医療を商売として捉えた時、随分変な感じがします。
一般の企業であれば、何か商品やサービスを作り、それを売るための販売戦略を立て、価格を設定し、顧客に対して宣伝し、
商品やサービスを売って得た収入を元に、また新たな商品やサービスを考える、というのが大まかな流れだと思います。
ところが医療、特に保険診療の場合は、商品やサービスはすでに第3者により定められていて、
一応の販売戦略や宣伝活動は行うけれども、価格はその第3者に定められたものを動かすことはできないばかりか、
その第3者の動き次第で、販売戦略や宣伝活動がものすごく左右されてしまう構造となっています。
一般企業で例えれば、謎のスーパーバイザー的な人に売る商品やサービス、その価格も全て決められて、その中で商売を行なっているような感じでしょうか。
そしてさらに困ったことに医療の場合は、その商品でお金が儲かることが悪いことのように世間に思われる傾向があります。
そこに関してスーパーバイザーは、税金という全国民から徴収したお金をその商品価格の大部分に当てているので、
決してお金儲けをしているわけではないというトリッキーな離れ業を披露して、その印象を和らげます。結局はお金を支払っていることに違いはないにも関わらず、です。
こういう構造があるがゆえに、その第3者介在ルールから離れて、医療を用いて商売をしようとすると一つ大きな問題が出てきます。
一般の企業であれば、商品を売り、お金を稼ぐというのは実に健全で生活の糧とするためにもごく自然な活動だと思います。
ところが医療で同じことをしようとすると、「不当なお金儲け」のイメージが消費者の頭の中につきまとってしまうのです。
それというのも、「
医療は皆平等に提供されている。医療者はお金儲けのために働かず人のために働いている。」というような何となく清潔なイメージがあるからではないかと私は思います。
でも本来は医療においても一般企業と同様に、謎の第3者などが介在することなく、
この商品やサービスを生活の糧とすべく、自立して価格を決め、消費者へ働きかけてこれを売り、お金を稼ぐことで経営が成り立っていく構造はあって然るべきではないでしょうか。
それがいわゆる「自由診療」というものです。
ここがそれこそ不当に「不当なお金儲け」だと評価され、その商品やサービスの妥当性が正しく評価されなければ、
保険診療以外の形で、医療では商売をしてはいけないとか、あるいはボランティアで運営することが求められているようなものです。
私はボランティア自体を否定はしませんが、基本的には永続的な活動として世間に定着させていくためには
正当な対価が必要だと考えます。
企業で売る商品やサービスの妥当な小売価格のようなものです。
保険診療のシステムのせいで、妥当な価格が妥当と評価されないような風潮は是正されるべきです。
そのためにはまず、「
保険診療も入り組んだお金稼ぎになっている」ということを知ること、
そして
「医療でお金儲けはしてはいけない」という消費者側の価値観も見直す必要があるのではないかと私は思います。
たがしゅう
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開業医の現状をまじかに見ていると、自由診療など怖くて選択できません。
正当な対価の基準をどこにおくのでしょうか。