サイアミディン

最善は常に変動する

とあるブログ読者の方から「ヒトが食べるべきものは何だと思いますか?」という御質問を頂きました。

投稿者の方の御意見では、書物を読むとヒトの主食は「骨髄」だという見解があり、

それに準じれば、骨髄の栄養素としては飽和脂肪酸やビタミン、ミネラルが豊富に含まれているので、

骨髄の栄養組成に近づけるために鶏肉よりもオージービーフ、また一部サプリメントを使うのもよいのではないかと考えるがどう思うか?という趣旨の御質問でした。

初期人類は骨髄を主食としていたとする説は、人類学者の島泰三氏の書かれた「親指はなぜ太いのか」という本に詳しく書かれていますね。

親指はなぜ太いのか―直立二足歩行の起原に迫る (中公新書) 新書 – 2003/8/1
島 泰三 (著)


確かにこの仮説は魅力的で説得力のあるものです。

しかしだからといって、現在私達が食べるものを骨髄の組成に近づけないといけないという考えには少し疑問があります。

初期人類が骨髄を主食にしていたことが正しいとして、それは骨髄が最適だったから食べていたというのではなく、

当時の自然環境において他の動物たちと競合しない形で食べ続ける事のできる最も都合の良い食べ物が骨髄だったという話です。


基本的に動物は肉でも草でも生物体であれば何でも食べて自分の身体に取り込むポテンシャルは持っていると思います。

食べ続けてきたものによって腸内細菌が変動し、長い年月をかけてその習慣を続けて適応するために腸管の形が変容してきたという可能性はあります。

その意味では何を食べてはよいものの、食べものによって消化・吸収に向き不向きはあるのでしょう。

しかしだからといって、初期人類が食べていた骨髄が、ヒトが目指すべき最良の食べ物という話にはなりません。

その時何を食べられるかという環境の変化によって最適の食べ物は容易に変化しえます。生物多様性の一つの側面でもあります。

だから初期人類の食べていたものに、参考となる指針は見出すことはできても、正解というものには一生たどり着けないと私は考えます。常に変化していくからです。

そしてその多様性は常に自然界の中で構築されてきたという事を忘れてはなりません。

ビタミンサプリメントに害が少ないのは、もともと人体に存在する自然物質であるビタミンをヒトの知能で人工的に合成したものを投与しているからです。

しかし例えばビタミンCを大量に投与して下痢をするという事象は、本当にビタミンCが必要な物質であれば起こり得ることでしょうか。

ビタミンC自体は自然物質であるけれど、それを大量に投与する事は自然ではありません。なまじ不足の人には効いてしまう所にそのトリッキーな部分があります。

私はオージービーフであろうと、鶏肉であろうと、身体の代謝が正常に機能していればあるだけの材料でヒトの身体は生命を維持してくれるものと考えています。

何を食べるかが大事なのではなく、もともと持っている機能をいかに錆びつかせないかということが大事だというのが私の見解です。

そして何が自分の身体を錆びつかせているかというのを考える上で、

食べ物に栄養という自分にとって都合の良い観点だけではなく、食べ物自体に機能を錆びつかせるリスクがあるという観点を持つ事も栄養絶対主義に陥らないために必要なことだと思います。


そもそも生物多様性というのは自然界の中で構築されてきたという事を忘れてはいけません。

私達が今頼りにするケトン代謝も、不要なものを処理するオートファジーも、生物の動的平衡状態を維持する様々なシステムも全て自然の中で生み出されてきたものです。

私達がどれだけ科学の力で人体の謎を解き明かそうとしたところで、

結局答えはいつも自然の中にあるように私には思えます。


たがしゅう
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食物繊維も栄養源かも?

おはようございます。

たがしゅう先生は、食物繊維の体内での吸収はどうお考えになりますか?
ご存知の通り、現栄養学的には、食物繊維はほぼ0カロリー扱いとなり、栄養扱いされてません。

夏井先生はご著書の中で牛を例えに出されてましたが、さらに大きいゾウも野生種は草食が基本。しかも胃は一つみたいです。

夏井先生も仰ってましたが、同じ量の白米を食べても体重差が出るのは腸内の食物繊維分解菌の差も一因かもしれないですね。

たがしゅう先生は完全なMEC食はされたことはありますか?

決してMEC食をしてください!と言うことではありませんので(笑)

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Re: 食物繊維も栄養源かも?

岸和田のセイゲニスト さん

 御質問頂き有難うございます。

> たがしゅう先生は、食物繊維の体内での吸収はどうお考えになりますか?

 食物繊維については以前にも考察しましたが、
 人体は直接吸収できませんが、腸内細菌が発酵というプロセスを通じて吸収しえるものです。
 ただし完全に発酵できる水溶性食物繊維と不溶性食物繊維とに分かれます。
 完全に発酵できない不溶性食物繊維は便の体積増大に寄与します。

 2015年2月23日(月)の本ブログ記事
 『「食物繊維」について学ぶ』
 http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-584.html
 も御参照下さい。
 
 腸内に当該の食物繊維を発酵できる腸内細菌を宿しているかどうかも、
 食物繊維をエネルギーとして利用できるかどうかに大きく関わっていると思います。
 草食動物が草で大きな体躯を維持できるのはそれを宿しているからだと考えられます。

 ただ腸内細菌のために常に食物繊維を摂り続けないといけないかと言われればそうは思いません。
 腸内細菌はケトン体を利用して生き延びることができるからです。

> たがしゅう先生は完全なMEC食はされたことはありますか?

 一時的にはやったことはあります。
 しかし私の場合は一般的な糖質制限と比べてそう大きな違いは現れませんでした。
 ただその経験が、高タンパク食の害に目を向けさせるきっかけにもなりました。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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