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ケトン体に依存性はあるか

category - 素朴な疑問
2019/ 01/ 05
                 
とある方から「糖質に依存性があるのであれば、ケトン体にも依存性があるのではないか」との御質問がありました。

本日はこの質問に答えることで記事にしたいと思います。

結論から言いますと、「ケトン体自体に依存性があるとは考えにくい」です。

勿論断定するのは難しいと思いますが、論理的に考えると上記の結論に到達します。

まずは依存性を形成するには脳の中ではドーパミン神経系というのが重要な役割を果たします。

中でもドーパミン神経が集中する側坐核などの報酬回路を形成している脳領域が深く関係してきます。
            

報酬回路を刺激するためにはドーパミン神経の刺激及びそれによるドーパミン分泌が必要となるわけですが、

我が師、夏井睦先生の著書、「炭水化物は人類を滅ぼす【最終解答編】」での考察にもありましたように、

ドーパミンの起源は攪乱物質に対する生命保護反応、すなわち脳に普段存在しない物質が入ってきた時や、普段存在しているけれど通常考えられないくらい多い量が入ってきた時にドーパミン分泌が刺激される脳の仕組みとなっています。

前者の例はタバコのニコチン、アルコール、覚醒剤など、依存症として真っ先にイメージしやすい物質が挙げられますが、

後者の例としては過剰糖質摂取に伴う異常高血糖、ということになります。

そもそも脳へ刺激を加えるためには、脳血液関門(Blood Brain Barrier:BBB)と呼ばれる強固なバリアを通過する必要があります。

そのBBBを通過するための条件としては、以下の3つが挙げられます。
①脂溶性であること
②分子量が十分に小さいこと
③専用の輸送体が準備されていること


アルコールは脂溶性ですし、ニコチンは侵入経路が特殊ですが、分子量が小さいことにより脳を直接刺激できる側面があります。
また「脳の栄養はブドウ糖」と言われるように、糖質を消化してできる最終代謝産物であるブドウ糖はグルコーストランスポーターと呼ばれる専用の輸送体が備えられていることでBBBを通過することができるわけですが、

農耕開始に伴い、本来の設計では想定していない程大量のブドウ糖が一気に流入するようになったため、

人体に必要不可欠な物質であるはずのブドウ糖が脳を刺激してドーパミンを介して報酬系を回し、依存を形成しているのです。


以上を踏まえてケトン体に依存性があるかどうか、についてですが、

まずは「脳はブドウ糖もケトン体も利用することができる」ので、ケトン体にも専用の輸送体が存在しているということになります。

あとはケトン体が正常範囲をはるかに超えるほど多くの量が一度に入ってくるかどうかが問題ですが、

少なくとも赤ちゃんの段階でケトン体は数千nmon/Lであることが、千葉県の産婦人科医、宗田先生らのグループによりすでに証明されています。

一方で、糖質制限、特に江部先生推奨のスーパー糖質制限食を実践して平均的に産生されるケトン体の量は数百~1200nmol/Lです。

つまりケトン体の正常範囲、脳が異常と認識せずにケトン体を利用できる安全域は非常に広いので、

脳はケトン体を異常事態と認識せず、ドーパミン神経が刺激されることもないので、ケトン体には依存性はないということです。

第一、もしもケトン体に依存性があるのであれば、赤ちゃんの時にそれなりの量のケトン体にさらされているわけですから、

生まれてから以降もケトン体を欲するように(実際的には高脂肪のものを食べることを好むように)、赤ちゃんが行動しなければおかしいという事になりますが、

実際にはこどもは甘いものの方が大好きであるはずです。

科学的な証明はさておき、これらの事実が「ケトン体に依存性がない」という事を教えてくれていると思います。


たがしゅう

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コメント

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人は本能的に動物の骨髄や脳を好む?
http://karapaia.com/archives/52199707.html
面白い記事がありました。
甘いものを好むのかと思ったらそうでもないみたいです。
骨髄や脳、どんな味がするのか興味があります。

Re: タイトルなし
あっぴ さん

 情報を頂き有難うございます。

> 甘いものを好むのかと思ったらそうでもないみたいです。

 そんな実験結果があるのですね。意外でした。

 ただ1920年代の話ですから、炭水化物も今ほど精製度が高くないということも相まっての結果かもしれません。
 それにしても骨髄、脳を好むのですから、赤ちゃんの本質はワイルドですね。そして依存するというのともちょっと違うように思えます。
宗田先生のブログで、低糖質離乳食の実践を拝見したことがあります。甘みは少ないでしょうが、子どもさんもよく食べておられるようです。私の孫も、離乳食開始時、肉魚など大変好みましたが、保健所の指導は、タンパク質消化能力が低いからと穀物摂食中心食推薦でした。乳幼児向けの絵本・TV等は、「美味しい物=甘いもの、穀物」のオンパレードです。糖質をしっかり食べ、歯磨きがんばろう!です。日本の乳幼児は、出生時のケトン体中心から、離乳食開始以降は、強引に糖質依存状態にされているように思います。
Re: タイトルなし
T さん

コメント頂き有難うございます。

> 日本の乳幼児は、出生時のケトン体中心から、離乳食開始以降は、強引に糖質依存状態にされているように思います。

なるほど、参考になります。
確かにもともと離乳食前の赤ちゃんは甘みを欲していないけれど、離乳食後に甘みを欲するように頻回糖質過剰摂取によって変えられている、ということなのかもしれませんね。