ブログ読者の方より匿名で御質問を頂きました。
「
コレステロールの上昇とストレスって関係あるんですか?」
というものですが、これについてはストレス学の書籍などを読んでみても直接言及しているものは私の知る限りありません。
しかしこんな時もあきらめずに自分の知っている知識と経験を元に、自分の頭で考えてみたいと思います。
結論から言えば「
正常な身体機能を有する状況ではストレスに伴いコレステロールは上昇する」と私は考えます。
ただしそれは悪いことではなく、
Low T3症候群と同様、身体の適応反応だと私は考えています。
すなわち、コレステロールが上昇している状態は、ストレスがかかり過ぎている状況を何とか終息させようと身体が今まさに頑張っている最中だということです。
言い方を変えれば、コレステロール上昇はストレス亢進の原因ではなく結果とも言えます。その根拠について私見を述べたいと思います。
まず身体にストレスがかかると自律神経系を介してストレスホルモンの分泌が刺激され、その代表格がコルチゾールです。
コルチゾールの意図はオーバーヒートしかけている身体を元に戻そうとする所にあるというのは
以前の記事でも考察しました。
そんな意図があるコルチゾールをさらに増やしたければ、材料を補充するのが一番です。
そしてコルチゾールの原材料はコレステロールです。従ってストレスがかかればコレステロールが上昇するというわけです。
このようにある物質が増加した際に、その上流の物質までもさらに増加するよう働きかける調整システムの事をポジティブフィードバックと呼びます。
ポジティブフィードバックはその機能の必要性が高い時に起こって然るべきです。
なぜならば、必要物質とは言え物質が増え続ける現象は、恒常性の維持から考えれば逆行しているからです。よほど必要だからこそこのシステムが発動するのでしょう。
一般には例えば排卵誘発の際に卵巣からのエストロゲンが増え、それが刺激になって上流の下垂体の黄体化ホルモンの分泌も刺激されるような状況(LHサージ)にポジティブフィードバックという言葉が使われますが、
私はこのコルチゾール上昇がコレステロール上昇をもたらす現象も一種のポジティブフィードバックではないかと考えています。
またLow T3症候群の観点から考えれば、
甲状腺ホルモンが作用しすぎれば、末梢組織でのコレステロール利用が高まりコレステロールが下がります。
しかしあまりその状況が強くなれば頻脈、下痢、発熱など制御困難な状態に人体が脅かされてしまうため、
身体はそのストレスフルな状態を回避するためにここでもコルチゾールが作用して、T4からT3への変換効率を弱めて甲状腺の働きを緩めます。
緩めた結果、甲状腺ホルモンの働きによるコレステロール低下作用も弱まって、結果的にコレステロールは余った状態となります。
よってストレスがコレステロール上昇をもたらすという説明もできます。
したがって、コレステロールが上昇すること自体は単なる適応反応で、全く怖がる必要はありません。むしろ身体に感謝してもよいくらいだと私は思います。
ただ、見方を変えれば、これは今まさに身体にストレスがかかっている事を教えてくれている身体からのメッセージなわけですから、
この警告を無視してストレスの原因を取り去る努力を怠ってしまえば、次第に過剰適応となり、ひいてはコルチゾールが出せなくなる
副腎疲労状態へとつながるおそれはあると思います。
例えば、
私の絶食実験の時もコレステロールは大層上昇しました。
しかし絶食を解除すればコレステロールは元の状態に速やかに戻りました。
こんなに早くコレステロール値が変化するということを私はこの時初めて知りました。何事もやってみないと分からないことはあるものです。
ただ大切なことはこの時体調がどうか、ということです。
誤解してはいけないのは、コレステロール上昇やLow T3症候群という数値があったらすぐにストレスに対処せよということではありません。
コレステロール上昇やLow T3症候群を呈していても、体調が悪くなければそれは身体がストレス環境に見事に適応してくれているということなのです。
絶食療法に取り組んでいる際に体調不良を感じたら再摂食するべきですが、体調不良を感じていなければ代謝環境の変化に身体が精巧なシステムで立派に適応してくれているのだから、
そのまま体調に注意しながら前に進んでみてもよいという判断になると私は思います。
例えば、おそらく初めて断食にトライする人は、その急激な代謝変化についていけず体調を崩す人が多いことと思います。
それでも糖質制限ベースで絶食にトライすれば、通常食から一気に断食する急激な代謝変化に比べればマイルドですから、比較的トラブルは起こりにくいと私は考えています。
古来からの断食道場でのノウハウもその辺りの危険が経験的に分かっていたからこそ、準備食とか回復食という徐々に代謝を変化させていく工夫の文化が発展してきたものと思われます。
この辺り数値絶対主義に陥ってしまうと本末転倒です。
おそらく断食をすれば、どんな人でも十中八九コレステロールは上昇します。
しかしその時「コレステロール上昇=ストレス亢進=続けてはダメ」と単純に解釈してしまっていれば、断食自体がダメという話になってしまいます。
それでは数々の断食によって難病を克服された事例の現実を無視する話になりかねません。
話が少しずれてしまいましたが、ストレスとコレステロールの関連はそういう事だと思っています。
逆にストレスがかかり、コレステロール上昇やLow T3症候群といった適応反応が起こり、
その適応反応で処理しきれずに何らかの体調不良を感じ始めた状況があったとして、
ストレスフルな環境のせいで、体調不良という身体からのメッセージを聴く事を怠り、そのまま無理をし続けてしまえば、
準甲状腺機能亢進状態や交感神経過緊張状態を彷彿とさせる糖質制限に不応性の過剰適応状態へと突入しかねません。
だからもっとも大事なバロメータはコレステロールでもfree T3でもなく、
自分の体調だと私は思います。
たがしゅう
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副腎疲労については最近よく話題になります。アメリカの女性専用ケトパレオクリニックの運営者は(特に糖質量を注意しなければならない人を除き)、ローカーボで疲労感が出た時には、カーボアップして副腎を休めようと提唱しています。しかし疲労感が出る状況を作らないように常時から少しカーボアップした方が良いとも言えますね?
実は最近私は自分が摂取エネルギーが不足した時に交感神経過緊張状態に近くなり、睡眠障害がおこることに気付きました。睡眠障害が出るとさすがにわかりますが、そこまで行かない時は気分も高揚してパワフルな感じですから体調は問題ないと感じます。しかしその裏で副腎を疲労させていた可能性はありませんか?
先生が説明される断食のような特別なイベントではなく、常時糖質制限することで、コレステロールが上昇する人(私も)が多いですが、こう言う人は体調は良いけれど、実はコルチゾール上昇している懸念がある、やはりコレステロール値が高すぎる(300mg以上とか)のは下げる方が良いと言う方向になりますでしょうか。