやっていくコツなのかもしれません。

壁に染み付いたタバコの匂いを嫌がりつつ、そんな事を考えた夜でした。


たがしゅう
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プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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